井端弘和「イバらの道の野球論」(17)前回の記事はこちら巨人でカラを破れなかった選手たち>> 開幕が延期になったプロ…

井端弘和「イバらの道の野球論」(17)前回の記事はこちら

巨人でカラを破れなかった選手たち>>

 開幕が延期になったプロ野球も1カ月が過ぎ、順調に白星を伸ばしているのがセ・リーグ首位の巨人だ。7月24日時点で18勝8敗2分と、10の貯金を作っている。

 チームの好調の要因は、四番の岡本和真をはじめとした強力打線と、セ・リーグトップの防御打率(3.08)を誇る投手陣の活躍があるが、その中に「新戦力」の頑張りがあることも忘れてはいけない。

 そこで、2018年まで巨人の1軍内野守備走塁コーチを務めていた井端弘和に、注目する若手選手を聞いた。



セカンドでの出場が増えてきた北村拓己(左)と、3勝を挙げている戸郷翔征(右)

──ここまで好調な巨人の中で、活躍が目に留まった「新戦力」はいますか?

「投手では戸郷(翔征)。野手では増田(大輝)と、北村(拓己)も頑張っていますね」

──高卒2年目の戸郷投手は、ここまで4試合に先発して3勝1敗。防御率2.78という成績を残していますが、投手としての魅力はどこにあるでしょうか。

「ストレートに力があることが第一です。それがあってこそ、フォークをはじめとした変化球が有効になる。三振も取れていますし、理想的なピッチングができていると思います。ストレートをバットに当てられることはあっても、しっかり捉えられて長打にされることは少ない。今後、ストレートでも空振りが取れるようになってくると、打者はより手がつけられなくなりますね」

──野手は、セカンドのポジションを争う選手の名前が挙がりました。開幕前はオープン戦で活躍(16試合に出場して打率.391)した高卒3年目の湯浅大選手も注目を集め、6月21日の阪神戦ではスタメンで出場しましたが、今は2軍での調整となっていますね。

「オープン戦で実力があることを示してくれましたが、シーズンに入ってからの緊張感もあったでしょうし、特に各チームのベテラン投手は開幕後に気持ちを入れてきますからね。気持ちの面で難しく、持っているものを出せなかったのではないかと思います。それでも、バッティングは思い切りがよく、インサイドのボールもうまく捌けますから、二軍でしっかり調整できればまたチャンスが巡ってくるでしょう」

──守備に関してはいかがでしたか?

「打球を体の正面で捕ることを大事にしすぎていたように思います。逆シングルで捕りにいけば2、3歩ステップを減らせるところを、無理に正面に入ろうとしてランナーを無駄に走らせてしまった場面がありました。ただ、20歳の選手としては十分に動けています。走力、長打も打てる打撃を強みにしていけば、近い将来にレギュラーとして活躍できる素材です」

──2015年の育成ドラフト1位から頭角を現した増田選手は、6盗塁で失敗はわずか1。7月19日のDeNA戦では、9回表1アウトから代走で出て二盗に成功し、丸佳浩選手の当たりの強いヒットで生還する”神走塁”も話題になりましたね。

「当然、彼もレギュラーを目指していると思いますが、代走としての地位を確立できたのは大きな前進ですね。ゲーム終盤に出てきてアウトにならないというのは、ベンチとしてはすごく助かると思います。彼の走塁で優れているのは”思いきり”。そこは、私が走塁コーチをしていた時もそうですが、教えたくても教えられないんですよ。走力自体もかなり能力は高いですし、球界屈指の足のスペシャリストになりつつあるんじゃないでしょうか」

── 一方で、大卒3年目北村選手は、セカンドのスタメンで起用されることが増えてきました。ここまで打率.323の成績と結果を残している理由はどこにあると見ていますか?

「オープン戦では少し調子が上がっていないように見えましたが、開幕後に吉川(尚輝)の調子が上がらず、湯浅が力を発揮できなかったことで得たチャンスを活かしていますね。レギュラー格の選手たちの調子が悪い中で一軍に呼ばれた時は、いい意味で開き直ることができるものなんです。私も現役の若手時代に、一軍でチャンスを掴んだ際には『ここで活躍したらレギュラーになれるかも』とポジティブに考えていました。

 北村は十分に結果を残していますが、現時点では吉川や増田との併用になっています。彼にとっては我慢の時。今後も与えられた仕事をきっちりこなしていけば、スタメン起用の機会がさらに増えていくでしょう」

──今後の課題はどこにあるでしょうか。

「バッティングはいいので、あとは守備ですね。今はまだ余裕がないように見えます。しかしそこは、一軍での試合経験が少ないので仕方ない。練習でもノックを数多く受けるなどして、自信がつけば自ずと解決される部分だと思います」

──以前から、井端さんも大きな期待を寄せている吉川選手のここまではどう見ていますか?

「昨シーズンは開幕から調子がよかったところで、腰のケガで離脱してしまったのが残念でした。今シーズンは全120試合のうち100試合くらい1番で出場し、打率3割くらいをキープできたらチームは安泰だと思っていましたが……実力どおりの活躍ができているとは言いがたいです」

──現在は打率.246ですが、物足らないのは打撃でしょうか。

「そうですね。守備の能力は他の選手と比べるとスバ抜けていますから。吉川は打線の下位で起用されることも多くなっていますが、彼はやはり1番で、塁に出て引っ掻き回すことが最大の持ち味。しかし今は、ファーストストライクを見逃して2球目のボールに手を出してしまうなど、打席でいろいろ考えすぎてしまっているように感じます。

 もっと自由に、初球から打ちにいっていいんじゃないかと。ベンチからサインが出たら実行する、くらいのスタンスで。自分から仕掛けていけば自然とカウントも整ってきますし、彼の本来のスタイルを取り戻せるんじゃないかと思います。いずれにせよ、吉川と新戦力の選手たちが切磋琢磨しながら調子を上げていって、レベルの高いセカンドのレギュラー争いをしてもらいたいですね」