ノバク・ジョコビッチは、世界1位として「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)に臨むが、2位のアンディ・マレー(イギリス)がその世界ナンバーワンの地位を奪…

 ノバク・ジョコビッチは、世界1位として「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)に臨むが、2位のアンディ・マレー(イギリス)がその世界ナンバーワンの地位を奪うかもしれないという、彼にとっては稀な立場に身をおいている。

 2009年、そして2013、14、15年に今大会でタイトルを獲得しているジョコビッチは、今回は4年連続優勝を目指している。しかし、ここ数ヵ月のジョコビッチは調子が非常に不安定であり、昨年大会の決勝でマレーを6-2 6-4で粉砕したときのような、揺るがぬ自信を持ってプレーできる状況にない。  現在の調子では、マレーのほうが優位に立っているように見える。そのマレーが、もしもこのパリで優勝し、ジョコビッチが決勝に進むことができなければ、マレーはジョコビッチを追い越して1位となる可能性を手にしているのだ。  「アンディ(マレー)が、ここ数ヵ月にやってのけた功績を称えなければならないよ。彼の今季の後半はとても素晴らしいものだった」と、ジョコビッチは大会前夜に記者たちに言った。

 「おそらく彼は、これまでで最高のテニスをプレーしているんじゃないかな。彼は非常に安定性のある、力強いテニスをしているよ。間違いなく、シーズン末にナンバーワンにつくだけの価値はある。でもそれは、彼次第、というものでもないけど」  ジョコビッチは、決勝に進みさえすれば、ナンバーワンの座をキープすることができる。そしてマレーは、ジョコビッチを打ち負かすことについて、過度に楽観的でもない。

 「明らかに彼(ジョコビッチ)は優勝する力を持っているよ」とマレー。「もしも僕が1回戦で負けたら、ナンバーワンから遠くなるね」。

 彼はジョコビッチとの対戦成績で10勝24敗とかなりの劣勢だ。「僕はこれまで一度もこの大会で優勝したことがない。だから今、優勝するだろうって予想するのは、愚かなことだよ」。  マレーは日曜日にウィーンで優勝を遂げ、北京、上海に続く3大会連続優勝を果たした。それは今季7つ目のタイトルであり、キャリア最高の42回の優勝も記録した。

 「ほかの年だったら、このような一年を送れば、ナンバーワンになるのに十分だったのかもしれないけど…」とマレーは言った。「でも明らかに、僕はそこに近づきつつある」。  1回戦がBYE(不戦勝)のマレーは、初戦の2回戦でフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)とロビン・ハッサ(オランダ)の勝者と対戦する。  マレー同様、ジョコビッチも今季すでに7つのタイトルを勝ち獲っており、それは彼の2013年と2014年の記録とタイだ。だが、彼が驚異的な強さを見せていた2015年の11タイトルには足りていない。  29歳のジョコビッチは、マスターズ大会での優勝回数が「30」という記録を持っている。彼は12回にわたってグランドスラムで優勝しており、しかも4つの異なるグランドスラムのすべてで勝っているのだ。  今年6月に、なかなか優勝することができないでいた全仏オープンでついに勝ったあと、彼の調子は突然崩れた。

 「全仏オープンで優勝したことは、僕に大きな喜びをもたらした。でもその一方で、僕から大きなエネルギーを取り去ってしまったんだ」とジョコビッチ。「あのあと、僕は疲労困憊しているように感じ、モティベーションの面でやや(意欲の)減退を感じた。あれからというもの、僕はコートに立ち、自分を駆り立てる感覚をふたたび見出さなければならない状況にいる」。  ジョコビッチは、ウィンブルドン3回戦でサム・クエリー(アメリカ)に、リオ・オリンピック1回戦ではフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に敗れた。そして全米オープン決勝で、第1セットを取りはしたものの、スタン・ワウリンカ(スイス)に巻き返されて敗れた。  その2週間後の上海マスターズ準決勝では、過去5度の対戦ですべて勝っていたロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)に4-6 4-6で敗れた。  「ここ数ヵ月は楽ではなかったよ」とジョコビッチは言った。「精神的に、僕はコート内外で起きていることを振り返らなければならなかった」。

 ジョコビッチは明らかに、自分の考えをまとめなければならない状況に置かれていた。  「時間をとることは大切だ。プロとして、個人として、次のステップが何になるのかを本当の意味で理解するために」  その彼が今、気分がずっとよくなった、と言っている。  「素晴らしい気分だよ。元気を回復したと思う。素晴らしい思い出がある町に戻って来たことも、とてもうれしく思う」とジョコビッチは言った。「最後にここに来たときのこと(全仏優勝)を考えると、感動と、ゾクゾクするような興奮を覚える」。

 ジョコビッチも1回戦はBYE(免除)で、初戦の2回戦では、ニコラス・アルマグロ(スペイン)とジル・ミュラー(ルクセンブルク)の勝者と対戦する。  今大会は、第1シードがジョコビッチ、第2シードがマレー、第3シードがスタン・ワウリンカ(スイス)、そして第4シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)が、3週間前のチャイナ・オープン準決勝で棄権を強いた足首の故障の影響を、いまだ感じていると言っている。

 「(腱が)部分的に割けていたんだ」とラオニッチは説明した。「まだ、ちょっと問題があるよ。テーピングをして、足首の可動域に制限を与えるようにしているんだ」。(C)AP