「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第13回の講師はアテネ五輪団体金メダリスト、現役引退後は朝日生命体操クラブ総監督を務める塚原直也さん。全国高校体操部の現役部員約25名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

怖いことは悪くない、挑戦しやすい環境に

冒頭の挨拶で「みなさんどうお過ごしですか?いろいろあると思いますが、その悩みを聞いていきたいと思う」と語った塚原さん。「インターハイがなくなって気持ちが下がっている」と反応した高校生に対して、「決まっていた試合がなくなってモチベーションが下がることは誰しもあると思う。次の試合があると想定して『爪を研ぐ』こと。体操がうまくなりたい気持ちが根本にあると思うので、それを信じて今は実力をつけてほしい」と励ましの言葉を贈った。

まずは塚原さんの高校時代の話題に。10歳から体操を始め、そこからは高校も練習漬けだったと語りながら、ニコライ・アンドリアノフ(元旧ロシア代表)コーチとの出会いとインターハイ2連覇について「高校はやはりインターハイ一筋だった。アンドリアノフコーチの指導で一気に実力がついた。このままやっていけるなという自信になった」と振り返った。

前半は技術面での質問に。床運動が得意という高校生の「どのような筋トレをしていますか?」という質問には、「余計な筋肉がついてしまうので、筋トレらしい筋トレはほとんどしていなかった」と回答。「種目の演技をひたすら練習して筋肉をつけた。1日1試合6種目練習すること。ただ、いきなり無理をするとケガにつながるので、6種類まんべんなく練習するのがいいと思う」と気遣いながらアドバイスしていた。

「新しい技に挑戦するのが怖く、周りに遅れを取ってしまう」という高校3年生の悩みには、「怖がりは悪いことじゃない、慎重に物事を進めていく上でとても重要」と共感。「いきなりは誰でも怖い。何とか挑戦できるように補助を頼んだり、柔らかいマットを取り入れたりして、徐々にやっていくことが近道。安全を確保して頑張ってみてほしい」と促した。

今と自分自身に、精一杯負けないように

「試合で演技中にミスしたら後の技も続けてミスしてしまう。流れの立て直し方は?」という質問には、「試合は緊張しているので、練習と違うことがよく起こるのは珍しくないこと」と分析。「練習がそのまま出るので、準備ができていると変わってくる。練習はミスも出づらいので、もしこうなったらという想像力も大切です」と、イメージの重要性も合わせて語った。

高校2年生の「今、県の大会で連覇している。キャプテンとして意識することはありますか?」という質問に対しては、「キャプテンをやったことがない。大変ですよね」とまずは気遣いながら、「引っ張る存在としてふさわしいと思われているから、周りが彼を選んでいると思う。選んでもらったことに感謝して、連覇を気にするよりは、自分が精一杯できることに集中した方がいいと思う。(画面越しに)真面目そうな人で、そこが一番大事だと思う。そこを伸ばしてほしい」と温かなメッセージを贈った。

最後に「明日へのエール」として「とても貴重な時間を体験できた。みなさんの質問を聞いて自分をいかにコントロールするか、というものがあれば何か解決できるのでは、軸になるのではと思った。まだまだ大変ですが、みなさんが今の状況や自分自身に負けないように願っています」と語った塚原さん。その後体操の基本形として、美しく着地のポーズを決めた姿をイメージし全員で記念撮影。最後は誰からともなく大きな拍手が起こり配信は終了した。

授業後の「アフターセッション」でみんなの本音を語り合う

塚原さんとのオンラインエール授業後に、高校生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

まずは、さまざまな生徒から授業の感想が聞かれた。「緊張するタイプなので試合の挑み方など、練習面でも技術面でも自分の体操のプラスになることを聞けた」という男子高校生の声や、女子高校生の「新しい技に挑戦する時の恐怖心の話や、試合前の緊張感のほぐし方など、自分と重なることが多かった」との声も聞かれた。

また、インターハイ中止のモチベーションの話題になると、「区切りや気持ちの切り替えが難しく、練習を続けてはいるが、今後も続けることができるのか、まだ迷っている」という本音の意見も聞かれた。キャプテンの悩みを授業で相談した学生は「今の時点から後輩がサポートしてくれているので、今のままで安心している。期待しています」と頼もしい声も聞かれた。

最後に「名門校で活動していくことの喜びとプレッシャーはあるか」という話題にふれ、「自分の実力が今までの歴代の先輩たちに全然追いついていないので、何とかついていきたいと思っていることがプレッシャーになっている」と告白した男子高校生は、「他の運動部も強く、頑張っている人を間近で見られるので刺激になっている」と答えながら、自身の原動力について話す場面もあった。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感を少しでも前向きにしていける高校生が増えることを切に願ってやまない。