トップ8によるエリート大会「WTAファイナルズ」(10月23~30日/シンガポール/賞金総額700万ドル/室内ハードコート)でアンジェリック・ケルバー(ドイツ)は、準決勝の舞台に立ち、コートサイドに目を向けると観客の中に3人の有名な人物…

 トップ8によるエリート大会「WTAファイナルズ」(10月23~30日/シンガポール/賞金総額700万ドル/室内ハードコート)でアンジェリック・ケルバー(ドイツ)は、準決勝の舞台に立ち、コートサイドに目を向けると観客の中に3人の有名な人物がいることに気づいた。クリス・エバート、マルチナ・ナブラチロワ、そしてモニカ・セレスだ。  今年、全豪と全米で優勝した世界1位のケルバーは、それを、自分が本当に成功したというサインと受け取った。  「ふと見上げるとテニスの偉人たち、チャンピオンたちがそこに座っていたの」とケルバー。「もちろん、私がそのコート上にいること、彼女たちが私を見てくれているということが素晴らしく、感激したわ。私もグランドスラム大会で優勝し、世界ナンバーワンとなった、これらの選手たちのひとりになったと言うことができるのね」。  ケルバーがツアーでプレーするようになって10年が経った今、彼女はテニス界の頂点に立った。

 ケルバーは1月の全豪オープンの決勝で、当時1位だったセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を破って、初のグランドスラム・タイトルを獲得。そして先月の全米オープンでも、カロリーナ・プリスコバ(チェコ)を下して2つ目のグランドスラム・タイトルを手にした。そして、その合い間にウィンブルドンの決勝でセレナに敗れ、リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した。  これらの仕上げとして、28歳のケルバーは全米での勝利のあと、世界1位に浮上。初めて世界1位にたどり着いた年齢での最年長チャンピオンとなったのである。  「オーストラリアで初めてのグランドスラム・タイトルを獲ったときが、最初の特別な瞬間だった」と、ケルバーはシンガポールで、彼女の“魔法のようなシーズン”を詳しく振り返った。「あのフィーリングは今後も決して忘れることはないでしょう。またニューヨークも、私のキャリアの中で本当に特別な大会だった。全米は、2011年にすべてが始まった場所だから(彼女は2011年に全米で準決勝に進出した)。それからオリンピックも。ずっと、オリンピックでメダルを獲ることを夢見ていたの」。  「今年は本当に多くの素晴らしい瞬間があった」と彼女は言い添えた。

 ケルバーは、これに先立つ4シーズンをトップ10として過ごしたが、2016年の彼女は、より集中し、決意に満ち、そして、より経験豊かな選手となって過ごした。  「私は今、物事を本当に楽しめる年齢にいると思っている」とケルバー。「ここ2、3年で本当に多くの経験を積んだわ。そして私は、今を楽しもうと努めているけれど、同時に変わらずハードワークも積んでいる」。  アグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)は、ケルバーの信じられないようなシーズンにインスピレーションを与えられたと言った。

 「アンジーは私たち皆に、それが可能だということを見せてくれたのだと思う」とラドバンスカは言った。「グランドスラム大会の決勝でさえ、セレナを倒すのは可能だってことを彼女は示したわ。そして、誰もがトップになり得るってことも証明して見せてくれた」。  ケルバーは今大会でまず、ラウンドロビンの3試合すべてに勝って、自らの強さを示して見せた。そして土曜日の準決勝でラドバンスカを6-2 6-1で破り、あとは今シーズン最後の試合、日曜日の決勝を残すのみとなった。ケルバーは過去に3度、WTAファイナルズに出場しているが、これまでは一度もラウンドロビンを勝ち上がったことがなかった。  「今は以前とまったく違う感覚を持っているの。私は、肩にプレッシャーを背負いながら、どうやって戦ったらいいのかを知っている。コート上で、やるべきことにどうやって集中し、どうプレーすればいいかがわかるのよ」とケルバーは言った。  「誰と対戦しているとか、スコアが何だとか、どんな状況か、などはほとんど問題じゃない」と彼女は言い添えた。「私はここ数ヵ月で多くを学んだ。1回戦だろうと、決勝だろうと関係ない。私はただコートに出て行って、自分のテニスをするだけよ」。

 日曜日にケルバーと決勝を戦うのは、もうひとつの準決勝でスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)を1-6 7-6(2) 6-4で破ったドミニカ・チブルコバ(スロバキア)となった。(C)AP(テニスマガジン)