ソフトバンクから加入の21歳左腕を元コーチの飯田哲也氏が解説 ヤクルトが12日の試合で巨人に3-2で競り勝ち、今季初めて、首位に立った。野手ではベテラン・青木、主砲の村上、山崎や西浦らの活躍もあるが、リリーフ陣の奮闘も見逃せない。今回、取り…

ソフトバンクから加入の21歳左腕を元コーチの飯田哲也氏が解説

 ヤクルトが12日の試合で巨人に3-2で競り勝ち、今季初めて、首位に立った。野手ではベテラン・青木、主砲の村上、山崎や西浦らの活躍もあるが、リリーフ陣の奮闘も見逃せない。今回、取り上げたいのは7月に入って無失点リリーフを続けている長谷川宙輝投手。昨年までソフトバンクで育成だった左腕について、元ヤクルト外野手で昨年までソフトバンクでコーチを務めた飯田哲也氏が「先発も試す価値があります」と評価した。

 長谷川は150キロの直球を武器にし、思い切りのいいピッチングを売りにする21歳。昨年はソフトバンクで2軍戦9試合に登板も、防御率6.04。1軍登板はなかった。ヤクルトに移籍した今季は、6月25日の阪神戦(神宮)で救援登板して、プロ初勝利。その後もリリーフとしてチームを支えている。7月に入ってからは5試合すべて無失点救援。12日も勝利に貢献した。

 飯田氏はホークスコーチ時代、3軍で一生懸命、練習に取り組んでいる長谷川の姿勢を見てきた。同じ東京出身で地元も近かったことから共通点も多く、よく話もしていた。「持っているものは素晴らしい。直球も速いですし、練習姿勢を見ているととにかく応援をしたくなる選手です。ホークスではファームでも好投手が多いので、なかなかチャンスが回ってこなかったという事情はありましたね」と入来祐作3軍投手コーチ(当時)とよく練習していた日々を思い返す。

 巡ってきたチャンスで結果を残せなかったことも事実。その点については「3軍でいい状態にいて、いざ2軍戦で起用されると気負ってしまって内容が良くなかった。層が厚いので2軍でもしっかりと結果を見せないと上にはいけません。チャレンジして、打たれて、3軍に戻ってくるという形が多かったですね」と高い技術は持っていても、プレッシャーに打ち勝つ精神力、体調管理に課題があったという。

 育成選手は3年目が終了し、自動的に一度、自由契約となり、再契約をするケースも多い。ヤクルトから支配下登録でのオファーを受けた長谷川は熟考の末、支配下でのプレーを目標にしていたため、移籍を決めた。

「才能が埋もれてしまうよりは、チャンスをもらえるところでプレーをした方が絶対にいいです。(長谷川は)最後まで迷っていたようでしたが、行った方がいいと思っていました」

状態がいい時は9回を投げきっていたスタミナもある、いずれは先発で…

 ヤクルトは長谷川や清水、寺島ら“先発”で結果がまだ出ていないホープたちが中継ぎにまわり、結果を残している。いずれはこの中から、先発枠をしっかりと勝ち取ってもらいたいという狙いも首脳陣にはあるだろう。飯田氏は「本人も先発をやるんだという気持ちで投げていると思います。やっていけると思います」と太鼓判を押す。

 ホークス時代は先発で、5~6イニングを投げていた。「今は中継ぎのスタミナになってしまっていると思いますが、そのあたりは(先発調整を)やっていけば問題はありません。ホークスの時に状態がいい時は9回を投げきった試合もありましたから。高津監督は中を強くしたいという気持ちで起用していると思います。段階を経て、ぜひ先発でやっている姿を見たいですね」

 試合中に気になったことは飯田氏も野手の目線から伝えてきた。長谷川も人なつっこい笑顔で飯田氏にアドバイスを求めてきたことも何度もあった。「性格的に真面目ですし、プレッシャーに弱いところは少しあります。でもそこはだんだん強くなっています、跳ねのけていかないといけないので、今の経験が自信につながっていてほしいと思います」と“教え子”がかつてプレーした神宮球場のファンを沸かすことを願っている。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)