2020年女子ツアー注目プレーヤーたちの「見せ場」(前編)後編はこちら>>新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、今季は開幕からトーナメントの中止が続いている国内女子ツアー。しかし今回、アース・モンダミンカップ(6月25日~28日/…

2020年女子ツアー
注目プレーヤーたちの「見せ場」(前編)

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新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、今季は開幕からトーナメントの中止が続いている国内女子ツアー。しかし今回、アース・モンダミンカップ(6月25日~28日/千葉県)が開催されることになった。その一戦を前にして、今季活躍が期待される注目選手10名のよさ、強さ、プレーの見どころなどについて、森口祐子プロに解説してもらった――。



渋野日向子(21歳)
しぶの・ひなこ/1998年11月15日生まれ。岡山県出身。
2019年シーズンの戦績:31試合出場。優勝4回。トップ10入り15回。
賞金ランキング2位(獲得賞金1億5261万4314円)

 すべてのポテンシャルが高い選手ですが、とくに昨季は、ご両親から受け継いだ高い身体能力を存分に発揮。全英女子オープンで優勝したあとに起こったフィーバーさえ乗り切る、強い体とタフなメンタルを備えていることも証明しました。

 これは、彼女が持つ”明るさ”という資質があればこそであって、それが今後も、彼女の強さと人気を支えていくはずです。

 このオフは、青木翔コーチとともに「広めのスタンスを狭め、再現性を高める」スイング改造に着手したと聞いていますが、彼女は進化の最中でありますし、今後世界の舞台を見据えた場合、今それにトライすることは、賢明な判断だと思います。

 昨季は賞金ランク2位。今シーズンは、その上を目指す気持ちが強かったと思いますから、開幕延期で出鼻を挫かれてしまったかもしれません。でも、逆にそれが、スイング改造につながったのかもしれないですし、新たなトレーナーもつけて、フィジカル面でもしっかりと準備する時間が持てたことは、よかったのかなと思います。

 全英女子オープンで優勝しても、達成感や満足感みたいなものは見せていません。そこがまた、彼女の力でもあり、魅力でもあると思いますね。

 賞金女王争いにおいては、昨季に引き続き、有力候補のひとりになることは間違いないでしょう。


原 英莉花(21歳)
はら・えりか/1999年2月15日生まれ。神奈川県出身。
2019年シーズンの戦績:36試合出場。優勝1回。トップ10入り10回。
賞金ランキング14位(獲得賞金7076万9927円)

 原選手を見ていると、彼女こそプロフェッショナルに求められる”スター性”を備えているな、と思わされます。ティーイングエリアに立った時の、周囲から視線を集める存在感は、師匠のジャンボ尾崎プロ譲りと言ってもいいかもしれません。

 普段も、私たちと話をする時には、背筋がピンと伸びています。プレー中は、ガッツがあって、悔しい表情も見せる。アスリートのあるべき姿を体現している存在とも言えます。

 そんな彼女の課題は、気持ちのコントロールでしょうか。3日間、4日間の競技のなかで、1日だけスコアを叩いてしまって、あとあと「もったいないな」となる日があります。それで、ベスト5入りを逃していることも多いような気がします。

 持ち味であるスイングは、さらっと打つタイプではなく、インパクトを作っていくタイプですから、気持ちが入りすぎて、ショットがブレることがしばしばありますよね。とくに夏場になると、ただでさえ体が動きすぎて、テンポが早くなりがち。そういう部分でも、「(気持ちの)コントロールが大事」と、昨年話をしたことがあります。

 ポテンシャルの高さはピカイチ。今シーズン、最も注目される選手であることは間違いないでしょう。


安田祐香(19歳)
やすだ・ゆうか/2000年12月24日生まれ。兵庫県出身。
2019年シーズンの戦績:9試合出場。優勝0回。トップ10入り1回。
※上記はアマチュアでの戦績。QTランキング2位。

 最近は、あらゆることを帯同キャディーに依存する選手が多くなっている傾向があります。そんななか、彼女を見ていると、コース攻略などを自ら組み立てて、きちんと自分で考えてゴルフをしているように思います。

 そういう意味では、自分の物差しをしっかり持っている選手。それは彼女が、JGA(日本ゴルフ協会)のナショナルチームのメンバーだった時、コーチのガレス・ジョーンズ氏の指導を受け、そういう取り組み方が身についたのかもしれません。

 米ツアーで活躍する畑岡奈紗選手も、ジョーンズコーチの指導を受けてきましたが、安田選手も畑岡選手と同様、トップアマから世界のトッププロに成長していくという流れに乗っていくのか、注目しています。

 昨季の海外メジャー、エビアン選手権の時に彼女のプレーを見ましたが、スイングはオーソドックス。まさに教科書的なスイングです。

 アプローチの技術も高く、高いボールも打てるし、グリーンを狙う時のボールキャリーと止める場所の位置関係も計算できる選手だな、と思いました。非常に成熟度は高い、という印象を受けましたね。

 心配なのは”線”の細さ。今後、トレーニングもして体も作っていくと思いますが、プロ1年目の今年は、年間を通してどう試合をクリアしていくのか。その辺の体力とコンディショニングが課題になるのではないでしょうか。 


松田鈴英(22歳)
まつだ・れい/1998年1月24日生まれ。滋賀県出身。
2019年シーズンの戦績:34試合出場。優勝0回。トップ10入り7回。
賞金ランキング32位(獲得賞金3767万4257円)

 一昨季の賞金ランクは11位でしたから、賞金ランク32位に終わった昨季は不本意なシーズンだったのではないでしょうか。そういう意味では、オフからここまでの期間が、いい充電期間になってくれていればいいな、と思います。

 昨季は、中京テレビ・ブリヂストンレディスで優勝争いを演じながら、16番ロングホールでティーショットをOB。その結果、3位タイで終わる残念な試合もありました。彼女の力なら、2オンのバーディーは難しくないホールだっただけに、もったいなかったなと思います。

 彼女の武器は、なんと言ってもドライバー。屈指のロングヒッターです(昨季のドライビングディスタンスは3位)。その得意のドライバーでミスを犯してしまって、それをその後に引きずってしまったのかもしれません。結果、成績も伸び悩んでしまいました。

 課題は、ショートゲームかなと思います。とくにパッティングでもう少し安定感が出てくれば、ツアー初優勝を飾るのも、そう遠くはないでしょう。


三ヶ島かな(23歳)
みかしま・かな/1996年7月13日生まれ。福岡県出身。
2019年シーズンの戦績:35試合出場。優勝0回。トップ10入り8回。
賞金ランキング24位(獲得賞金4987万8291円)

 三ヶ島選手は、欠点が見つからないオールマイティなプレーヤー。1ショット、1ショットを丁寧に積み重ねていく、というプレースタイルのステディな選手です。

 ゴルフがうまい彼女がなかなか勝てないのは、そこに理由があるような気がします。

 コースセッティングが世界的に、飛距離が出ることが圧倒的に有利になっているなかで、飛距離や爆発力がないと、ツアーで勝つことが難しくなってきている現状があるからです。

 私自身、すべてが平均点で、爆発力がないため、「こんな選手を見ても、ファンの方はつまらないだろうな」と、悩んだ時期があったんです。でも、ある試合で(ファンに)声をかけられ、「そういうゴルフが好きな人もいるんですよ」と言われて、救われたことがありました。

 なかなか優勝できず、焦りもあるかもしれませんが、三ヶ島選手も自分のスタイルを見失うことなく、その時を”待つ”ということが必要かもしれません。

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