プロ2年目ながらオリックスとの開幕戦でスタメンマスクを勝ち取った楽天の太田光は、まずは打撃でアピールに成功した。 2回に犠牲フライで先制点を演出。先頭で打席に立った同点の8回には、勝ち越しの口火となる二塁打を放った。打者一巡で迎えた第…

 プロ2年目ながらオリックスとの開幕戦でスタメンマスクを勝ち取った楽天の太田光は、まずは打撃でアピールに成功した。

 2回に犠牲フライで先制点を演出。先頭で打席に立った同点の8回には、勝ち越しの口火となる二塁打を放った。打者一巡で迎えた第4打席でも2本目の犠飛を記録し、2打数1安打2打点と仕事を果たした。



開幕スタメンを果たしたプロ2年目の楽天・太田光

「野球をやっている以上は、バッティングは永遠の課題なんで。その日だけじゃなくて、コンスタントに打ち続けられるようにしていきたいですね」

 昨シーズン終了後、そう語っていた太田を思い出す。

 昨今、ソフトバンクの甲斐拓也や広島の會澤翼など、パンチ力のある「打てる捕手」に注目が集まるが、一般的に正捕手の及第点は「打率2割5分」とも言われている。

 昨年、打率2割1分9厘と振るわなかった太田本人も、その基準を満たさなければレギュラーにはなれないと自覚している。

 裏を返せば、太田は守備に手応えを抱いているからこそ、打撃を磨けば正捕手が近づくといった意欲も垣間見える。

 ルーキーイヤーの昨年、太田は守備で一軍での立ち位置を確立した。

 楽天で長く正捕手を務めていた嶋基宏の故障もあって、6月の一軍昇格からはチームで2番目に多い55試合に出場。限られた出番ながら盗塁阻止率は3割8分9厘と、高い数字を叩き出した。

 そのパフォーマンスのなかで、チームメイトを驚かせたのが、9月5日のソフトバンク戦だ。7回に”走塁のスペシャリスト”としてブレイクを果たした周東佑京の足を封じた強肩と正確なスローイングは、太田の捕手としての能力の高さを十分に証明した。

 守備はでもうひとつ、特筆すべき数字がある。捕手防御率だ。

 これは、マスクを被った試合での自責点を表す数字となるのだが、太田は250イニングの守備機会があった捕手では12球団トップの「3.22」という好成績を残している。

 投手の防御率が捕手との共同作業であるように、捕手防御率もまた投手の能力によるところが大きい。昨年の楽天は、パ・リーグ2位のチーム防御率3.74だったように、則本昂大と岸孝之を筆頭とした先発に加え、救援陣も安定した戦力を擁している。

 太田はそのタレントたちと1年目から信頼関係を結ぶことができた。

 昨年のシーズン終了後、太田は守備についてこのような自己評価をしていた。

「年上で、実績もすごく積んでおられる一流の先輩方とバッテリーを組ませてもらったなかですごく勉強できました。技術的な部分も大事なんですけど、失点を減らすためにはピッチャーとのコミュニケーションをとっていったほうがいいわけで。先輩のみなさんがすごくやりやすい環境をつくっていただいたこともあるんですけど、僕も自分の意見を言えたことが、結果的にバッターを抑えることにもつながったと思っています」

 太田は臆することなく、先輩たちに自分の意志を伝えた。それがやがて信頼関係へと発展し、バッテリー間の意思疎通を図れるようになっていった。

 芽生えた自信。そこから沸き立つレギュラー獲得への渇望。ビジョンはまだ、ぼんやりとはしている。それでも太田には、昨年の時点で今年のビジョンを描くことができていた。

「もちろん、ほかのキャッチャーの方たちとの力の差を感じる部分もありましたけど『頑張ればなんとかなるんじゃないか……』ってイメージを持てたのは大きかったですね」

 そのビジョンを鮮明にするべく、太田は2年目のシーズンに臨む。

「100試合以上の出場と規定打席到達」

 掲げる数字は明確だ。

 今年の楽天は、嶋がヤクルトに移籍したことにより、正捕手争いが激しくなる。

 経験豊富な足立祐一、打力の高い山下斐紹と岡島豪郎、昨年に捕手でチームトップの65試合に出場した堀内謙伍と、ライバルは多い。そのなかで、太田は開幕3連戦でスタメンマスクを被った。

 レギュラーを勝ち得たわけではない。

 だからといって、自分への期待値が薄れたわけではない。先輩投手との信頼関係を築いたように、若き正捕手候補は臆することなく突き進む。

「頑張ればなんとかなる」

 太田は今季、それを結果で証明してみせる。