BSテレ東で6月20日に放送された「卓球ジャパン!」は、「レジェンドシリーズ第1弾!歴史に残る伝説の激闘」と題して、2000年世界卓球男子団体決勝戦で、当時最強の中国をスウェーデンが破った史上に残る名試合を取り上げた。ゲストはTリーグのチェ…
BSテレ東で6月20日に放送された「卓球ジャパン!」は、「レジェンドシリーズ第1弾!歴史に残る伝説の激闘」と題して、2000年世界卓球男子団体決勝戦で、当時最強の中国をスウェーデンが破った史上に残る名試合を取り上げた。
ゲストはTリーグのチェアマン松下浩二氏。現役時代にこの大会で日本チームを引っ張り、15年ぶりの団体銅メダル獲得に導いたエースだった。
4人の世界チャンピオン経験者が相まみえた一戦。
中国は一時期低迷していたものの、1995年、1997年と2度の世界卓球団体戦で優勝して覇権を奪回。劉国梁(世界ランク3位)と孔令輝(同2位)、世界タイトルを総ナメする24歳同士の英雄によって再び黄金時代を築きつつあった。
対して1989年から1993年にかけて3度世界卓球団体を優勝したスウェーデンは、不世出の天才として80~90年代の卓球界をリードしながらも、ピークを過ぎたとされたワルドナー(同10位)が34歳、パーソン(同9位)が33歳。
当時を知る松下曰く「スウェーデン時代は終わった」とされており、下馬評は中国の圧倒的有利だった。
大会に入っても、接戦をモノにしてきたスウェーデンに対し、中国は7試合、すべて3-0のストレートの圧勝で決勝まで勝ち進んだ。
そんな決勝戦の第1試合、ワルドナーと対戦したのは天敵の劉国梁。1999年世界王者の劉に対し、5戦して一度も勝ったことがなかった。
松下はこの2人を、「(劉国梁は)馬龍をもうちょっと強くしたような(感じ)。ワルドナーはティモ・ボル選手をもう一枚強くした(イメージ)」とまで絶賛する。
ちなみに松下はワルドナーに20戦ほどして一度勝っており、劉国梁には3戦ほどで未勝利。「あと10回くらいやらせてくれれば......(1回は勝てた)」と笑う。
当時は21点制3ゲームマッチ、サーブは5本交代。3試合先取したチームの勝利で、38mmセルロイドボールが使用されていた。
平野が「いま以上にサーブの取り合いが多いですね」と語る通り、サーブで変化を付けてラリーの早い段階で決まる展開が続く。
松下曰く、「とにかく劉国梁のサービスは切れていましたね。スイングが速いから、当たっている所も見えない」。ワルドナーも当時ルール上有効だった、ボールを体で隠すサーブを駆使してうまさでポイントを重ねる。
第1ゲームのラストは劉国梁がラケットを反転させ、回転のかかる裏ソフトラバーでフォアドライブ一閃。20-14から20-19まで追い詰められたプレッシャーをはね除け、天に届かんばかりの会心のガッツポーズを突き上げた。
しかしこの日のワルドナーはここで終わらない。第2ゲームは21-7と圧倒し、第3ゲームもラリー戦に持ち込んだワルドナーが徐々に優勢を築く。
松下によると彼のバックハンドがポイントという。「前からフラットで打つ分決まる確率も高かったですね。相手も、回転がかかっていないから(返球を)ミスする確率がまた高くて」
ワルドナーが16-13とリード。しかしメンタルの強い劉国梁は、平野の言う「表ソフトの選手がどんどん打てなくなってくる展開」でもスマッシュ連打をやめず、逆転で20-17とマッチポイントを握る。
だがワルドナーは次の一本をしのぎ、さらに劉国梁のレシーブパワードライブを飛びつきブロックで跳ね返し、ノータッチエースを奪う。
「これはまさしく奇跡だ!」と平野も語る一撃で息を吹き返して逆転。
劉国梁のチャンスボールへのスマッシュミスも重なるなど、武井が「神様が何かを仕掛けている」とも言い表す展開で23-21とワルドナーが勝利を決める。
ポーカーフェイスなワルドナーが、彼の選手生涯でもまれに見る鬼神のような形相で雄たけびをあげたのち、こぶしを振り上げて見せた。
5戦して未勝利だった24歳に34歳のワルドナーがまさかの勝利。ここから奇跡が動き出した。
第2試合は強烈な両ハンドを持つパーソンと、精密機械の異名を取る孔令輝が対戦。しかし当時は世界最強格であった孔令輝が圧倒的有利と見られていた。
なおパーソンは紳士で知られており、松下もドイツでチームメイトだったときは常に食事へ誘ってくれたようで現在も交流がある。親日家でも知られ、来日した際には「牛丼に生卵をかけて食べるのが好き」だと。
さらに松下が孔令輝に誘われて、中国超級リーグの黒竜江省チームに加入したときのこと。
松下「なぜか毎朝孔令輝のお母さんが一緒に食事に付き合ってくれて。(松下は)中国語はそんなにできないけど、お母さんはすごく一方的に僕にしゃべりかけてきて(笑)。孔令輝の写真集までくれた」
試合は「孔令輝のほうが断然強かったが、ワルドナーの先勝で中国は動揺した」と松下が語る通り、パーソンが第1ゲームから押し込み、21-17で先制。
第2ゲームも「リスクを負って攻めているのが成功した」と松下が語るとおり、強烈バックスマッシュ「ハンマーバックハンド」などでパーソンがリードする。
先に20-16とマッチポイントを握ったパーソン。孔令輝にカットを織り交ぜた粘りで猛追を受けるも、最後は回り込みドライブを決めたパーソンが21-19で振り切って激勝。難敵を下し、両腕で渾身のガッツポーズを繰り出した。
最強中国のお株を奪う2連勝で、7年ぶりの世界制覇に王手をかけたスウェーデン。しかし次回、卓球帝国・中国の逆襲がはじまる...。その中で奇跡はいかにして起きたのか、お見逃し無く。