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 2013(平成25)年に創部した作新学院女子野球部。6年目となった今年夏、全国高校女子野球大会で優勝を果たした。作新学院と言えば、かつてプロ野球にも幾多の好選手を輩出しており、史上初の春夏連覇を果たしたことでも知られている高校野球の強豪校だ。

 そんな野球の名門校に誕生した女子野球部。早くに成果を上げられた背景を探ってみた。

【作新学院女子、日本一の集合写真】

 JR宇都宮駅からバスで15分ほど、市内のメインストリートとも言える駅前大通を走ると「作新学院前」というバス停に到着する。宇都宮市の中枢ともいえる位置だが広大な作新学院のキャンパスがある。幼稚園から小学部、中等部、そして高等部があるのだが、その広さは東京ドーム3個分とも言われている。

 そこに2016(平成28)年に全国制覇を果たした硬式野球部と全国優勝8回という記録を持つ軟式野球部がそれぞれの専用球場を保有して競い合っている。そして、軟式野球部グラウンドの外野後方に、かつては硬式野球部が使用していた室内練習場がある。現在では、これが女子硬式野球部の専用練習場となっている。

 全国優勝を果たした学校にしては「えっ!?」と、驚くくらいの練習環境ではある。しかし、そのスペースを上手に使いながら、効率のいい練習で日々明るく元気に、そして集中して充実の練習が行われている。

【ランニングの準備゛をする選手たち】

 キャンパスの広い作新学院は、その外周を走るとおよそ1キロになるという。アップのランニングはそこから始まる。そして、メイン練習場となる室内練習場では柔軟体操を経てすぐにトスバッティングから始まる。

 トス~キャッチボール~シートノック~ティバッティング、フリーバッティングという流れで練習は進んでいく。ここまでで1時間半から2時間くらいを要する。これが通常の練習となっている。

【リラックスしながらのアップランニング】

 外部指導員としてチームを預かる田代恭規監督は、「これが、ちょうど1試合分の時間ですよね。それを全体練習という形で行い、その後は自主練習という形にしています。そこで打ち込みをする選手やティでフォームをチェックしたり、1時間から1時間半くらいやっています。この自主練習にどう取り組んでいくのか、これが大きいと思います。今年、優勝したメンバーの3年生たちは、この自主練習を一生懸命にやりました」と言う。

 特に、日々の中では実戦練習はなかなかできないというのが現状となっている。だから、それはむしろ土日の練習試合などで確認していき、そこでの課題を平日の練習でチェックして修正していくということになる。

 女子の場合は、この夏は全国で32校が大会に参加したのだが、まだまだ高校で女子野球部のある学校は少ない。そんなこともあって、大学チームや社会人チームなどとも試合を行うことが多い。そんな大会として、ヴィーナスリーグというのがあるが、作新学院はそれに2チームで参加している。2チームで参加ということは、ほとんどの選手が試合を経験することが出来るということになる。

【シートノックの練習風景】

 田代監督は、「やはり、試合を経験していくことが一番ですから、その機会は出来る限り増やしていってあげたい」という考えもあって、こういう形をとっている。

 もちろん、高校女子野球としての最終目標は、男子と同様に夏の大会である。現状では、その大会が甲子園のある西宮市と同じ兵庫県ではあるが、丹波市いちじま球場というマイナー感は否めない会場ではある。それでも、そこへ向かっていく思いは何ら変わりない。

 そんな彼女たちだが、今年の夏も甲子園出場を果たしている作新学院野球部の応援にも駆け付けた。先に大会を終えた女子の3年生たちのうち6人は、漢字で「作新学院」と書かれた男子と同じ伝統のユニフォームを身にまとってアルプスから応援していたという。

「やはり、甲子園は野球をやっている者にとっては夢の場所だと思います。だけど、女子にとっては、今はいちじまが聖地なので、そこで結果を残せたのはよかった」と主将を務めた生井美桜さんは言う。

【狭いスペースでも元気よく練習】

 まだまだ、歴史の浅い女子高校野球。それでも、選手たちの思いは熱い。それに、高野連管轄ではないということもあり、男子と違って縛りは少ない。そんな自由さも魅力とも言えそうだ。

 今年の夏以降は、「女子で野球をやっているのだけれども、体験入部に参加したいのですが…」という問い合わせが例年以上に多いという。「やはり、優勝したということは大きいと思います。もちろん、新聞記事なんかでは、男子とは比較にならないくらい小さな扱いでしたけれども、それでも女子で野球をやりたいという中学生なんかは意識してくれていますからね。

 実際に、来年に入学してきてくれそうな生徒の中には、かなり技術的に優れていそうな子もいました。そして、そうした生徒が入ってきてくれることで、今いる1、2年生たちの刺激になって来てくれれば、またいい流れが出来るのではないでしょうか」と、田代監督は期待している。

 3年生が抜けた新チームは、2年生が6人、1年生が8人と少人数である。それだけに、新たな刺激も期待している。

(文/手束仁)