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 2009年に近畿地方初の女子硬式野球部として誕生した福知山成美女子硬式野球部。日本代表の主将として、2008年にワールドカップで初優勝に導いた長野恵利子監督が創部当初からチームを作り上げてきた。

【福知山成美女子硬式野球部のアップ中の選手たち】

 創部6年目の2014年には全国高等学校女子硬式野球選手権大会で初優勝。卒業生には今季9勝を挙げた古谷恵菜(アストライア)や今季は最多打点者賞と最多勝利打点者賞に輝いた村松珠希(フローラ)など、数多くの女子プロ野球選手を輩出しており、女子野球の発展に大きく貢献してきた。長野監督は自らの指導方針をこう語る。

「親元を離れて来る子が9割以上なので、野球だけでなく、人間として色々学んでもらいたい。社会に出ても恥ずかしくない育成を心がけています。まず野球をする前に一高校生である。普段の生活をしっかりしないと野球もできないということを教えています」

 関東地方や沖縄県など全国各地から選手が集まってくる福知山成美は大半が寮生活をしている。他部活の生徒と寝食を共にすることで、一人の高校生としての成長を促している。

 また、福知山成美は男子も甲子園に度々出場している強豪校で地元のファンが多い。その流れで女子の応援に来る人も多くなったそうだ。「地元の人の応援があって、成り立っている部分があるので、福知山の人に応援されるようになろうと言っています」と長野監督。地元住民の熱心な支えがあるのも福知山成美の強みだ。

【長野恵利子監督】

 長野監督は今年、U-18女子日本代表の監督に就任。中国の広東省で行われた第2回 BFA 女子野球アジアカップで大会連覇を成し遂げた。オープニングラウンドとスーパーラウンドでは全ての試合で大差がついたが、台湾との決勝は2対1の接戦。着実にアジアのレベルは上がっていると長野監督は話す。

「監督会議で『このアジア杯を通じてともにアジアの発展ができれば』と話していました。日本と大差はありますが、徐々に他国の技術も上がってきています。引き締まった試合ができるようになってきたので、私が選手の時に比べたら発展してきているのかなと思います」

 確実に女子野球の裾野はアジア各地で広がっている。探求心旺盛な長野監督は、日本代表で普段は違うチームに所属する指導者たちとコミュニケーションをとることで、学ぶことが多かったそう。帰国してからはそれを自チームに還元しようと指導に励んでいる。

【走り方について指導する長野恵利子監督】

 長野監督が指導している中で重視しているのが走り方だ。長野監督自身もソフトボールをしていた高校時代に陸上部出身の指導者から走り方を教えてもらったことで技術向上に繋がった経験がある。「走り方一つで野球の技術に繋がる」と冬場は走り方の矯正に力を入れている。

 その際に気を付けているのが伝え方だ。単純に「腕を振れ、太ももを上げろ」と言っただけでは選手には伝わらない。取材に訪れた日も小石を小指と薬指の間で握り、それを落とさないように走るという練習を行っていた。これにより、適切な力の入れ具合がわかるのだという。こうした指導者の工夫で選手たちは力を伸ばしている。

【坂道を使ったトレーニングの様子】

 創部から10年以上が経ち、全国でも続々と女子野球部のある高校が増えてきた。その中で長野監督が目指すのは中学生に憧れられるチームだ。

「成美で野球をやりたいと思えるようなチームを目指していきたいですね。中学生にとって憧れられるチームが目標です。その中で成美に来てくれる子たちを大事にしたいですね」

 中学生から選ばれるチームを目指すべく、これからも魅力的なチームを作っていくことだろう。福知山成美の今後に注目したい。

【ティーバッティングの様子】

取材=馬場 遼