【撮影:戸嶋ルミ】

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 海外で生活するということ、ましてや海外でプロスポーツ選手として生きていくということは容易ではない。ただプレーが上手ければどうにかなるという単純な話ではなく、文化や習慣面で苦労をする外国人選手は多い。そんな中でも、日本の野球文化やしきたりを理解し適応しているのが横浜DeNAベイスターズのホセ・ロペス選手だ。

【撮影:戸嶋ルミ】

 来日から7シーズン目、ベイスターズでは5シーズン目を迎える。チームでは、技術はもちろん精神面でも慕われ頼られる存在だ。そんなロペス選手は、来日直後から日本野球や文化に適応できていたのだろうか。

■”郷に入っては郷に従え”の精神

――2013年に来日されてから今年で7シーズン目になりますが、これまでに感じた「日本特有の野球文化」には、どんなものがありましたか?

「一年目に感じたのは、練習量の多さでした。他にも、練習をするときに球場全体を使っていること――例えばグラウンドでのバッティング練習中に、ファウルラインから外のエリアでは別メニューを並行して行っていたりして。こういったことはアメリカではなかったので、最初はちょっと慣れなかったですね。今はもう慣れましたが。最初の一、二年は練習時間が長いと感じることもありました」

【撮影:戸嶋ルミ】

――「今はもう慣れた」ということですが、どうやって慣れていったのでしょうか?

「日本に来て”自分を出す”のではなく、周りの日本人の方々を見ながら彼らの後を追っていくというか……『郷に入っては郷に従え』という考えですね。自分が日本に来たのは日本の野球を学ぶためで、アメリカの野球やベネスエラの野球を教えに来たわけではないですから」

■日本独特の野球文化「応援」についてロペス選手はどう思う

――日本の野球にはメジャーとは違った文化があると思います。例えば鳴り物応援だったり、観客にユニフォームを配布するイベントデーがあったり、試合後にミュージシャンがライブをやったりすることがあります。こういう日本独特の野球文化についてどう思いますか?

「まず音楽ですね、応援に関しては最初の頃はびっくりしました。両チームともに鳴り物応援があって、攻守が入れ替わると違う方向から音楽が聞こえてくる……こういうことは海外にはないですから!」

【写真=共同通信】 DeNA―ヤクルト16  ヤクルトに勝利し、タッチを交わすDeNAナイン=横浜

「ユニフォームのイベントは、とても素晴らしいイベントだと思います。ファンのみなさんと選手が同じユニフォームを着ることによって、球場全体に一体感が生まれますよね。試合終了後のライブも、球場に来て試合の勝ち負けだけでなく”球場に来たこと”自体を楽しめるイベントですよね。勝てばもちろんですが、負けてしまっても(ライブがあれば)楽しんで帰ることができるのではないでしょうか。どちらのイベントも、ファンのためのことをとてもよく考えているなと思います」

■大歓声に包まれてプレーする喜び

――ロペス選手は、メジャー時代も含めると今までたくさんの球場でプレーをされていますね。いろいろな球場に様々な思い出があると思いますが、中でも一番好きな球場はどこですか?

 ロペス選手は、ジェスチャー混じりでこう答えた。

「Aquí (ここ)」

【撮影:戸嶋ルミ】

「横浜スタジアムはすごくきれいですし、応援がとても響くんです。ドームなどとは違う、独特の反響があって音に包まれる感じです。そしてファンのみなさんは勝っても負けてもいつも応援してくれますよね」

――鳴り物などがある日本の野球応援は、どのように聞こえますか?

「アメリカではもうちょっと静かな環境で野球をやっているので、それに比べると日本は声援が大きくて、野球をやっていて楽しいです。自分のチームだけでなく相手チームの応援もあって、盛り上がりますよね。日本のファンのみなさんの声援はすごく大きいので、野球人としてとても力をもらっています」

 確かに日本の野球文化は独特だ。だが、誇ってもいいのかもしれない。少なくとも、メジャーでオールスター出場も経験しているロペス選手が「日本で野球をやっていて楽しい」と感じてくれていたのだ。

【撮影:戸嶋ルミ】

 柔軟な精神の下、文化や習慣に馴染んでいったロペス選手。信念を持つことは大切だが、受け入れることができればもっと成長できるということを教えてくれた。

 勝負がかかる痺れる瞬間、横浜スタジアムの大歓声に包まれ一層の輝きを放つその勇姿。流れを引き寄せるバッティングを、守備を、いつまでも日本の野球ファンたちに魅せ続けて欲しい。

※取材日は2019年8月上旬
文:戸嶋ルミ