-Ballpark Tripの記事一覧はこちら- 大学野球の聖地として、また東京ヤクルトスワローズの本拠地として多くのファンに愛されている明治神宮野球場(以下、神宮球場)。1926年に開場しており、日本においては阪神甲子園球場(1924年開…

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 大学野球の聖地として、また東京ヤクルトスワローズの本拠地として多くのファンに愛されている明治神宮野球場(以下、神宮球場)。1926年に開場しており、日本においては阪神甲子園球場(1924年開場)に次ぐ歴史を誇っている。

 そんな神宮球場で50年以上にも渡って愛され続けているお店がある。正面入口である7番ゲートをくぐり、つきあたり左手に位置する「欅」(けやき)である。

 そのメニューを見ると、カレーライスや牛丼といった日本人にとって馴染みのあるものばかり。初めて訪れたファンでも、そして老若男女問わずだれでも食べることができる安心感が溢れている。

「欅」(けやき)の店舗外観

 欅の開業は1964年。前回の東京オリンピックが開催された年である。1969年に設立されたヤクルト球団よりも歴史は長い。

 見るからに歴史を知っていそうな米川店長に話を伺うと、当初はコーヒースタンドで営業していたという。そのなかで「食べるものがほしい」というお客様からの声が多くあがり、食事を提供し始めたのが始まりだそうだ。

従業員さんの働いている様子

 そのメニューとなる商品開発は「まかない」からスタートする。これは今も昔も変わらない。従業員がお試しで作り、店舗内での試食チェックを経て、お客様への提供がスタートされる。厳しいチェックをくぐり抜けた商品が販売されているのである。

 米川店長によると、1つの商品が定着するまでに2、3年かかるという。それは路面店のように365日営業しているわけではなく、オフシーズンがあるからである。

 大学・プロ野球出身者や、子供の頃からのファン、3世代に渡ってのファンなど幅広い層の常連さんが多い欅だが、新しいシーズンになると、新商品の販売を開始してもすぐには広まらない。球場内という場所柄、どうしても同じお客様が訪れるわけではない。広まるまでに半年から1年かかってしまう。そして定着するまでには、さらなる月日を擁するのである。

 また人気がある商品が、必ずしも継続して販売されるわけではない。かつてはスパゲッティの評判がよかったという。しかし、待ち時間が多く発生してしまうことで提供をやめたそう。

長い歴史の店舗だけに様々な苦労も乗り越えてきているのである。

米川店長とカレー

 流行に左右されないこだわりもある。それが人気商品のカレーライスである。

 近年カレーに限らずだが、世の中では辛いものが流行っている。

 しかし「欅」では、カレーライスを辛くすることをしていない。米川店長は「球場には多くのお子様が訪れる。だから、甘口とは言わないけれど、安心して食べることのできる辛さで販売を続けているんです」と人のよさそうな笑顔で教えてくれた。

 こういった小さな心配りが「欅のカレーライスを食べよう」といったファンの声に繋がっているのだろう。

 移り変わりの激しい球場内で、ファンからの信頼なくして50年以上も営業を続けることは不可能だろう。神宮球場に足を運んだ際は、ぜひ一度信頼のお店「欅」に足を運んでほしい。きっと「なんだか、ほっとする安心の味」がそこにはあるはずだ。

(記事:勝田聡 写真:高校野球ドットコム編集部)

福神漬けを盛り付ける米川店長

欅自慢のカレー