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「空を見上げました。もちろん沖縄の空にも繋がっています」

2006年夏。早稲田実業と駒大苫小牧の延長再試合に湧いた第88回全国高校野球選手権大会(以下、夏の甲子園)の3回戦。八重山商工高校と智弁和歌山高校の試合中に八重山商工のエース大嶺祐太(現・ロッテ)が、マウンド上で空を見上げた時、実況アナウンサーの口から飛び出したフレーズだ。

甲子園と沖縄は空で結びついている、そんなことを感じさせてくれる名実況として多くのファンの心に刻まれている。

【『高校野球酒場 球児園』の店内の様子】

その空を感じさせてくれる野球居酒屋が東京は神田にある。JR・東京メトロの神田駅から徒歩約5分に位置する『高校野球酒場 球児園』(以下、球児園)である。

球児園の扉を開けると、そこには、「あ、高校野球居酒屋だ」と一目瞭然でわかる光景が飛び込んでくる。壁には様々な高校のユニフォームやグッズが飾ってあり、床は人工芝。そして見上げれば、そこには空が広がっている。

天井にユニフォームやグッズを飾る店舗はあるが、空は珍しいのではないだろうか。店舗を取り仕切っている山川健児オーナーに伺ってみた。

「この物件に決めた時、床は人工芝にしようとすぐ決まりました。そこからさらに、球場にいるような雰囲気を出したかったので、天井を空に仕上げたんです」

店舗ではあるが、球場にいるかのような雰囲気を出したい。そこには山川さんの想いが感じられる。

【店内にはユニフォームがずらりと並ぶ】

飾られているユニフォームにも工夫がある。1校ずつ額に収められているが、その縁にテプラで「都道府県名・学校名・優勝・ベスト4・ベスト8の回数」が記されているのである。

ユニフォームを見たことはあっても、どこの高校なのか、またどれくらいの戦績を残しているのかはわからないファンの方が多い。全員が全員、すべてを把握しているわけではない。これもお客様への気配りである。

【コースターには各高校のマークが彩られている】

山川さんはオーナーでありながら、ほぼ每日店舗に立って接客を行っているという。

「今は、週5回位ですかね。また、スタッフは少し多めに配置しています。人件費を考えれば、切り詰めたほうがいいのかもしれませんが、サービスの質を低下させたくなかったんです」

飲食店にかかる経費で多くの割合を占めることになる人件費。そこを削ることなく、サービスのクオリティを保っているのである。それによって、オーダーを取る際にお客様とちょっとした野球話をするような余裕も生まれてくるというわけだ。

【調理しているスタッフ】

そのスタッフも男女問わず、野球好きが集まっているという。

「女性スタッフも高校のマネージャーをやっていたり、野球が好きなスタッフばかりです。お客様としてお店を訪れてから、『働きたい』と言ってくれたスタッフもいますよ」

女性スタッフを含めて全員が野球好きというのは心強い。だからなのか、ひとりでふらっと訪れる常連さんもいるという。スタッフとちょっとした野球の会話ができることも、ひとつの要因なのかもしれない。

山川さんによるとお客様同士で仲良くなることも多いと言う。

「ひとりで来られていたお客様たちが、たまたま仲良くなって次は一緒に来られたり。イベントも多くやっているのですが、その参加者たちで盛り上がっていたり。比較的、他のお客様と仲良くなりやすいのかもしれませんね」

【地区ごとの高校野球ノートもある】

料理からも甲子園の匂いは感じられる。たとえばマウンドチャーハン。チャーハンの上にポテトが一本施されており、まるでマウンドのようだ。

またキムチ盛り合わせは、1987年春夏連覇を達成したときのPL学園高校メンバーである深瀬猛さんが作っているキムチを使用している。伝説のPL学園高校でレギュラーだった選手がつくるキムチはなかなかない。

【お店自慢のキムチ】

甲子園を感じたい。高校野球の季節はもちろん、それ以外の時期にも多くの高校野球ファンが集まる球児園に足を運んでみてはいかがだろうか。ひとりでもきっと野球好きのスタッフさんや、他のお客様と盛り上がることができるはずだ。

(記事:勝田聡)