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プロ、アマを問わず野球界にかかわるさまざまな人々にスポットを当てる連載。今回は、高校卒業後アメリカへ渡り、その後四国アイランドリーグで活躍したのち、埼玉西武ライオンズで球団スタッフとして活躍する木幡翔氏を取り上げる。最初は通訳をしていたが、自らの意思で打撃投手への道を選んだ木幡氏に、チームスタッフとしての心得ややりがいなどを伺った。
<前編はこちら>目立たなくてもチームに欠かせない存在でありたい<前編>【Baseball Job File vol.27】
■選手がどんな練習をしたいか、それを瞬時に判断
──通訳という形で球団スタッフとなられてから、バッティングピッチャーへと転身されましたが、何か理由はあったのでしょうか?
木幡 自分からBP(バッティングピッチャー)をやりたいですって言ったんです。もともと投げることが大好きでしたから、体が動けるうちにやってみたい気持ちは持っていました。
もちろん、通訳の仕事もいい経験になっていましたが、やっぱり投げたいという思いが強くなったんです。
──直談判をしたわけですね。
木幡 はい。BPをやっていた先輩に、どうにかなりませんかねって相談したら、上の方に話してみるって言ってもらってOKがでたんです。
──思いが通じたんですね。念願のバッティングピッチャーを始められてから、感じられたことはありますか?
木幡 選手への気遣いがなければ、やれない職業だなと感じました。選手は、試合前のバッティング練習で調子を整えて、試合で打たないといけない。だから、各選手が短い時間の中でどんなことをやりたいのだろうと瞬時にさっしなければいけないんです。
僕としては、選手に気持ちよく練習してもらわないといけないわけですから、自分のことよりも、選手の考えを把握して投げられるかが重要な部分で、頭を使うところだと思います。それ以外は、楽しんでやれています。
■現役時代に野手をしていた経験が活かされている
──木幡さんが考える、バッティングピッチャーに不可欠な要素は何だと思いますか?
木幡 バッティングピッチャーも複数いて、それぞれ考え方も違うので一概にこれとは言いにくいのですが、僕の考えとしては、選手がバッティング練習をするときに、この人に投げてもらいたいと思われることだと思います。自分の理想とする練習ができないから、この人は嫌だと思われたら、終わりかなと。
──選手に気持ちよく打ってもらうために投げるということですね。
木幡 そう僕は思っています。僕自身、大学卒業までは野手をやっていたので、野手がバッティング練習でこんなことをしたいのかなと、経験上でわかることもあるんです。
──練習前に選手と会話をして、「今日はこのようにしてほしい」などと要望を受けることもあるのですか?
木幡 それはないですね。選手との会話はほとんどありません。だから、バッティング練習では、最初に投げてみて、選手の打ち方、打球方向をチェックして、今日はこういう考えなんだなって判断する感じです。
ほとんどありませんが、質問されれば答えられるようには準備しています。これも僕だけの考えですし、しっかりできているのかって言われたら、出来ていない部分もまだあると思いますね。
■選手が気持ちよく試合に挑む手伝いをするのが役目
─ バッティングピッチャーをやられていた、やっててよかったなと思える瞬間は?
木幡 やっぱり、バッティング練習で投げた選手が、試合で打ってくれたときですね。僕自身が打つわけではないですし、関係ないといえば関係ないですが、打ったときの姿を見るとうれしさかこみ上げてきます。
──木幡さんの話を聞いていると、昔から思っていた「目立たないけど、こいつがいないとダメ」という存在になれているのではと思いますが、いかがですか?
木幡 どうですかね。なれていればいいですけど(笑)。でも、正解がわからない職業でもあるので、まだまだ、足らない部分はたくさんあると思います。
──選手も個々でやり方も、考え方も違いますから、正解を出すのは難しいですよね。
木幡 そうですね。だから、どの選手にも木幡が投げているときに、ちゃんと打てなかったらダメだって選手に思ってもらえるようなバッティングピッチャーになりたいですね。
──最後に、通訳、バッティングピッチャーと働かれていますが、選手を支える裏方として必要な要素は何ですか?
木幡 選手が気持ちよく試合に臨める手助けをすることが一番。選手が球場に入って、自分のルーティーンなどをこなして、全体練習をして、試合にすんなり入って行ける。そこでベストを出せるようにする。その手伝いをすることが僕たち裏方の役目だと思います。
▼プロフィール
木幡翔(こはた・しょう)
1986年6月28日生まれ、北海道出身。
小学2年生から野球を始め、高校は北海道の強豪校として知られる東海大四(現・東海大札幌)へ進学。
高校卒業後は、アメリカへ渡り、大学や米独立リーグなどで腕を磨いた。
2011年に日本で戻り四国アイランドリーグ・高知ファイティングドッグスで2年間プレー。
2013年から埼玉西武ライオンズで通訳となり、2017年から打撃投手として活躍している。
取材・文/松野友克