世界最高のバスケットボールリーグ、NBAが戻ってくる。6月4日(現地時間。以下同)、リーグが提案した再開フォーマットが…
世界最高のバスケットボールリーグ、NBAが戻ってくる。6月4日(現地時間。以下同)、リーグが提案した再開フォーマットがオーナー会議で承認され、3月11日から中断していたシーズンの再開が事実上決まった。

NBAプレーオフ進出の可能性が残る、八村塁が所属するウィザーズ
その翌日、選手会もこのプランを承認。NBAの選手と関係者がフロリダ州オーランドに集結し、7月31日に予定されているシーズン再開を目指すことになった。
若年層を中心に人気のNBAの再開は、もちろん全米のスポーツファンを喜ばせている。さらに日本のファンにとっては、今季からワシントン・ウィザーズでプレーする八村塁の勇姿が再び見られることも嬉しいニュースだろう。
注目された再開後のリーグ運営のシステムは、プレーオフ進出がすでに決定しているか、出場の可能性を残している合計22チームが参加することになった。各チームはそれぞれ、ポストシーズンを前に8試合のレギュラーシーズン戦を行なう。
ウィザーズは、リーグ中断時点でプレーオフ圏外のイースタン・カンファレンス9位(24勝40敗)。同8位のオーランド・マジックとは5.5ゲーム差で逆転は難しいが、NBAが提案した変則システムのおかげでプレーオフ進出の可能性が残っている。
残り8戦を終えた時点で8位に浮上できなくとも、4ゲーム差以内まで詰められれば「プレーイン・トーナメント」というプレーオフ進出決定戦に出場できる。そこで8位のチームに1敗もせず2連勝すれば、大逆転でプレーオフ進出が決まる。いずれにしても厳しい条件ではあるが、選手、ファンにモチベーションと希望を与えるという点では意味があるシステムだろう。
ただ、再開後のウィザーズに関して引っかかることがひとつある。再開後に勝ち進んでプレーオフに出場した場合、有望な選手をドラフト指名できる確率が下がってしまうということだ。
今の順位のまま(イースタン9位・全体22位)シーズンを終えると、ウィザーズは8月26日に開催予定の「ドラフトロッタリー(※)」に参加することができる。(※)プレーオフ進出を逃した14チームによる、1巡目上位4位までのドラフト指名順位を決める抽選。1巡目5位以降は通常のウェーバー方式。
成績が下位のチームほど当たりを引く確率が高くなる複雑な仕組みで、全体30~28位のチームが全体1位指名権を獲得する確率は一律で14%。ウィザーズが全体22位で9番目に抽選を行なうと仮定した場合、確率は下がるが可能性は4.5%ある。トップ5(全体5位までの指名権を得る確率)となると20%まで上がるが、プレーオフに進出した場合はロッタリー対象から外れ、全体15位での指名が確定してしまう。
チーム再建中のウィザーズは、ポストシーズンに出場できたとしても、上位進出が望める戦力はない。8位でのプレーオフ進出なら、第1ラウンドは中断前のイースタン首位(2位と6.5ゲーム差)で第1シードになるだろうミルウォーキー・バックスと対戦することになり、大敗することがほぼ確実。戦力補強が必要なチーム状態にもかかわらず、ギリギリでプレーオフに進むことで大事なロッタリー指名権を犠牲にするのは、割に合わないと考える関係者も出てくるに違いない。
アキレス腱の手術からリハビリ中のジョン・ウォールが出場するのであれば、話は別だったかもしれない。復帰後のウォールにとって、実戦機会は貴重なものになる。ブラッドリー・ビール、八村といったほかの主力選手とも、来季に備えて早い段階で一緒にプレーしておいて損はない。しかしウォールはすでに、米メディアを通じてリーグ再開後も出場はしないと明言している。
6月6日には、米ウェブサイト『The Athletic』のフレッド・キャッツ記者が、自身のポッドキャストでこう述べた。
「ビールがどのくらいプレーするのかも疑わしい。さまざまな可能性があるが、私はウィザーズがプレーオフ争いのために、ビールに平均36分もプレーさせるとは思わない」
確かに、中断から再開まで約4カ月のブランクができるだけに、大黒柱のビール、31歳のイシュ・スミス、今季終了後にFA権を得るダビス・ベルターンスといった選手たちは無理にプレーをしない可能性もある。健康面のリスクも完全には払拭できておらず、変則日程によって今季終了から来季開幕までの時間が短くなるのであれば、出場を控えて来季に備えたいという考えが生まれるかもしれない。
だからといって、再開後のゲームがウィザーズにとって無意味なものだと言いたいわけではない。ウィザーズのプライオリティが今季よりも来季以降にあるのは事実としても、一部の若手選手たちにはオーランドでの日々が重要な時間になるはずだ。
8試合を戦うために集まる22チームは、優勝、上位進出といった目標がある強豪ばかり。そんな中で、八村、トーマス・ブライアント、トロイ・ブラウン・ジュニア、イザック・ボンガ、モーリツ・バグナーといった20代前半の選手たちが、どれだけやれるかが見どころになる。
ここまで長々とプレーオフ進出時のデメリットを述べてきたが、いずれにしてもウィザーズがそこまで辿り着く可能性は低い。各チームの調整不足という波乱の要素はあっても、超えなければいけないハードルが多すぎるからだ。ビール、ベルターンスをフル回転させても難しさは同じで、すぐに消化ゲームに近い雰囲気になることも予想される。
そんな舞台ではあっても、いや、そんな舞台だからこそ、八村のような”ヤングスター”は遠慮なく思い切ったプレーができるはずだ。上位チームにとっては勝負の場だが、ウィザーズにとってリーグ再開後の8試合は、コートから遠ざかっていた鬱憤を爆発させるとともに、腕を磨き、胸を借り、経験を積むためのステージになる。
来季以降のさらなる飛躍が期待される八村も、プレーオフは意識しすぎず、力試しのつもりでのびのびとプレーすればいい。たった8戦でも、12月まで緊張感のあるゲームから離れてしまうよりもはるかにいいはずだ。ここで力強いステップを踏み出せたら、オーランドでの時間は貴重なものとして記憶されるかもしれない。