徹底した感染対策、厳しい取材規制も 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、大幅なスケジュール変更を余儀なくされていた2…

徹底した感染対策、厳しい取材規制も

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、大幅なスケジュール変更を余儀なくされていた2020年のインディカー・シリーズ。6月6日にテキサス州フォートワースにあるテキサス・モータースピードウェーで、約3か月遅れで開幕した。米調査会社ニールセンによると、NBCで米東部時間午後8時というプライムタイムで生中継されたレースは、インディ500以外のレースでは2016年以来の最高視聴率をマークした。新型コロナウイルスの感染拡大で多くの米国スポーツが中断していることもあり、大きな関心を集めた。

 この大会は当初の日程で今季9戦目に組まれていたが、5月までのレースが中止または延期されたため、開幕戦となった。感染防止対策として無観客で行われ、公式プラクティスと予選、決勝を全て1日で実施するワンデイ・イベント。ドライバーやチームスタッフは最小限の人数に制限され、会場に入る際には健康診断を受けるなど厳しい対策が取られた。チームスタッフはマスク着用を求められ、ガレージ周辺では社会的距離を保つような工夫がされたという。各チームは通常より多いガレージを提供され、できるだけ密集を避けるような対策が取られていたようだ。ドライバーもヘルメットを脱いだ時には、国歌斉唱時なども含めてしっかりとマスクを着用する徹底ぶりだった。

 当日のレースを取材する報道陣の数も厳しい制限が設けられた。テキサス・モータースピードウェーの広報担当者によると、例年125~150ほどの取材パスを発行するが、今回はAP通信や地元紙ダラス・モーニングニュースなどの5媒体と、放映権を持つNBCに限られたという。多くのメディアが現地で取材できないことを考慮し、大会前にはビデオ会議アプリ「ズーム」によるオンライン記者会見が行われ、レース後も3位までが同じ形式でインタビューに応じた。

 主催者から毎レース後送られてくるドライバーのコメント集も、通常より分量が多めで、その辺からも一定の配慮が感じられた。インディカー関係者は「会場内に入れる人数制限がかなり厳しかったため、報道陣も通年通して取材する一部メディアに限られました。次の7月4日のレースでは枠を広げられればと思っています」とコメントした。

 NBCのテレビ・インタビューではドライバーと取材者がマスクを着用。他のスポーツでも同様の厳しい取材規制と感染対策が取られることが予想され、これが当面スタンダードな光景になりそうだ。

佐藤は無念のクラッシュも開催に感謝

 インディカー参戦11年目を迎えた佐藤琢磨は決勝に出場できなかった。昨年、このコースでポールポジションを獲得していただけに期待が懸かったが、決勝前に行われた予選のウオームアップ走行で、コーナーに入るところでスピンしてウオールにクラッシュ。マシンが破損し、約2時間半後の本番に間に合わなかった。

 佐藤は予選後、電話取材に応じ、「全く予想していなかったですね。ウオームアップラップでスピードを上げている最中。コーナーに入った瞬間にコントロールを失ってしまいました。できる限りの準備をしてきましたが、それを発揮できなかったのはとても残念。ファンの皆さんも楽しみにしてくれていましたし、ようやく開幕できるというときに出られないのは何て言ったらいいのか……。申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、さすがにショックを隠せない様子だった。

 予選ということもあり、スピードを上げながらマシンの感触を確かめている段階での思わぬアクシデント。滑りやすくなっていた路面に足元をすくわれた形だが、「セッティングを含めて攻めすぎていたのかもしれないし、僕自身ももうちょっと様子を見ながら慎重に行くべきだったのかもしれないけど予選ですからね。(ワンデイ開催の)状況はみんな同じだし、難しいのは難しいけど、こういうのは予想していなかったのでショック」という言葉に悔しさがこもる。1日開催でなければ修理の時間は十分あっただけに、不完全燃焼の思いは強いだろう。公式プラクティスで6位のタイムを出し、「感触は良かった」と言うだけに次戦に繋げたいところだ。

 スポンサー陣も現場に入れないほどの厳しい規制が敷かれた開幕戦。ドライバーやチーム関係者、報道陣や主催者側も通常とは大きく違う環境で試行錯誤を強いられた。それでも、SNSなどで多くのモータースポーツ・ファンがポジティブな反応を示しており、まず無難にシーズンを滑り出したことは収穫。佐藤も「状況が状況だけにレースできるだけでもすごく良かったと思います。これを可能にしてくれた皆さんにすごく感謝しています」と語った。記者会見でも、多くのドライバーがシーズンを無事にスタートできたことへの安堵感を滲ませていた。

 7月4日にインディアナ州インディアナポリスで行われる第2戦も、無観客での開催となる。5月から延期されたインディ500がある8月までには観客を入れての開催を目指しているという。感染防止対策と取材規制が次戦までにどこまで緩和されるのか不透明だが、少しずつでも通常に近い形のオペレーションに戻っていくことを期待したい。(岡田 弘太郎/Kotaro Okada)