サッカー日本代表・心を揺さぶられたベストゲーム
第9回:
2018年10月16日 親善試合
日本4-3ウルグアイ

見る者の想いを背負い、世界トップクラスを目指して走りつづけてきたサッカー日本代表。その長い戦いのなかで、歴史を大きく動かした名勝負がある。このシリーズでは、各筆者がそれぞれの時代のベストゲームを紹介していく。

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 歴代の日本代表戦のなかで、このウルグアイ戦をベストゲームに挙げると、ちょっと眉をひそめられるかもしれない。ジョホールバルの奇跡やW杯での勝利などと比べると、歴史的な重みはまるで違う。そもそもこれは親善試合だった。



撃ち合いの末勝利した2018年ウルグアイ戦。日本のアタッカー陣への期待が一気に高まった

 ただし森保一監督の率いる代表チームにかぎって言えば、この一戦を観戦している時が、いちばん胸の高鳴りを感じた。なにしろ当時FIFAランク5位の相手(しかもほぼベストメンバーだった)と、激しい撃ち合いの末に勝利を収めたのだ。まぎれもなく、現代表における最高の試合だ(2019年アジアカップ準決勝のイラン戦も捨てがたいが、スリルという点ではこちらが上)。

 ロシアW杯のラウンド16でベルギーとの死闘の末に散った日本は、殊勲の西野朗監督から森保監督に指揮官を交代。日本人監督の路線を踏襲し、協会が掲げる”ジャパンズウェイ”を突き詰めていく決断と受け止められた。

 それから2カ月後の9月には、コスタリカ、パナマとのフレンドリーマッチを、どちらも3-0で快勝。新監督の初陣を完璧な形で飾ったとはいえ、相手の力量を考慮すれば、大喜びするほどの結果でもなかった。そして新生日本代表の真価は、世界的な強豪を迎えるこの3戦目で問われることになったのである。

 高揚感は試合前からたしかにあった。その最大の理由は、ロシアW杯で選外になった3人の若手アタッカーの存在だ。2列目に左から並ぶ中島翔哉、南野拓実(2トップの一角とも)、堂安律。彼らは現代表の初戦となったコスタリカ戦で初めてそろい踏みし、勝利に貢献している。ウルグアイ戦ではその前方に大迫勇也が満を持して加わり、その時点でのベストメンバーで臨んだ。

 過去にW杯を二度制し、ロシアW杯では最終的に優勝したフランスに準々決勝で敗れた真の強敵を相手に、日本はどこまでやれるのか。埼玉スタジアムに詰めかけた5万7239人の大観衆だけでなく、テレビの前のファンも大きな期待を抱いていたはずだ。

 すると開始から、その想いに応えるように日本がのびやかなフットボールを展開していく。エースナンバー10番を背負う中島が頻繁にボールに触れては鋭いドリブルを繰り出し、対峙する名手マルティン・カセレスもファウルで止めるのが精一杯。そして10分に中島の縦パスを南野がターンしながら受け、海千山千のハードマーカー、ディエゴ・ゴディンを外して先制点を決めた。

 28分に同点とされるも、その8分後には中島のミドルのこぼれ球を大迫が詰めて勝ち越し。日本は前半を2-1で終えた。ハーフタイムにスタンドを見回すと、多くの人が楽しそうな表情を浮かべていた。

 後半に入ると、ウルグアイが先手を取る。三浦弦太のバックパスがGK東口順昭に渡る前にエディンソン・カバーニがさらい、そのままゴールに流し込んだ。ウルグアイの絶対的なエースは、ゴール後にその前のプレーでPKを取られなかったことに対する怒りを爆発させた。

 彼らは来日する前に韓国に敗れており、伝統国として極東での連敗だけは避けたかったはずだ。真のトッププレーヤーの感情がむき出しになった姿を見て、これは面白くなると思った(負傷で帯同しなかったルイス・スアレスやホセ・ヒメネスがいれば完璧だった)。

 ところが日本は、直後にウルグアイの勢いを削ぐように、見事なゴールで再び勝ち越す。敵陣でボールを奪った堂安が駆け出しながら酒井宏樹に預け、ボックス内でリターンパスを受けた瞬間にゴディンをかわして代表初ゴールを挙げた。

 さらに66分には、堂安のミドルがはじかれたところを南野がボレーで叩き込み、日本がリードを広げた。最後に1点を返されたものの、最終スコアは4-3。4人のアタッカーが全員、決定的な働きを披露したうえでの白星、いや金星だ。実にタフな相手に勝ちきり、森保監督が束ねる日本は3連勝と、これ以上ないほどの好スタートを切ったのだった。

 この頃から、”ビッグ3”や”三銃士”といったニックネームで呼ばれ始めた2列目のトリオは皆、しっかりとステップアップを果たしている。中島はポルティモネンセから(カタールを経由して)ポルトへ、堂安はフローニンゲンからPSVへと、どちらも同じリーグ屈指の名門へ移籍し、南野にいたっては世界王者リバプールの一員になった。

 翌年のアジアカップでは準優勝に終わり、期待に応えられなかった彼らが、A代表の本番となる次のW杯までに、どう成長するのかを楽しみにしている。そのためにも、疫病の影響によってフットボールのかたちまでもが変わってしまわないことを願う。