法大の青木監督が夏の甲子園大会が中止となった高校球児へエールを送った 法政大学野球部監督で、かつて岩手・富士大学監督時代には山川穂高内野手(現西武)、外崎修汰内野手(同)、多和田真三郎投手(同)らを育てた“名伯楽”青木久典氏が、新型コロナウ…

法大の青木監督が夏の甲子園大会が中止となった高校球児へエールを送った

 法政大学野球部監督で、かつて岩手・富士大学監督時代には山川穂高内野手(現西武)、外崎修汰内野手(同)、多和田真三郎投手(同)らを育てた“名伯楽”青木久典氏が、新型コロナウイルスの感染拡大で夏の甲子園大会が中止となった高校球児へ向け、Full-Countを通じてエールを送った。

 春の選抜に続き、夏の全国高校野球選手権大会も中止。青木監督は「非常に残念。周囲の指導者、親御さんたちが寄り添い、心のケアをしてあげてほしい」とした上で、特に高3球児向けに「野球を現役プレーヤーとして一生涯続けることはできません。大学、社会人で続けたとしても30代まで。プロに行ったとしても、40代までできる人はほんの一握りです。現役を退いてからの方が人生は長い。ですから、“人生の勝者”になれるように、なんとか気持ちを切り替えてほしい」と語った。

 自身は三重高3年の1990年、春の選抜に主将・遊撃手として出場した。1回戦で本塁打を放つなど活躍し、ベスト8入りに貢献。法大、北海道拓殖銀行、本田技研鈴鹿、サンワード貿易でも野球を続けた。2009年に富士大の監督に就任すると、山川、外崎らを発掘し育て上げた。15年からは母校・法大の指揮を執っている。昨年のドラフト会議でも、法大からは宇草孔基外野手が広島2位、福田光輝内野手がロッテ5位で指名され、即戦力として期待されている。

 青木監督は、いまや2年連続パ・リーグ本塁打王で球界を代表する長距離打者となった山川、侍ジャパンに不可欠なユーティリティープレーヤーとなった外崎のケースが、“最後の夏”を奪われた高3球児の手本になると考えている。この2人はいずれも高校時代に甲子園出場経験はなく、中央球界では無名の存在だった。

「『沖縄にすごい選手がいる』と聞いて見に行ったのが、山川でした」。山川は中部商高3年の夏、沖縄県大会決勝に進出したが、好投手・島袋洋奨を擁する興南高に敗れた。「1打席目は、島袋君得意のスライダーを空振り三振しましたが、2打席目にそのスライダーを真芯でとらえ、火の出るような当たりの左前打を放ちました。打ち取られたボールを狙い打ちする頭脳があり、技術的にも対応能力が高いとみました」と青木監督。それだけではなかった。

中部商時代ににじみ出た西武山川の人間性「頭脳や人間性は技術と同じくらい大切なこと」

「その数日前、自分が本塁打を打って勝った試合後の立ち居振る舞いが印象的でした。寄ってくる地元の小学生たちの頭をなでながら、『お兄ちゃんみたいなホームランを打ちたかったら、ご飯をたくさん食べろよ』とか言っている様子がとても微笑ましくて、僕は『これは“獲り”だ』と確信しました。野球選手として伸びるか伸びないかは、人間性に懸かっている部分が大きいと考えていますから」。実際、山川は富士大2年の時に日米大学野球に出場し1発を放つなど成長。13年ドラフト2位で西武入りした。だからこそ、青木監督は現在の高3球児へ向けて「試合ができなくても、頭脳や人間性を磨くことはできるし、技術を磨くことと同じくらい大切なこと」と強調する。

 青森・弘前実高出身の外崎の場合も同様。「弘前実の監督が僕の拓殖銀行時代の先輩だった縁で、青森まで見に行ったのですが、前腕の異常な太さに驚きました。前腕の太い選手はたいてい、リストが強くパンチ力があります。それに、実家のりんご農園が(1991年の)台風で甚大な被害を受けて経営が苦しく、長男の外崎は『プロ野球選手になって親の期待に応えたい』と言っていました。そんなメンタルの強さも良かった」と明かす。

 さらに外崎は、富士大入学後に格段の成長を遂げた。「入学当初はいかにも東北人らしい、おっとりしたところがあったのですが、2年生進級前に、私の所に1人で来て、『このままでは僕は1人前になれないまま終わってしまう。鍛えて下さい』と言ったのです。『こいつ、目覚めたな』と思いました」。外崎は試合中も「どうもスイッチが入っていないので、気合を入れて下さい。叱って下さい!」と直訴してくることが度々あり、そんな時は直後の打席で必ず打ったという。2014年ドラフト3位で西武入り。「努力していれば、見てくれている人は必ずいる。そして大学進学後や入社後であっても、本人がその気になればいくらでも成長できる。外崎はその好例でしょう」と青木監督はうなずいた。

 次回は、高校球児をスカウトする際の動画の効用などについて語っていただく。

○…Full-Countでは夏の地方大会、甲子園の中止を受け、高校野球(硬式・軟式)をやっている3年生の将来の力に少しでもなれればと、アピールに協力したいと考えています。Twitter、インスタグラムで「#このままじゃ終われない」「#フルカウント」とハッシュタグを付けて、自信のあるプレー動画をFull-Count公式ツイッター(@Fullcountc2)へ返信、または投稿してください。拡散に協力させていただきます。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)