1番人気に推されたGI桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)で、2着に終わったレシステンシア(牝3歳)。同馬がその後、牝馬クラシック第2弾のGIオークス(5月24日/東京・芝2400m)ではなく、GI NHKマイルC(5月10日/東京・…

 1番人気に推されたGI桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)で、2着に終わったレシステンシア(牝3歳)。同馬がその後、牝馬クラシック第2弾のGIオークス(5月24日/東京・芝2400m)ではなく、GI NHKマイルC(5月10日/東京・芝1600m)に向かうことは、当初から予定されていたことだった。



桜花賞では2着に終わったレシステンシア(左)。右は勝ち馬デアリングタクト

 陣営にはデビュー当時から、距離に対する不安が少なからずあったようで、距離不安を払拭するような、よほどのパフォーマンスを桜花賞で見せない限り、「オークスには行かない」と決めていたという。

 決して、桜花賞で1馬身半差をつけられた、勝ち馬デアリングタクト(牝3歳)に恐れをなしたわけではない。

 いや、それどころか、陣営としては、多くのファンや関係者の目に「決定的」と映ったデアリングタクトとの差が、そのまま「両馬の力差ではない」と考えているらしい。

 つまり陣営は、桜花賞でデアリングタクトに敗れたことは事実だが、あの負けを「完敗」と捉えていないし、いわゆる「勝負づけが済んだ」とも思っていないのだ。

「陣営としてはあくまでも、『重』発表ながら、不良に近かった当日の特殊な馬場に問題があったと見ています」

 そう語るのは、関西の競馬専門紙記者だ。

 たしかにデアリングタクトは、例年以上に時計がかかる特異な馬場になっていた京都の新馬戦、オープン特別のエルフィンS(2月8日/京都・芝1600m)を快勝。そもそも力の要る馬場は苦にしない。それゆえ、桜花賞と同じ舞台で行なわれた前哨戦のGIIチューリップ賞(3月7日)より、3秒近く時計がかかる馬場でもモノともせず、1頭だけ、後方から追い込んでレースを制した。

 一方、レシステンシアは、2歳時のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月8日/阪神・芝1600m)で1分32秒7という破格の時計をマークして圧勝。元来、パンパンの良馬場でスピードを生かすタイプだ。それが桜花賞では、4角手前で早くも鞍上・武豊騎手の叱咤のムチが飛んだように、時計がかかる荒れた馬場は向かない。

 また、チューリップ賞では7着に敗れている3着馬スマイルカナ(牝3歳)にも、レシステンシアは直線半ばまで食い下がられた。このことをとっても、「重」というより、不良に近い極悪馬場にあって、レシステンシアの能力がいかに削がれたかがわかる。

 前述の専門紙記者が再び語る。

「桜花賞は、それほどの泥んこ馬場の巧拙が問われるレースでした。しかも、レシステンシアは大外に近い17番枠からのスタート。ゲートが開いてすぐに、隣の馬にぶつけられる不利もありました。

 にもかかわらず、勝ち馬との着差は1馬身半差。パンパンの良馬場だったら、『あそこまで負けていない』『もっと接戦になったはず』『勝つ可能性もあった』と、陣営は考えているわけです」

 桜花賞以降、「大物」との呼び声がさらに高まっているデアリングタクト。その馬とも、レシステンシアの能力は「互角」と、陣営は確信している。

 そんな陣営にとって、NHKマイルCはレシステンシアの真価を示す、恰好の舞台となる。デアリングタクトは不在でも、牡馬トップレベルを相手に結果を出せば、あらためて同馬の能力の高さを証明。デアリングタクトとの「勝負づけは済んでいない」という、陣営の見立ての正しさの裏付けにもなる。

 では、勝算はどうか。

「率直に言って、かなり厳しいでしょう」というのは、先の専門紙記者。

 その理由は、レシステンシアにとって、「東京が初めて」ということ。それは、「左回りが初めて」ということに加え、東京までの「長距離輸送が初めて」ということでもある。もちろん、やってみなければわからないが、不安要素であることは間違いない。

 さらに、今回は相手がそろう。GIII毎日杯(3月28日/阪神・芝1800m)を勝って3連勝中のサトノインプレッサ(牡3歳)をはじめ、GIIIアーリントンC(4月18日/阪神・芝1600m)を快勝したタイセイビジョン(牡3歳)、GIIニュージーランドトロフィー(4月11日/中山・芝1600m)でデビュー3連勝を決めたルフトシュトローム(牡3歳)など、名だたる面々が集う。

 そのうえ、これら有力馬は皆、強烈な末脚を持つ差し馬。展開的に、レシステンシアはいい目標にされる、という不利がある。

 状況は明らかに厳しい。それでも、レシステンシアにも、プラスに働きそうなデータがある。

 NHKマイルCがGIレースとして創設されたのは、1996年。以来、昨年までの24回の歴史の中で、牝馬が勝ったことが5回ある。

 そのうち、2007年のピンクカメオは17番人気という超人気薄だったが、それ以外は、いずれも1番人気か、2番人気だった。

 要するに、牡馬トップクラス相手であっても、牝馬でありながら1番人気か、2番人気に推されるほどの馬であれば、このレースを勝つ資格が十分にある、ということだ。

 各メディアの戦前の評価では、レシステンシアは現状1番人気か、2番人気と予想されている。

 これは、レシステンシアにとっては追い風だ。

「厳しい」と言った先の専門紙記者は、レシステンシアが勝つための条件として、次のようなことを挙げる。

「ハイペースの逃げ、これしかありません。そうして、相手になし崩し的に脚を使わせる。自らもきついが、相手はもっときつい、というレース展開に持っていく。そういうレースができれば、活路が開けるかもしれません」

 レシステンシアは2歳時のマイル戦で、1分32秒台で走った馬。2歳の時点で、これほどの時計を叩き出せる馬は滅多にいない。この馬は、それだけ驚異的なパフーマンスを発揮できるポテンシャルを秘めている、ということだ。

 はたしてレシステンシアは、NHKマイルCで華麗なる”ひとり旅”を演出できるのか。注目である。