東京五輪世代
ポジション別スター候補(2)
ストライカー

 ヨーロッパから見ると、五輪サッカーはやや歪な形をしている。ヨーロッパでは五輪の開催年に前後する形でEUROが開催されるため、とりわけプライオリティは低い。五輪はFIFA主催ではないため、各クラブも基本的に選手の派遣には否定的だ。五輪予選自体も存在せず、U-21欧州選手権が五輪予選を兼ねている。U-21欧州選手権の本大会は2年に1回行なわれ、五輪の前年に行なわれる大会が事実上の五輪予選となる。ただ「U-21」というのは欧州選手権の予選が始まった時点(本大会の2年前)の年齢で、彼らの多くは五輪開催時には24歳になっており、別のチームを編成しなければならなかった。



ブラジルのフル代表でもあるガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)

 また、東京五輪にヨーロッパからはスペイン、ドイツ、ルーマニア、フランスの4カ国しか出場しない。アジアからは日本を含めて4カ国が出場。サッカーの実力差を考えれば、あり得ない数字で、欧州側が重きを置いていない証左と言える。現行システム(出場資格はU-23)になった1992年バルセロナ五輪以降、欧州勢で優勝したのはその年のスペインのみだ。

 一方、南米にとって、五輪の優先順位はヨーロッパと比べるとかなり高い。アルゼンチンは92年以降、7大会出場して優勝2回、準優勝1回。ブラジルは優勝1回、準優勝1回、3位2回となっている。2016年のリオ五輪では、ネイマールを擁してブラジルが頂点に立った。

 東京五輪でも、ストライカーとして注目されるのは、南米の2人だ。

 アルゼンチン代表のFWラウタロ・マルティネス(22歳、インテル)は、セリエA挑戦2年目で変身を遂げつつある。すでにアルゼンチンのフル代表で得点を量産。U-23をユース年代の総決算と位置付けるなら、すでに規格外だ。

 マルティネスは見るからに腰が強く、下半身のバランスに優れる。そのため反転が鋭く、相手の裏を取れる。ポストプレーからボールを運び、シュートに至る流れもスムーズで、足の振りも速い。セルヒオ・アグエロに似ているが、俊敏さは格別で、マンチェスター・シティやバルセロナが触手を伸ばしているのも必然だろう。

 2004年のアテネ五輪、得点王になって母国を優勝に導いたカルロス・テベスのような怪物ぶりを発揮できるか、期待される。

 もうひとりの注目選手は、ブラジルのガブリエル・ジェズス(22歳、マンチェスター・シティ)だ。

 小柄だが、体は強く、相手と入れ替わる俊敏さを持ち、動く中で精度の高い技術を使え、視野も広い。リバプールのブラジル代表FWロベルト・フィルミーノ同様、周囲とシンクロする力に長じている。ゴール数はそこまで多くはない。しかし、周りを輝かせながら自らも輝ける。ジョゼップ・グアルディオラが好むタイプのスマートなアタッカーだ。

 2016年のリオ五輪で、ジェズスは金メダルを勝ち取っている。すでにブラジル代表のレギュラーに定着。2019年のコパ・アメリカでは、準決勝のアルゼンチン戦、決勝のペルー戦で得点し、エース級の活躍だった。大舞台で得点できるという点で、大物感もある。

 ほかに東京五輪出場国で最大の目玉FWといえば、キリアン・エムバペ(21歳、パリ・サンジェルマン)だろう。ロシアワールドカップでフランス優勝の原動力になるなど、名実ともに同年代ナンバーワン。トップスピードに乗った時の彼は止められない。

 しかし、エムバペに関しては、所属するパリ・サンジェルマンがすでに派遣拒否を表明している。本人は五輪出場を熱望しているが、レギュレーションの問題をクリアするのは難しい。もし、今年の夏に東京五輪が開催されていた場合、参加は100パーセントなかっただろう。逆転参加の可能性があるとすれば、交渉が続いているレアル・マドリードへの移籍で、「五輪参加」の特約を盛り込めたら……。

 東京五輪には出場できないが、この世代で株が急上昇しているのは、北欧出身の2人のFWだ。

 ひとりはノルウェー代表FWアーリング・ブラウト・ハーランド(19歳、ドルトムント)。ゴールセンスの塊で、マークを外し、ボールを受け、叩く、という一連の動きに淀みがない。大きな体躯だが、ステップワークも軽く、スピードにはパワーも感じさせる。今シーズンはレッドブル・ザルツブルクで得点を量産し、ドルトムントに移籍した。快進撃は止まらず、レアル・マドリードがクリスティアーノ・ロナウドの後釜として移籍交渉を進めている。

 もうひとりは、スウェーデン代表FWアレクサンダー・イサク(20歳、レアル・ソシエダ)。左右両足、頭とどこからでも得点が取れる。ズラタン・イブラヒモビッチ二世という声もあるが、パトリック・クライファートのほうが近いか。ドルトムントでは分厚い選手層に阻まれて燻っていたが、今シーズンは期限付き移籍したソシエダで才能を開花させた。前半戦はサブ要員だったが、その間も腐らず、基礎的なシュート練習を繰り返す姿が印象的で、覚醒しつつある。

 五輪では、国際的に無名な選手でも、得点を重ねて一気にブレイクする可能性がある。たとえば日本U-23代表の上田綺世(21歳、鹿島アントラーズ)は、センスだけを見れば並外れている。大会を触媒に、大化けする可能性もある。