新型コロナウイルスの感染拡大により、日本では政府から東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に緊急事態宣言が発出された。 これを受けて日本サッカー界もすばやく反応し、JFA(日本サッカー協会)は5月末までの各種事業の延期…

 新型コロナウイルスの感染拡大により、日本では政府から東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に緊急事態宣言が発出された。

 これを受けて日本サッカー界もすばやく反応し、JFA(日本サッカー協会)は5月末までの各種事業の延期や中止を、また再開白紙状態のJリーグでも多くのクラブが活動休止や全体練習中止の措置をとるなど、ますます混迷が深まってきた。



大迫勇也の所属するブレーメンは屋外でのトレーニングを再開した

 一体、いつになれば日常を取り戻せるのか。まったく先が見通せない現在、ファンのみならず、当事者である選手やスタッフたちの不安も募るばかりだ。

 そこで気になるのが、日本よりも約4週間前にあらゆるサッカー活動がストップしたヨーロッパの状況だ。

 とりわけ、森保ジャパンの中心とも言える海外組が置かれている状況や、この難局をいかにして乗り越えようとしているのかを知ることは、日本サッカー界にとっては今後を見通すうえでの”道しるべ”にもなるはず。その意味も含めて、あらためて彼らの動向を整理したい。

 まず、リバプールの南野拓実は、プレミアリーグが4月4日までの全試合延期を決定した3月13日以降、チームとしての通常トレーニングがストップ。以降はコーチングスタッフがオンラインで与えるメニューに沿って、自宅での個別トレーニングを続けている。

 最後に戦った3月11日のチャンピオンズリーグ・ラウンド16第2戦のアトレティコ・マドリード戦では、延長後半113分に途中出場していたが、残念ながらチームはトータルスコア2−4で敗退。それが、南野が最後にプレーした試合になっている。

 ロックダウン中のイングランドでは現在、プレミアリーグ側が6月の再開に向けて政府と交渉中で、仮にそうなった場合は5月中に通常トレーニングを始められるという。とはいえ、それも新型コロナウイルスの感染状況次第。まだ出口が見えたわけではない。

 一方、ヨーロッパで最も甚大な被害を受けているイタリアでは、4月3日にセリエAの無期限延期が発表されるなど、いまだ再開の目処は立っていない。

 最後にリーグ戦が行なわれたのは、3月9日の第26節サッスオーロ対ブレシア戦。その後、政府があらゆるスポーツイベントの中止を決めたことで全クラブの活動は停止となり、現在に至っている。

 当然、セリエAでプレーするボローニャの冨安健洋とサンプドリアの吉田麻也も、現在は外出禁止令のなかでの生活を強いられている。

 新戦力ながら開幕から主軸として活躍する冨安が最後にプレーしたのは、2月29日の2位ラツィオとのアウェー戦。チームは敗れたものの、4戦連続フル出場を果たして調子も上々だった。だが、3月9日からは自宅で個別トレーニングを積む毎日を過ごしている。

 また、冬の移籍でサンプドリアにローン移籍した吉田は、3月8日にホームで行なわれたヴェローナ戦で待望のセリエAデビュー。ところが先発フル出場を果たした矢先、冨安同様にチーム練習も休止となり、現在も自宅でのトレーニングに励んでいる。

 目下、イタリアサッカー連盟のガブリエレ・グラヴィーナ会長は5月17日の再開を想定しつつ、もしそれが実現できなかった場合でも、年内までに今シーズンを完結させたいという意向を表明している。

 感染者数がイタリアを越えてしまったスペインも、ほぼ同じ状況だ。3月23日にラ・リーガとスペインサッカー連盟は、リーグ戦の再開を無期延期としている。

 そんななか、3戦連続の先発出場でスタメンを取り返していたマジョルカの久保建英は、3月12日に最初のリーグ戦延期が発表されてからは自宅での個別トレーニングを続けている。

 4月7日には初めてテレワークによるチーム合同練習を実施。オンラインビデオ通話を活用して、ビセンテ・モレーノ監督がストレッチや体幹トレーニングに励む各選手の様子をチェックするというスタイルのトレーニングを行なった。

 同じく、3月10日のレアル・ソシエダ戦でフル出場を果たしたエイバルの乾貴士と、3月7日のアルメリア戦にフル出場した2部デポルティーボ・ラ・コルーニャの柴崎岳も、現在は自宅での個別トレーニング中。政府からの外出禁止令が解かれるまで、チーム練習ができない状況が続いている。

 現状、ラ・リーガのハビエル・テバス会長はリーグ戦の再開について、最短でも5月末になるとしつつ、最も可能性があるのは5月28日、6月6日、6月28日と発言している。だが、スペインでの感染拡大はまだ続いており、楽観はできない状況だ。

 外出禁止令中という点では、フランスのマルセイユでプレーする酒井宏樹も同じ。

 ただし、チームメイトが自宅での個別トレーニングを続けるなか、酒井はこの中断期間を有効に使うべく、3月17日に足首の手術を断行。その後はリハビリを続けながら、地元マルセイユの病院に寄付を行なうなどして、社会貢献にも取り組んでいる。

 なお、リーグ・アンも現在は無期延期状態が続いており、再開の目処は立っていない。

 オランダ、ポルトガル、ベルギーといった国々も感染は拡大しており、各クラブは活動休止に追い込まれている。

 オランダのPSVでプレーする堂安律は、3月12日に連盟がサッカー活動の停止を発表してから、自宅でのトレーニングを続けており、それはフローニンゲンの板倉滉も同様だ。ちなみにふたりは、最後にプレーした3月8日の日本人ダービーでともにフル出場していた。

 ポルトガルのポルトに所属する中島翔哉とポルティモネンセの権田修一も状況は同じで、現在も自宅トレーニングを続けている。ちなみに中島が最後にプレーしたのは、3月7日のリオ・アヴェ戦(フル出場)。権田は3月6日のブラガ戦で、4戦連続フル出場を果たしていた。

 ベルギー組では、ゲンクの伊東純也、シント・トロイデンのシュミット・ダニエル、セルクル・ブルージュの植田直通らが外出禁止令の中で自宅トレーニングを続けていたが、4月2日にリーグ側がシーズンの打ち切りを発表。4月15日の総会で承認された場合、現在首位のクラブ・ブルージュの優勝が決定する。

 だが、これに対してUEFAは決定を撤回することを要求しており、予断を許さない状況が続いている。ちなみに、ゲンクの伊東は3月30日に柏レイソルから完全移籍することが決定。クラブと2023年6月までの契約を結んでいる。

 一方、これまで紹介した国々とは対照的に、一定レベルで感染の拡大を抑えているドイツでプレーする代表選手たちには、ここにきて明るい兆しが見え始めている。

 大迫勇也が所属するブレーメンは4月6日、行政の許可を得たことで4人を1グループとして屋外でのグループトレーニングを再開した。

 もちろんボディコンタクトはなく、ソーシャルディスタンスを遵守するほか、練習場入り口でのスクリーニングも実施し、練習後のシャワーは帰宅後に行なっている。今回の行政による許可は4月19日まで有効とされ、その後は状況を見ながら許可が延長されるかどうかが決定するという。

 同じく、フランクフルトの鎌田大地は4月3日から、2部ハノーファーの原口元気は4月5日から、2部シュトゥットガルトの遠藤航は4月7日から、それぞれ少人数でのグループトレーニングを再開。彼らドイツ組はこれまで約3週間の自宅待機および個別トレーニングを続けていたが、他の海外組よりもひと足早く芝生の上に戻った格好だ。

 4月末までの延期を決めているブンデスリーガも、現在は5月上旬の再開に期待が高まっている。まだ予断を許さないとはいえ、苦境脱出の先頭を切る可能性は濃厚だ。

 なお、現在自宅トレーニングを続けるガラタサライ(トルコ)の長友佑都も含め、彼ら海外組の面々はこの間、連日のようにJFAの公式ユーチューブチャンネル「JFATV」で日本のファンに向けたメッセージ動画や自宅でできる練習動画などを紹介しており、日本サッカー界への貢献も忘れていない。

 これから同じような状況を迎えそうな日本サッカー界も、彼らを参考にしながら、いち早い終息に向けて各自が取り組む必要がありそうだ。