新型コロナウイルスの蔓延で大打撃を受けているイタリア。多くの感染者、死者が出ており、現在、全土に自宅待機命令が出ている。

 もちろん、サッカーも中止を余儀なくされている。セリエAは3月第1週に無観客試合を戦ったあと、無期限に延期された。選手にも陽性者が出ている。ユベントスのダニエレ・ルガーニを皮切りに感染者は増え続け、セリエAではユベントス3人、吉田麻也が所属するサンプドリア7人、フィオレンティーナ3人、ヴェローナ、ミラン、アタランタ各1人と、計16人の感染が確認されている(3月27日現在)。ちなみにミランの感染者はダニエレ・マルディーニで、父親のパオロ・マルディーニも陽性だった。



サン・シーロ・スタジアム(ミラノ)界隈にも人影はない

 しかし、どんなに困難な状況のなかでもユーモアを忘れないのがイタリアである。家から出られないなら……と、自分の家のベランダに出て皆で歌を歌ったり、楽器を演奏したり、果てはDJミキサーを持ちだし、大音量で音楽をかけ、町全体がクラブのようになってしまうこともある。

 もともと人好きでおしゃべり好きのイタリア人にとって、家にこもっていなければいけない状況はかなりつらいはずだ。そこで「#iorestoacasa(家にいよう)」キャンペーンのもと、様々な投稿がSNS上に寄せられ、自宅で楽しく過ごす方法や、皆を楽しませる映像などが次々にアップされている。影響力のあるサッカー選手たちも、国民の慰めになるよう、工夫をこらしたいろいろな動画をアップしている。

 やはり一番多いのはトレーニング風景だ。選手たちも自宅待機を続けているが、いつ試合が再開されてもいいように体力維持には余念がない。

 インテルのラウタロ・マルティネスは、自宅でひたすらハードに練習する様子をアップ。同じインテルのアントニオ・カンドレーヴァは、彼女とロマンチックにトレーニング。2人でストレッチをしながらも、間にキスを盛り込んでいる。ぜひ家で彼女や奥さんと試してほしいということだ。悪童マリオ・バロテッリ(ブレシア)は、銅像の頭を持って腹筋、というかなりシュールなトレーニングを披露している。

 また、流行の「トイレットペーパー・チャレンジ」の投稿も多い。これは2014年に流行した、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の研究を支援するため「アイスバケツ・チャレンジ」のコロナウイルスバージョン。チャレンジャーがリフティングをしてみせた後に、次の選手数人を指名する。最初は普通に10回リフティングができるかどうかだったが、いつのまにかボールがトイレットペーパーに変わり、その後、さまざまなバージョンが派生した。

 フィオレンティーナのフェデリコ・キエーザは手を洗いながらリフティング。イタリア代表監督ロベルト・マンチーニはリフティングした後、ペーパーホルダーにそのままシュートした(ただし、少し編集を加えているように見えるが)。

 ふだんは見られない素顔を公開し、サポーターを喜ばせる選手もいる。ナポリのロレンツォ・インシーニェは、自宅でナポリの応援歌を歌いながら、生地からピザを作るところを配信。なかなかに本格的で、おいしそうな出来上がりだ。一方、アタランタのルイス・ムリエルは、なぜかひたすらアコーディオンを演奏している。

 また、いつもは家族と過ごす時間の少ない選手が、父親の顔を見せるのも貴重だ。ローマのダヴィデ・サントンは娘とボードゲームをして負け、悔しがる姿を見せ、インテルのボルハ・ヴァレーノはベッド越しに息子とサッカー対決だ。

 チーム単位で企画をするところもある。たとえば冨安健洋が所属するボローニャのリカルド・オルソリーニ、アンドレア・ポーリらは、ひとり暮らしのために寂しい思いをしているサポーターに電話をかけている。みんなこの心温まるサプライズに大喜びだ。

 また、パルマの選手たちは、家にいて友達と遊べない子供たちに向け、リレー方式で童話を読み聞かせている。子供を持つ選手が多いからか、なかなか読むのがうまい。

 現役選手だけでなく、引退したかつての有名選手たちも、何かできないかと模索している。

 フランチェスコ・トッティとクリスティアン・ヴィエリは、テレビ電話で会話するところをインスタライブで流し、相変わらずの仲のよさとギャグで往年のファンを沸かせた。ミランでプレーしていたカカは、ラウラ・パウジーニという女性歌手とインスタでトーク。一緒にミランの応援歌を歌い、コロナウイルスと戦っているマルディーニにエールを送った。

 サッカー中継のなくなったテレビでは、2006年にイタリアが優勝したドイツW杯が再放送されている。このときの優勝メンバーたちは、もう一度ともに戦い、今度はコロナウイルスを制しようと、医療機関に向けての寄付を募っている。その宣伝として、キャプテンだったファビオ・カンナヴァーロは、アレッサンドロ・デル・ピエロ、チロ・フェッラーラら往年のスターを含め、毎日数人の選手とインスタライブをしている。

 マルコ・マテラッツィとの回では、2006年W杯のフランスとの決勝での、ジネディーヌ・ジダンへの”頭突き事件”の裏話が披露された。

「フランス戦の前半、『ジダンを止められてなかった』と、(ジェンナーロ・)ガットゥーゾにめちゃくちゃキレられた。だから俺は、何が何でもジダンを止めなきゃいけなかったんだ」

 そして、実際にマテラッツィが何をジダンに言ったのかも。

「俺がユニホームをひっぱると、ヤツは『ユニホームがほしいなら試合後にくれてやる』って言ってきた。だから俺はこう答えたんだ。『お前のユニホームなんてほしくねえ。ほしいのは○○だ』ってね」

 セリエAは7、8月をめどに再開する予定とも言われているが、現在の状況でそれを決めるのは時期尚早だという声が北部のチームを中心に上がっている。イタリアとセリエAの先行きはいまだ不透明である。