3月19日、プレミアリーグは中断期間を4月30日まで延長すると決めた。

 3月13日の時点では「中断期間は4月3日まで」とされたが、英国での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当初の発表からわずか6日後に中断期間を1カ月近く延ばした。



はたしてプレミアリーグは再開されるのか

 13日の時点では、英国の感染者数は「797名」で、死者は「10名」。しかし、19日には感染者数「3269名」と4倍近く上昇し、死者の数も「144名」と約14倍も増加した。プレミアリーグの決断は至極まっとうなものだ。

 とはいえ、13日の中断発表時から「4月4月からのリーグ再開は難しい」との指摘は多かった。いや、ほぼすべてだったと言えよう。

 英国政府が、これまでの「封じ込め」対策から、感染のピークを遅らせる「遅延」のフェーズに入ったと発表したのは3月5日のこと。政府の方針は、感染拡大のスピードを遅らせるのが狙いだ。

 事実上、感染者の増加を止めることはできないため、ゆっくりと増加させながら6月に感染者のピークを迎えるという。それゆえ、4月4日のリーグ再開は現実的とは言えず、英メディアでも「今季リーグ戦の再開の見通しが立たない」との意見で埋め尽くされていた。

 それでも、プレミアリーグが今季リーグ戦を中止とせず、4月30日までの中断に再設定したのは、経済的損失を最小限に食い止めたいという切実な思いからであろう。英紙インディペンデントによれば、このまま再開できなければ、プレミアリーグには今季テレビ放映権の約4分の1にあたる7億6200万ポンド(約1023億円)の損失が生じる。

 また、下部リーグのクラブはスタジアムのチケット収入が絶たれるため、これ以上の中断は死活問題になる。実際、英5部のバーネットでは60名のスタッフに解雇を通告したという。中断が続けば、経営破綻するクラブが出てきてもおかしくない。

 その一方で、選手側からすれば、沈静化するまでプレーしたくないのが本音だろう。

 英紙タイムズが「今季の残り試合を無観客で実施へ」とスクープしたのは、3月12日のことだった。同紙は「今季の残り試合は通常どおり行なわれるが、プレミアリーグと下部リーグも含めてサッカーの試合は無観客で行なう」「パブなど大勢の来客がある店でのサッカー中継の放映を禁じる」「チケット購入者やシーズンチケットホルダーは、インターネットのライブ中継を通して試合を観戦できる」と報じた。

 かなり具体的な措置を含めての報道だったことから、関係者から情報が漏れ伝わっていた可能性は高い。

 ところが、同日の12日に行なわれた緊急会議で、プレミアリーグは週末の試合を通常通り行なうと発表した。「屋外でのイベント中止の効果は限定的である」とのボリス・ジョンソン英首相による当時の見解を受けてのもので、正直、筆者もリーグ続行の決断には驚いた。

 だが、「続行」の発表直後にアーセナルのミケル・アルテタ監督とチェルシーのFWカラム・ハドソン=オドイの感染が発覚。監督や選手に陽性反応が出たことから方針の変更は不可避となり、プレミアリーグは翌日の緊急会議でリーグ中断を決めた。元イングランド代表DFのガリー・ネビルが「監督に感染者が出るまでプレミアリーグは動かなかった。恥ずべき行為」と強く批判したのは、そのためだ。

 現在、英2部ダービー・カウンティでプレー中のFWウェイン・ルーニーも「選手、スタッフ、家族にとっては不安な1週間だった。中断決定までの対応は、サッカー選手をモルモットのように扱っていると感じた。自分が感染し、家族が重症化したら現役を続けるかどうか真剣に考えていたと思う。そうなれば、当局を決して許さない」とし、もっと早いタイミングで中断を決断しなかった英国政府やイングランド・サッカー協会に怒りをぶつけた。

 気になるのは、やはり今後だ。19日にプレミアリーグが行なった緊急のビデオ会議で、今季の残り試合をすべて消化させることで全20クラブの見解が一致したという。

 しかし、英衛星放送スカイスポーツでレポーターを務めるブライアン・スワンソン氏は「プレミアリーグは『新型コロナウイルスの感染推移は依然として不透明だ』との声明文を発表した。だが、今後の見通しが立たない状況で、プレミアリーグは『リーグ再開』という具体的なプランを持ち込もうとしている。4月下旬にリーグを再開するとの案は、依然として実現が難しい。おそらく、数週間以内にこの計画も変更になるだろう」とし、プレミアリーグの修正案に否定的な見解を示した。

 このまま再開できなければ「優勝目前のリバプールの優勝を認めるか?」が最大の争点となり、全試合を消化できない場合も「来季降格チームをどのように決めるか?」「2部からの来季昇格チームをどう決定するか?」といった議論が生じる。

 UEFAが定めた今季の最終期限は6月30日まで。ここまでに全日程を消化できるか。

 もっと言えば、無観客試合でリーグを再開したとしても、監督や選手に感染者が出れば、濃厚接触者が自宅待機の形で隔離されるだろう。そうなれば、リーグ自体が再び中断となる。リーグを再開しても、リーグを中断しても、課題と問題は山積みということだ。

 筆者が住む英国・北ロンドンでも、緊張感と不安感は増してきている。すでにイタリアやスペインで外出禁止令が出ているせいか、あるいはロンドン封鎖の噂がSNS上で広まっているせいなのか、スーパーマーケットでは食料品(パスタや缶詰、冷凍品)や日用品(トイレットペーパーやハンドソープ、消毒剤)の買いだめにより、極端な品薄が続いている。

 実際、ロンドンでは感染防止のため、19日から地下鉄40駅の閉鎖が始まった。「英国は、イタリアの感染状況から3週間遅れている」とも伝えられており、サッカーを楽しめる雰囲気ではないというのが率直な印象だ。

「選手、スタッフ、サポーターの健康が最優先事項である」

 プレミアリーグが発表したとおり、今は人々の健康を第一に考え、じっと耐えしのぐしか道はない。