昨季チャンピオンズリーグ覇者、リバプールがCL決勝トーナメント1回戦で姿を消した——。 3月11日に行なわれたリバプール対アトレティコ・マドリードの決勝トーナメント1回戦の第2レグで、リバプールは2−3で敗れた。南野拓実は4人目の交代選手…

 昨季チャンピオンズリーグ覇者、リバプールがCL決勝トーナメント1回戦で姿を消した——。

 3月11日に行なわれたリバプール対アトレティコ・マドリードの決勝トーナメント1回戦の第2レグで、リバプールは2−3で敗れた。



南野拓実は4人目の交代選手としてピッチに入った

 試合は90分間で2試合合計スコアが1−1となり、延長戦に突入。その延長戦でリバプールは1点を挙げたが、その後に3点を奪われた。結果、2試合合計スコアが2−4となり、リバプールの敗退が決まった。CL連覇の夢はベスト16で潰えた。

 リバプールは2月の上旬〜中旬にかけて取ったウィンターブレイク明けから、なかなかコンディションが上がってこなかった。

 しかし、今回の一戦は休暇明けからちょうど1カ月が経つタイミングで行なわれ、冬季休暇からピークをこの試合に持ってきたかのように、リバプールの選手たちはエネルギッシュかつ鋭いプレーを見せた。試合に敗れはしたが、休暇明けの試合では、選手の動きは一番よかったように思う。

 それでも勝ち切れなかった理由は、(1)押せ押せだった後半に追加点を奪えなかったこと、(2)A・マドリードのスロベニア代表GKヤン・オブラクがスーパーセーブを連発したこと、(3)延長前半にリバプールのGKアドリアンが失点直結のキックミスを犯したこと、(4)A・マドリードのしぶとい守備戦術が機能して最後まで集中力も切れなかったこと、にあったように思う。

 リバプールにとっては控えGKのアドリアンのミスが痛かったが、試合全体で考えるとA・マドリードの奮闘が光った試合であった。

 さて、この試合で南野拓実に出番の声がかかったのは、2−2(2試合合計スコアは2−3)で迎えた延長後半8分だった。延長突入後の4人目の交代選手として、FWロベルト・フィルミーノと入れ替えでピッチに入った。投入時、南野は「ゴールを獲ることだけ」を考えていたという。

 勝ち抜けには得点が必要なリバプールは、前線に人を並べて総攻撃に打って出た。CBのフィルジル・ファン・ダイクもCFの位置に入り、リバプールは6トップのように見える場面もあった。対するA・マドリードはCFのアルバロ・モラタも自陣深い場所まで戻り、「全員守備」で逃げ切りを図った。

 A・マドリードの守備のほころびを見つけようと、日本代表アタッカーは幅広く動いた。最前線にとどまることもあれば、中盤まで戻ってパスも受けた。さらには右サイドにプレー位置を移し、投入から4分後にはファン・ダイクの頭に合わせるクロスボールも入れた。

 だが、リバプールの反撃は実らず、逆にカウンターから追加点を許し、2−3で試合終了のホイッスルを聞いた。最後まで粘り強く戦った選手たちに対し、アンフィールドのスタンドからは健闘を称える拍手が起きた。

 試合終了からしばらく経ったタイミングで取材エリアに姿を見せた南野は、落ち着いた様子で延長までもつれた激戦を振り返った。

「優勝を目指していたチームですし、クオリティもあるチームだと思うので、すごく残念です。今日の試合もうまく戦っていたと思う。2−0までのゲームプランはすばらしかったと思う。

 選手ひとりのミスではないですが、チーム全体としてミスが大きく試合を分けてしまうんだなと。そういうことを思い知らされたゲームでした。

 CLの決勝トーナメントに残るチームは、やっぱりグループリーグとは強度や戦術などそういう部分がやっぱり違うなと思いました。相手も戦い慣れていた。俺らが逆転しても、ワンチャンスでこうやってひっくり返してくるようなメンタリティを持っていたし、そういう戦い方を知っていた」

「CLの舞台で、何か手応えを掴んだか」。そんな質問が飛ぶと、日本代表MFは次のように言葉を返す。

「いや、何もないですね。別に『これをいい経験』と言っているほど若くないし。このなかで何かを残したかったという気持ちです。

 チャンピオンズリーグで負けて、どうなるかわからないですけど、またそういう意味ではフレッシュな選手たちにも(プレミアリーグで)チャンスが来る場面もあると思う。そこでしっかりいい準備をしていければいいかなと。プレミアの優勝に貢献できるよう、試合に出たらがんばりたいと思います」

 最後まで緊張感あふれる好ゲームになったが、ひとつ残念なことは、勝負を決める大きなミスを犯したGKアドリアンに、SNSを通して「死の脅迫」や「2度とプレーするな」といった心ない言葉が寄せられたこと。こんな輩(やから)はファンではないと断言できるが、試合中と試合後で印象に残るシーンがあった。

 延長戦の前半が終わったタイミングで、リバプールのメンバーはユルゲン・クロップ監督が中心となって円陣を組んだ。南野もそっと輪の中に入ると、まずポンと肩を叩いたのが、リバプールの2点目を決めたフィルミーノだった。

 ホームのアンフィールドで337日間にわたりゴールのなかったブラジル代表FWを祝福し、次に声をかけたのが、失点直結のキックミスをしたアドリアンだった。ひと言ふた言、33歳のスペイン人GKに言葉をかける南野。さらに試合後も、すぐに歩み寄って励ましていたのが、気落ちしていたアドリアンだった。

 英国でも新型コロナウイルスの感染者と死者が増加し、暗いムードが漂い始めている。日増しに重苦しさと息苦しさが蔓延し始めているなか、南野拓実がチームメイトに見せた心遣いに、少し心が洗われた気がした。