出場決まっていた選手に同情も「安全にはかえられない」  新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、19日に開幕する予定だった第92回選抜高校野球大会の中止が11日に決定した。1965年の第37回大会に出場し、その後ヤクルトで名左腕投手として鳴ら…

出場決まっていた選手に同情も「安全にはかえられない」

 新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、19日に開幕する予定だった第92回選抜高校野球大会の中止が11日に決定した。1965年の第37回大会に出場し、その後ヤクルトで名左腕投手として鳴らした安田猛氏は「英断だ」と称賛する。

「野球というスポーツは、チームメートとはもちろん、対戦相手とも塁上の交錯プレーなどを通し意外に接触が多い。選手の安全にはかえられない」と強調する。

 もちろん、出場が決まっていた32校の選手の心情を思えば「あまりにかわいそう。高校球児にとって甲子園というのは特別であり、『リスクを背負ってでも出たい』という気持ちが強いだろう。私自身にとっても高校3年の時の選抜大会が唯一の甲子園大会だけに、胸が痛い。しかし、こればかりはどうしようもない」と嘆く。

 一時は無観客で開催する方向だったが、「大相撲春場所のテレビ中継を見ていても、やはり盛り上がらない。観客がいてこそのスポーツイベントだと痛感する」とも指摘する。

 安田氏は福岡・小倉高3年の春に選抜大会に出場。1回戦で、のちに阪神で名遊撃手といわれた藤田平らを擁する市和歌山商に1-2で惜敗した。市和歌山商はこの大会で準優勝している。

 ちなみに、安田氏は2017年3月に「ステージ4のスキルス性胃がん」で「余命約1年」と診断されたが、抗がん剤治療を続け、3年を経過した現在は病状も安定。ときおり母校・小倉高で選手を指導するほど精力的だ。それでも「最近は通院以外は外出を控えています。他人にうつしてはならないのが第一。そして、私は72歳の高齢で、血糖値が高く、抗がん剤も投与していて重症化しやすい要素が多い。せっかく、がんに負けないように頑張っているのに、新型コロナウイルスにやられたくはない」と語っている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)