チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の第2戦、ライプツィヒ対トッテナム・ホットスパー、バレンシア対アタランタは、2試合とも第1戦の結果が覆らずに終わった。ベスト8にはライプツィヒ、アタランタが進出した。戦前、強者と目され…

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の第2戦、ライプツィヒ対トッテナム・ホットスパー、バレンシア対アタランタは、2試合とも第1戦の結果が覆らずに終わった。ベスト8にはライプツィヒ、アタランタが進出した。戦前、強者と目されていたのはスパーズでありバレンシアだった。大局的に見れば番狂わせが起きたことになる。



ライプツィヒに敗れCLから姿を消すトッテナム・ホットスパーのジョゼ・モウリーニョ監督

 その下馬評の元になっていたのは過去の実績だ。決勝トーナメント進出はライプツィヒ、アタランタとも初めてで、アタランタに至ってはCL本大会に出場すること自体、クラブとして初の経験だった。

 アタランタはホームの第1戦に4-1で勝利していた。だが、気になっていたのは防戦一方となった終盤の戦いで、その流れで第2戦を迎えると、3点差があっても危ない……そう思って試合を見始めた矢先の出来事だった。開始早々の3分、アタランタはいきなりPKをゲット。スロベニア代表のヨシプ・イリチッチがこれを決め、試合を動かぬものとした。

 結局、スコアは3-4でアタランタの勝利。合計スコア8-4でベスト8入りを決めた。ちなみにイリチッチはこの第2戦で4点を記録。CL史上、過去に1試合5ゴールを挙げたことがあるリオネル・メッシ(バルセロナ、2011-12シーズンのレバークーゼン戦)、ルイス・アドリアーノ(シャフタール、2014-15シーズンのバテ戦)に次ぐ、通算3位タイの記録になる。

 もうひとつ知っておくべきは、アタランタの多国籍性だ。この日、途中交代を含めて出場した選手14人の国籍数は11に及ぶ(イタリア人、オランダ人、アルゼンチン人が2人ずつ。他はアルバニア、スイス、ドイツ、スロベニア、クロアチア、ウクライナ、フランス、コロンビア)。

 CLには多国籍化したチームが目につくが、ここまでバラエティに富んだチームも珍しい。サッカーの傾向をひと言で表現しにくい、いい意味でつかみどころがないチームに見える。採用する3-4-3の布陣にしても、一見、守備的サッカーに見えるが、実際は攻撃的サッカー色が強かったりする。まさに臨機応変。総合力は低いが、伏兵らしいカメレオンのようなチームだ。

 敗れたバレンシアは無観客試合になったことが痛かった。ホームとアウェー、どちらか一方が無観客試合というのは、アンフェアな気がする。とはいえ、その内容は低調だった。ストロングポイントに欠ける平凡なサッカーだった。

 スパーズホームの第1戦に0-1で先勝したライプツィヒ。アタランタ同様、前戦の終わり方が、まさに逃げ切る形だったので、第2戦が心配された。だが、この試合も、前評判の低かったライプツィヒが開始10分、マルセル・ザビッツァーが早々に先制点を奪い、通算スコアを2-0とした。

 こちらの試合はホーム、RBアレーナを満員に埋めたなかで行なわれ、ホームの利が見込めた。この段階で7〜8割方勝負あったかに見えた。だがライプツィヒは、さらにその10分後(前半20分)、同じくザビッツァーが追加点をゲット。ライプツィヒの勝利はその瞬間、決定的となった。

 番狂わせがいとも簡単に起きたという印象だ。スパーズはご承知のとおり、昨季のCL準優勝チームだ。決勝ではリバプールに完敗したが、シーズンを通して準優勝チームに相応しいサッカーを披露したA級チームだった。

 ところが今季は開幕から不調。昨年の11月、ジョゼ・モウリーニョがマウリシオ・ポチェッティーノ解任を受けて監督の座に就いた。しかし、プレミアにおける現在の成績は8位。浮上していない。

 今年1月にハリー・ケインが、CLの決勝トーナメント直前にはソン・フンミンが、それぞれ戦線離脱。さらに、ライプツィヒとの第2戦を前に、今季PSVから獲得した右MFスティーブン・ベルフワインも故障と、ケガ人が相次いだ。不運に見舞われたことは確かである。

 2年連続でCL決勝を狙うだけの体力がクラブになかったと言えばそれまでだが、ライプツィヒ戦に関して言えば、サッカーの中身に付いても触れたくなる。

 ライプツィヒのユリアン・ナーゲルスマン監督は、極論すれば、カウンターの監督だ。守りを固めて少ない人数でスピーディに攻め切る、まさに抜け目のないサッカーを信条とする、ドイツ人らしい監督だ。3バックながら、FWが3トップ風に開き気味に構えるので、高い位置からプレッシャーも効かせやすい。

 一方のモウリーニョには、これと言ったスタイルがない。持ち味は臨機応変さだ。戦い方を相手によって変えようとする。たとえば、相手が格上で攻撃的ならば、引いて守ってカウンターのサッカーを仕掛けようとする。CLでは特にそうした傾向が目立つ。

 下馬評で格下と言われたチームにはどう出るか。ライプツィヒとの第1戦では、けっして攻撃的とは言えないライプツィヒに、4-2-3-1の布陣で臨んだ。守備的サッカーに対して攻撃的サッカーで臨んだのだ。

 だが、モウリーニョは、こうした守備的な弱者との対戦は得意としない。どちらかと言えば番狂わせを起こす側、弱者側に立つことを得意とする。

 0-1で迎えた第2戦はどう出るか。答えは3-4-2-1だった。第1戦より守備的な姿勢で臨むことになった。追いかける立場なのに、である。それはライプツィヒの3バックより、さらに守備的に見えた。

 相手を強者とし、守りを固めながら、じっくり慎重に向かって行く。まさに得意とする側に回って、戦おうとしているように見えた。

 ところが、開始10分で先制され、前半20分で合計スコアを0-3とされた。守備的サッカーに出たにもかかわらず、たちまち2ゴールを連取された。この瞬間、モウリーニョとスパーズには、とりつく島がなくなった。

 通算スコア0-3とされてから、残り時間は70分残されていた。攻撃的サッカーに切り替えて臨むことはできたはずだ。しかし、モウリーニョにそうした覇気は見られなかった。試合勘(特にCLにおける)がすっかり鈍ってしまったように見えた。かつてのカリスマ性はどこへやら、だ。

 87分にも追加点を奪われ2試合の合計スコア0-4で大敗したスパーズ。心配になるのはスパーズよりモウリーニョだ。来季、スパーズの監督を続投することはないだろう。モウリーニョはどこへ行く。