今シーズンのヤクルト投手陣は、誰もがキープレーヤーである。なかでも、3人の大卒ルーキーは”即戦力”としての期待が大きく…
今シーズンのヤクルト投手陣は、誰もがキープレーヤーである。なかでも、3人の大卒ルーキーは”即戦力”としての期待が大きく、チームの浮沈を握っているといっても過言ではない。

今季、プロ初勝利を目指す2年目のヤクルト・清水昇
吉田大喜(ドラフト2位)は、日体大の4年春にリーグトップの防御率をマークし、侍ジャパンの大学代表にも選出された逸材だ。新人合同自主トレ時に「再現性とコントロール、真っすぐの質とキレをアピールしていければ」と話していたが、キャンプ終盤で「体のきつさもあり、あまりアピールできていません。これからですね」と言った。
「大学の時は、3月後半ぐらいから徐々に仕上がってきたので、そこに合わせながらアピールするという感じで……。新人なのでそこが難しいところですが、焦らずにやっています」
事実、チーム関係者が「僕が見てきたなかで、キャンプ初日にブルペンに入らなかった新人は初めてだと思います」と語ったように、自分のペースを崩さないという意識は強く伝わってきた。そのことを吉田に話すと、こんな答えが返ってきた。
「(初日のブルペンについて)やっぱりそうでしたか。僕も『空気が読めなかったかな』と思ったんです(笑)。でも、開幕直後に活躍することも大事ですけど、年間を通して結果を出すことがプロだと思っています。無理をせず、徐々に状態を上げていければと」
吉田は2月22日の広島とのオープン戦で初登板。2イニングを打者6人できっちりと抑えた。後日、話を聞くと「少しはアピールすることができたと思います」と、笑顔を見せた。
「試合のほうがブルペンよりもいいボールを投げられるというか、自分では実戦派だと思っています。試合をつくれることが持ち味でもあるので、今後もそこをアピールしていきたい。そのためには真っすぐの球威がまだ足りていませんし、細かいコントロールも仕上げていきたいです」
杉山晃基(ドラフト3位)は、創価大4年春のシーズンに4勝を挙げ、防御率0.69というすばらしい数字を残した。春季キャンプではシート打撃で最速152キロをマークし、持ち球のフォークも日を追うごとに落ちがよくなっていた。
「僕は投げっぷりだったり、真っすぐの力強さが持ち味なので、アピールはできていると思います」と語っていた杉山だったが、初登板となった広島とのオープン戦では、1回途中6失点で降板となった。
「変化球が制球できずに、どんどん悪いほうへいってしまいました。課題が見つかったことを収穫として、次に生かしていきたいです」
プロの洗礼を浴びた2日後、杉山はブルペンで220球を投げ込んだ。普段は穏やかでマイペースの杉山だが、午後の個別練習でも室内練習場でネットスローを繰り返していた。
「これだけ投げたのは初めてです。今日は納得いくまで投げると決めていました。最後の2球はよかったのですが、まだまだです。自分のなかで(前回の登板は)まだ消化できてないです」
その杉山は3月4日のソフトバンクで、自己最速の156キロをマーク。高津臣吾監督も「ヤクルトにはいないタイプ」と、パワー型ピッチャーとしての期待が高まっている。
大西広樹(ドラフト4位)は、大商大時代に通算27勝をマーク。沖縄での実戦登板では2試合に登板して、2イニングを無失点。打者を圧倒する球速はないが、キャッチャーが捕りづらそうにしている”動く真っすぐ”が特徴で、毎日のように投げられるタフネスさも魅力だ。
「ボールは自然に動きます。それをしっかりと低めに集めてバットの芯を外すところが持ち味で、チームを勝たせられる投手になることが目標です。自分がよくてもチームが負けたら意味がないですし、任せられた場所でしっかりと抑え、状況によっては三振を奪いにいってチームに流れを引き寄せるピッチングを心がけたいです。気持ちは強いほうだと思っているので、その部分も前面に出していきたいです」
また、彼らのほかにも新人合同自主トレが行なわれていた1月の戸田球場では、星知弥(2016年ドラフト2位)と清水昇(2018年ドラフト1位)の練習する姿が印象に残った。ともに即戦力として期待されるも、いまだ結果を残せずにいる。
「星さんは同じ大卒ですし、去年、僕らは本当に悔しい思いをしました。シーズン終了後に『お互いどうにかしないとね』と一緒に自主トレをすることになったんです」(清水)
「僕にしても清水にしても、先発ローテーションに入らないといけない立場だと思っています。そこに強い自覚を持ってやっていこうと。一緒に練習するなかで競争意識も芽生えましたし、逆にそれぞれの体の使い方などを話し合うこともできた。いい時間が過ごせました」(星)
その後の沖縄・浦添キャンプで、星は充実した表情を見せていた。
「ブルペンで感じた疲労感はなによりうれしかったです。1年目はシーズンを通して投げることができましたが、そのあとはひじの手術もあり、去年は何もできませんでした。気持ちが沈んだ時期もありましたが、今、こうして投げられること、普通に走れることができて、本当に幸せなことだと実感しています。
ただ、そのことに喜ぶだけじゃなく、ブルペンでもより実戦的にならないとダメだと思っています。股関節の使い方を課題にして取り組んでいますが、もっと考えて、開幕までに自分のものにしたいです。それができれば、肩やひじへの負担も変わってくると思っています」
星に今シーズンの目標について聞くと、こんな答えが返ってきた。
「僕にとって大切なのは、シーズンを投げきることです。一軍にずっといることができれば、結果もついてくるでしょうし……。まずは1年間をしっかり投げきること。それが目標です」
星はキャンプ終了後に二軍合流となったが、チャンスは絶対に訪れるはずだ。
清水は昨シーズンについて「プロの厳しさを知りました」と振り返った。
「1球の重さをすごく感じた1年でした。自分はいい球だと思っても外野まで運ばれたり、フェンスを越えていった。そのことは本当に悔しかったのですが、すごく勉強になりました。僕は”いいボール”でアウトを取りたがる傾向が強いのですが、もっと視野を広くして、どんなボールでもいいからアウトを取ることを知ればよかった」
プロ2年目を迎えた”ドラ1右腕”は「自分のなかで手応えはあります」と、はっきりと口にした。実際、昨年の夏頃から低めの真っすぐで見送りが取れるようになり、それは打者のイメージよりもボールが伸びている証拠である。
「低めへのコントロールとボールの強さをすごく言われ、ファームで相当鍛えました。ボールが指にかかった時の精度はよくなったと感じていますし、実際、打たれた時に『あっ!』と思う打球も少なくなりました。低めにボールが決まった時は気持ちいいので、今年はその確率を高めていきたいです」
キャンプでは210球を投げ込んだ日もあり、最終日には77球を投げてブルペンのトリを飾るなど、充実の1カ月を過ごした。今シーズンについては、このように話す。
「もちろん、先発で投げることを目指していますが、どんな場所で投げることになっても、粘って(一軍に)生き残りたいです。プロで0勝ということをプラスに考えるようにしています。新しいスタートという気持ちで、石川(雅規)さんや小川(泰弘)さんたちを脅かすことができればと思っています。
去年、僕にとって大きかったのは、館山(昌平)さんの引退試合を経験できたことでした。しかも、僕はグラウンドで最後にハイタッチすることができました。館山さんの気持ちを引き継いで、スワローズの先発陣の一角として頑張りたいです」
オープン戦では2試合にリリーフとして登板し、2イニングを投げて6奪三振、無失点のピッチングを披露。”ドラ1投手”の実力を発揮しはじめている。
浦添キャンプのブルペンでは、連日、新任の斎藤隆ピッチングコーチのかけ声が響きわたっていた。
「ナイスボール! でも、それ以上は求めなくていいよ。ボトムを上げていこう」
最高のボールを投げ込み、充実感あふれた表情の投手たちに、そう声をかける光景を何度も見た。斎藤コーチは「みんなすごくいいボールを持っているんですよ」と話し、「ボトムを上げていく」の意味についても説明してくれた。
「その投手のいいボールを10とした時、4とか5のボールもあるんです。10ばかりを求めると、どうしても力みが発生してしまいます。そうなるとタイミングが合わなかったりして、4とか5のボールになってしまう。だから、常に8や9を投げられるようにしようと。そのために、体の感覚をしっかり覚え、再現性を自分のものにしようということです。新人選手はプロの実戦で投げていないのでまた別なのですが、そういったことが必要なピッチャーに何を伝えればいいのか。それを日々考えています」
今回取材をした5人の大卒投手をはじめ、今シーズンのヤクルト投手陣は必ずや結果を出してくれるはずだ。