上位対決が続き、4試合ほど勝利から遠ざかっていたアントワープは、2月29日のオーステンデ戦でキックオフからラッシュを仕…
上位対決が続き、4試合ほど勝利から遠ざかっていたアントワープは、2月29日のオーステンデ戦でキックオフからラッシュを仕掛け、立ち上がり5分で2点をリードした。

足首のケガで長期離脱していた三好康児
後半に入ってからペースは落ちてしまったが、ラースロー・ベレニ監督は75分にベテランMFスティーヴン・ドフール、78分に三好康児をピッチに送り込むことで、チームの活性化に成功。88分には5人がゴール前まで走り込む迫力のカウンターを炸裂して3点目を加え、オーステンデを突き放した。試合は3−1でアントワープが勝った。
このカウンターで惜しいシュートを放ったのが三好だった。FWイヴォ・ロドリゲスからのラストパスを引き出した三好は、GKウィリアム・ドゥトワの頭上を越すチップシュートを放ったが右ポストを直撃。このリバウンドをFWディウメルシ・ムボカニが押し込み、ハットトリックを完成させた。
よほどシュートに手応えがあったのだろう、ムボカニがゴールを決めた瞬間、三好は頭を抱えこんだ。そんな三好にチームメイトは笑顔で駆け寄り、「半分、お前のゴールだぞ」と言わんばかりにビッグプレーを労った。
「ほぼ狙いどおり(のシュート)で、あとはゴールラインを割ってくれれば……というくらいでした。でも外すよりは、あれがゴールにつながったのでよかったです」
トップ下のポジションに入った三好は再三、右に流れてボールを持ち、カットインを繰り返し、チームにフレッシュネスをもたらした。
「ベルギーリーグの特徴は、最後の時間帯になるとオープンな展開になるので、ああいったところで自分が入ることによって、攻撃の勢いをつけることができると思っています。今日はそれを狙って試合に入りました。欲を言ったら、やっぱり得点を獲りたかったです。ただ、チームとして3点目を獲れたので、自分のイメージはよかったかなと思います」
ベルギーのサッカークラブは登録順に番号が割り振られており、1880年創設のアントワープの番号は1。クラブのロゴにも「1」の文字が燦然と輝いている。人々はアントワープのことを、リスペクトを込めて『ザ・グレート・オールド』と呼ぶ。
彼らは2003−04シーズンに1部リーグから降格すると、13シーズンの長きにわたって2部リーグでのプレーを余儀なくされた。それでも、スタジアムは大観衆で湧き上がっていた。『眠れる巨人』。それが、アントワープのもうひとつのニックネームだった。
2017−18シーズンに1部リーグに復帰してから、アントワープのホームスタジアム「ボサイルスタディオン」はますます熱狂度を増している。キックオフから全力でインテンシティの高いサッカーを挑むのは、今も昔も変わらない(それゆえ、中だるみの時間帯が生まれてしまうのは課題)。
しかし、選手の質の高さは、昔とは雲泥の差だ。ムボカニ、ディディエル・ランケル・ゼ、ファリス・ハルーン、リオル・ラファエロフなど、個性派が集まっている。ベテラン選手が多い気もするが、第28節を終えても彼らのコンディションはかなりよく、オーステンデ戦でもセカンドボールをよく拾っていた。
ベルギーサッカー界には『G5(アンデルレヒト、スタンダール・リエージュ、クラブ・ブルージュ、ゲンク、ゲント)』というヒエラルキーがある。だが、伝統と人気に加えて、資金力と実力もついてきたアントワープも、6強のひとつとして定着しそうな風格が生まれ始めている。
昨年夏、アントワープは元ベルギー代表のドフールとケヴィン・ミララス、オランダ代表経験を持つヴェスレイ・フートなど大型補強を行なった。それと比べると、三好のアントワープ加入を報じる地元紙の扱いは、非常に小さなものだった。
だが、9月15日のアンデルレヒト戦、残り7分でピッチに立った三好がデビューマッチをゴールで飾ると、ベルギーカップ1回戦のロケレン戦では初先発を果たし、2ゴールでチームの勝利に貢献。その後はリーグ戦でも先発出場し、週間ベストイレブンにも選ばれるなど、チームの中心選手への道が拓き始めた。
ところが11月下旬、三好は足首を痛めてしまった。当初は「2、3週間で復帰するだろう」と報じられていたが、実際には復帰するまで2カ月もかかってしまった。
「シーズンの入りはよかったです。そこからすぐに使ってもらえるようになったわけではないですけど、日々の練習で結果を見せて(試合の)スタートから出られるようになったので、本当にあのケガは痛かった。
足首は今、徐々にフィットしてきている。ただ、そこが海外の難しいところで、自分の感覚とトレーナーの診断が全部合うわけじゃない。日本語で会話しているわけじゃないので、詳細を伝えるのも難しいし、聞き取るのも難しい。
ただそれは、海外でやるうえでの宿命みたいなもの。ケガは自己責任なので、しょうがない。過去は変えられないですし、ここからしっかりと示せればいいかなと思っています」
オーステンデ戦後、ベレニ監督は三好について、「来た当初、私は康児に懐疑的だった」と率直に語った。
「アンデルレヒト戦ですばらしいゴールを決めて、それからどんどんよくなっていった。だけど、練習中に康児は負傷してしまい、長く戦線から離れてしまった。その間にメンバーの入れ替えもあって、チームは変わってしまった。ただ、今の康児は、前の康児と違う。彼はもっとよくなる」
ベルギーリーグ第28節を終え、三好は13試合出場して1ゴールという成績だ。ここまでを振り返り、彼はこう語った。
「全然ですね。まったく思いどおりに(いっていない)。個人的には、やっぱりケガをしたというのは(痛かった)。少しずつスタートから使ってもらえるようになってからのケガだったので、『またゼロからだな』という気持ちを持ちながら、今はやっています」
独自のプレーオフ制を敷くベルギーリーグは、これからが本番だとも言える。三好のここからの盛り返しに期待したい。