本田圭佑がブラジルに来てから、もう少しで1カ月が経とうとしている。だが、まだ誰も本田の本気のプレーを見ていない。

 ボタフォゴは多くの問題を抱えたチームだ。現在はリオデジャネイロの4大チーム(ほかはフラメンゴ、フルミネンセ、バスコ・ダ・ガマ)の中で圧倒的に弱い。しかし、ピッチの外で一番ニュースになっているのがボタフォゴだ。なかでも最大の謎とされているのが「本田はいつ公式戦デビューを果たすのか」だ。



ボタフォゴでの公式戦デビューに向けて練習を続けているという本田圭佑 photo by AP/AFLO

 本田のコンディションとは関係がない。デビューできない理由は、彼がまだボタフォゴと正式には契約をかわしていないからだ。

 何か違法なことがあったわけでも、大きなトラブルがあったわけでもない。ボタフォゴはブラジル有数の伝統あるビッグクラブであり、幹部たちはチームをよくしようと一生懸命になっている。その一方で、大きな財政難を抱えているのも事実だ。このことが本田との契約問題にも関係している。

 本田がブラジルに着いて数日後、ボタフォゴはカンピオナート・カリオカ(リオ州選手権)の前半戦で敗退した。

 これに対してサポーターは、クラブの幹部と当時のアルベルト・ヴァレンティン監督に激しく抗議。その結果、ボタフォゴはなかなか結果を出せないヴァレンティンを解任することになった。

 結局、後任にはパウロ・アルトゥオリが就いたが、ボタフォゴは解任したヴァレンティンに違約金を払う必要があった。ただ、チームにその金はない。ボタフォゴはさまざまなところから金をかき集めなければならなかった。

 一時期、ボタフォゴがヤヤ・トゥーレ(青島黄海)を獲得するという噂が流れていたが、ボタフォゴ番の記者は一様にこう話していた。「ボタフォゴはすでに10カ月赤字決算が続いている。ビッグネームを獲得する資金はないし、トレードするスター選手もいない。どうやってヤヤ・トゥーレを呼ぶつもりなんだ?」と。

 実際、ボタフォゴのスタッフは1月から、選手に至っては去年の12月から、給料もボーナスも受け取っていない。チームはそれらすべてを3月中に支払うと約束しているが、怪しい限りだ。チームには現在35人の選手が在籍しているが、それを27人に減らす方針を決めたという。

 2月20日、ボタフォゴはコパ・ド・ブラジル(カップ戦)でナウチコに勝利し、次のラウンドに駒を進め、それによる賞金150万レアル(約3600万円)を受け取れることになった。ようやくひと息つけると思ったのも束の間、同じ日に、かつてボタフォゴでGKをしていた選手に報酬と肖像権使用料を支払わなかったという理由で、リオの裁判所から220万レアル(約5300万円)を差し押さえられた。最近の調査では、ボタフォゴはブラジル全国選手権1部20チームのうち、4番目に借金が多いことが判明している。

 一方、本田である。彼がボタフォゴでプレーするには、いまだに以下のものが足りない。

・ブラジル政府の発行する労働ビザ
・チームと選手、弁護士がサインした雇用契約書
・リオデジャネイロサッカー協会への選手登録
・ブラジルサッカー連盟への選手登録

 労働ビザがなければ、ボタフォゴは本田を雇用できず、ボタフォゴとの契約がなければ、リオデジャネイロサッカー協会には選手登録ができず、リオ協会の登録がなければ、ブラジル連盟に登録できない。

 こうした煩雑な事務手続きは、本来ならそれらを扱う専門の会社に任せるべきだった。だが財政難のボタフォゴはそれを怠り、すべて自分たちでやろうとした。その結果、1カ月が経とうとしても本田の書類がそろわないのだ。

 運悪く、リオはカーニバルのシーズンに突入した。ブラジルは特別な国だ。カーニバルの時期は何も機能しない。役所も裁判所もその例にもれない。本田のビザ発行が遅々として進まないのはそのせいもある。

 本田自身は非常に真面目に練習に取り組んでいる。本田は少なくとも50の団体からリオのカーニバルに招待されていた。だが、カーニバルは通常、朝の4時まで続く。本田は「早く寝なければならない」という理由で、それらをすべて断ったという。また、自信のSNSでポルトガル語の教師を募集したことも、好意的に受け取られている(本来はチームが手配すべきものだが……)。

 今後の手続きが順調に進めば、今のところ本田の公式戦デビューは早くて3月8日と見られている。カンピオナート・カリオカのグループラウンド2戦目となるフラメンゴ戦だ。ビッグマッチではあるが、アウェーだ。ボタフォゴは本田をホームのサポーターの前でデビューさせたがっているようだ。そうなると本田のデビューは3月15日のバングー戦ということになるかもしれない。