FC岐阜前社長 恩田聖敬 特別寄稿2020

 サッカーJリーグ・FC岐阜の運営会社である株式会社岐阜フットボールクラブの前社長で、現在日本ALS協会岐阜県支部の支部長を務める恩田聖敬です。6年前ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症して、病状の進行により職務遂行困難となり、FC岐阜の社長を辞任しました。



FC岐阜サポーターへの感謝の思いを語った恩田聖敬

 ALSと闘いながらの社長在任中、私の心の支えとなったのはサポーターの横断幕とチャント(応援歌)でした。「ALSでも共に闘おう!」。私はサポーターの力によって限界まで職務遂行の気力を持ち続けることが出来ました。

 それに、FC岐阜サポーターにとどまらず、相手チームのサポーターからも数多くの横断幕や寄せ書きを頂戴しました。選手でもないのにこれだけの横断幕を作ってもらったのは、Jリーグ史上おそらく私だけだと思います。幸せ者だと心から思います。

 社長退任後はひとりのサポーターとしてスタジアムに足を運び、サポーターとの交流は続いていました。そんな私に、日本ALS協会岐阜県支部の支部長就任の打診が来ました。当時の岐阜県支部は(今もですが)、先代の支部長さんの縁故者が完全手弁当で活動しており、マンパワー的限界もあり他の都道府県支部と比べて、活動が活発とは言えない状況でした。

 引き受ける以上は活動を活性化したいと思い、私は他の都道府県支部の活動状況を調べました。すると、患者やご家族の交流会を積極的に行なっていることがわかりました。そして、交流会の記念撮影に『ALS協会○○支部』と書いてある横断幕を掲げている支部がたくさんありました。

 それを見た時、私はあることを閃きました。横断幕作りと言えばサポーターがプロである、FC岐阜サポーターにALS協会岐阜県支部の横断幕作りを頼めれば、サポーターと私以外のALS患者との絆も生まれるのではないかと。

 私は早速SNSで次のように呼びかけました。
 【FC岐阜サポーターへ横断幕作成依頼‼️】

 現在、私は日本ALS協会岐阜県支部長を務めています。他県の支部は患者が集まる際、横断幕と記念撮影していますが、岐阜県支部にはありません。

 どなたか1m×6m程度の「日本ALS協会岐阜県支部」と書いた横断幕を作ってください! 材料費は負担します。

 我こそという方はご連絡ください。

 この呼びかけに何人ものサポーターが手を挙げてくださいましたが、結局1番乗りでご連絡頂いた方にお願いすることにしました。

 真っ先に手を挙げてくれたKさんとは過去に浅からぬ関係がありました。頂いたメールを抜粋してご紹介します。

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私は恩田社長と同じ昭和53年生まれ
Kと申します
FC岐阜のサポーターを2014年(私が社長就任の年)から
させていただいております

覚えていらっしゃるでしょうか。。。

2年前になります
2017年シーズンの最終戦前に
恩田社長あてにお手紙を書かせていただいた者です

娘は不登校気味な状態から
FC岐阜チアリーダーGREEN ANGELSで
活動させていただき、自信を取り戻し
今は中学生になり
部活動の剣道を頑張っています

発達障がいの息子は
FC岐阜の試合を見るようになり
自分もサッカーをしたいと言い始め
今年(昨年)の夏、中学3年生の引退までサッカーを続け
進学先の学校でもサッカーを続ける予定です

また、息子は、今は水泳も頑張っていて
台風で出場こそできませんでしたが(※)
今年(昨年)のいきいき茨城ゆめ大会の競泳で岐阜県代表に選ばれました
※台風の影響で大会自体が中止

2017年最終戦の日に
恩田社長の出版された本を購入させていただき
その時にご挨拶もさせていただきました

その後、スタジアムには行ってはいるのですが
恩田社長にご挨拶も出来ず
無礼をお許しください

私は子供たちに「夢」を与えてくださり
子供たちに色々な経験をさせていただいている
FC岐阜が大好きで
FC岐阜のために何かできないか?と思い
2018年シーズンから選手の個人横断幕を自分自ら作成し
掲げたり、サポーター仲間が作る横断幕のお手伝いを
させていただいております

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 手紙を頂いたことはもちろん覚えていました。FC岐阜に関わった子供たちが前向きに夢を持って生きていく、これこそがFC岐阜の存在意義だとお手紙を拝読して熱く感じた記憶も、ありありと蘇って来ました。

 是非Kさんにお願いしたいとお伝えしました。デザインの希望を聞かれたので私は、

・日本ALS協会岐阜県支部の文字が入っている
・さりげなくFC岐阜とのコラボが見える

 という極めて抽象的な注文をしました。

 時が過ぎ、Kさんからデザインが出来上がったとご連絡をいただきました。一目見て私は感動しました。ALSのAに岐阜県の地図を入れ、サポーターの合言葉『WE ARE GIFU』が入っています。私の想像を超えた文句なしのデザインでした。

 またデザインを手掛けたKさんのサポーター仲間であるKさんは、デザインの版権等の権利を無償で岐阜県支部に譲ると仰ってくれました。

 そして、待ちに待った受け取りの日がやって来ました! 奇しくもその日は、FC岐阜のアカデミー(中学生・高校生)選手及びスタッフ向けに私が講演する日でした。FC岐阜のエンブレムの重みを語り尽くした後に、横断幕との対面を果たしました。

 自分で頼んでおきながら、その大きさと完成度に圧倒されました。本当に素晴らしいものを作って頂きました。そして私の話を聞いたアカデミーの選手たちが横断幕を持ってくれたことは、色々な意味で感無量でした。

 今年6月に予定されている岐阜県支部の患者交流会でひとりでも多くの患者を集めて、「これはFC岐阜のサポーターたちが作ってくれたんだ!」と伝えて、誇らしく掲げたいと思います。

 FC岐阜の社長を離れて4年の歳月が経過しましたが、FC岐阜のサポーターは変わらず私を『仲間』だと思ってくれています。本当に有り難いことです。

 スタジアムにはさまざまな障害をお持ちの方が、試合を楽しみにして苦労しながらも足を運んでいます。FC岐阜に関わらず、サッカーに関わらず、スポーツを通じて障害者と健常者の絆が築かれることを切に願います。まさに東京オリンピック・パラリンピックはそんな機会であって欲しいと思います。

東京2020岐阜県聖火ランナー
日本ALS協会岐阜県支部支部長
FC岐阜サポーター
恩田聖敬