42試合を戦う長丁場のスペイン2部リーグ。第29節を消化し(チームによっては28試合)、最終コーナーに入ろうとしている。 サラゴサ戦に先発、退場となった60分までプレーした柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ) トップを走ってきたア…

 42試合を戦う長丁場のスペイン2部リーグ。第29節を消化し(チームによっては28試合)、最終コーナーに入ろうとしている。



サラゴサ戦に先発、退場となった60分までプレーした柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)

 トップを走ってきたアルメリアが急落。第25節から3敗2分けで3位に下がり、自動昇格圏から外れてしまった。元レアル・マドリードの人気選手だったホセ・マリア・グティエレス監督(愛称はグティだが、本人が監督として敬意ある呼び方をリクエストした)が旋風を起こしていたが、戦い方が研究されたか。グティエレス監督は今や解任の危機にある。

 2部を戦い抜くのはそれほどまでに難しい。ちょっとしたきっかけで、チームの出来が急転する。

「地獄」

 そう形容される理由は、拮抗した実力で息が抜けず、長く厳しい戦いを乗り越える必要があるからだ。3人の日本人選手は、地獄を戦い抜けるのか?

 現在2位のサラゴサのMF香川真司だが、”主役級”だった序盤の存在感はない。たび重なる筋肉系の故障で、徐々にトーンダウン。直近の3試合は出場がない状況だ。

「私はボールプレーヤーが好きだし、彼らをプレーさせることを優先する」

 ビクトール・フェルナンデス監督は常々そう言っているように、香川への期待は大きく、コンディション次第でピッチに送り出してきた。元アルゼンチン代表MFパブロ・アイマールの才能を花開かせ、攻撃サッカーを信奉するだけに、香川のひらめきに敬意を払っているのだろう。ただ、ケガの多さには頭を抱えている様子だ。

 香川は、スペイン国王杯のレアル・マドリード戦では先発でプレー。90分間出場し、物おじせずにゴール前でチャンスを作り出している。ボックス内で再三にわたってシュートを狙うなど、ドルトムント時代の片鱗も見せた。2部で得点王を争うコロンビア人FWルイス・スアレスには決定機をお膳立てしている。しかし、得点は入らず、0-4と大敗に終わった。

 これが香川の現状を象徴していると言えるかもしれない。決して悪くはないのだが、プレーが勝利に結びつかない。救いはチームが勝ち点を積み上げ、自動昇格圏にいる点だ。首位カディスと勝ち点1差の2位。残り13試合、香川はコンディションを維持し、昇格のキーマンとなれるか。

 一方、岡崎慎司が所属するウエスカは現在4位で、自動昇格を虎視眈々と狙っている。昨シーズンまで1部で戦っていただけに、クラブ規模は小さいが、強者の名残がある。負けは多いが、勝ちも多く、ポイントを稼げている。

 岡崎自身はここまで24試合出場5得点。開幕前にマラガでトラブルに巻き込まれ、途中入団したことを考えれば、及第点の出来だろう。ただ、スペインメディアの要求は高い。

「年明け、ビザの関係で岡崎は1週間合流が遅れた。(1月5日のエルチェ戦には間に合わず)オフが長くなって、フィットするのに時間がかかった。結果的にラファ・ミルにポジションを奪われることになった」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、岡崎が2020年に入ってから無得点だったことを指摘している。

 しかし、岡崎はすさまじい重圧を受けながら、プレミアリーグ優勝のFWを務めた選手である。ミルが累積警告で出場停止になった第28節、上位争いのアルメリア戦ではニアにクロスを呼び込み、ヘディングで見事にゴールを決めた。マークの外し方、スペースの作り方、ヘディングの当て方など、どれも一級品だった。直近の第29節ラージョ・バジェカーノ戦でも、VARでゴールこそ取り消されたが、点取り屋の才気を見せつけている。

 過去、2部での日本人最多得点は、福田健二が2006-07シーズン、ヌマンシア時代に記録した10得点。岡崎はこれを越えられるか。

 柴崎岳のデポルティーボ・ラ・コルーニャは、フェルナンド・バスケス監督が就任以来、破竹の6連勝(チームとしては7連勝)を飾り、最下位から急浮上した。直近の1試合は1分け1敗で足踏みしているが、現在17位。降格圏から脱し、6位(昇格プレーオフ圏内)とは勝ち点6差だ。

 柴崎は、バスケス監督就任の恩恵を最も受けた選手のひとりと言えるだろう。7試合連続で先発出場している。守備では献身的な動きを見せ、攻撃ではとくに新加入のサビン・メリーノと息の合ったプレーを見せる。3-4-2-1のボランチとして、攻守の両輪を担う存在になった。

「柴崎はバスケス監督によって、”無”から”すべて”の存在に」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』はその変貌を報じている。

 バスケスは戦う環境を整え、柴崎に全幅の信頼を与えた。それは前任の2人の監督からは与えられなかったものだ。

「(柴崎は)フィジカル的に堂々とし、ダイナミズムも持っている。フットボールのビジョンに優れ、あらゆるプレースタイルに適応できる。守備的ボランチ? 完璧だ。右インサイドハーフ、左インサイドハーフ? 完璧だ。監督にとっては、めちゃくちゃ”おいしい選手”だ」

 バスケスの柴崎評は賛辞を極める。

 柴崎は直近のサラゴサ戦では2枚目のイエローカードを受け、退場処分になった。中盤で相手に抜け出されて足を出したのだが、すでに1枚目をもらっていただけに軽率なプレーだった。守備の老練さは今後も課題だろう(試合は3-1でサラゴサが勝利)。

 いずれにせよ、残り13試合で3人の評価は大きく様変わりする。少しも気は抜けない。最後まで戦った者のみが栄誉を得られるのだ。