2月14日、マンチェスター・シティに激震が走った。ファイナンシャル・フェアプレー(※)で重大な違反があったとして、マンチェスター・CがUEFA主催大会での2年間の出場禁止処分を受けたのだ。

※ファイナンシャル・フェアプレー=UEFAが2011年にクラブ財政健全化のために定めた規則で、支出が収入を上回ってはいけないとする。支出は移籍金や選手報酬など、収入はスポンサー収入やテレビ放映権、大会賞金、スタジアム入場料などを指す。



グアルディオラ監督はマンチェスター・Cから離れるのか

 マンチェスター・Cはこれを不服とし、スポーツ仲裁裁判所に異議を申し立てる意向を示した。

 しかし、仮に訴えが認められなかった場合、来シーズン限りで契約満了となるジョゼップ・グアルディオラ監督の退任や、高額な報酬を受け取っているラヒーム・スターリングやケビン・デ・ブライネといった主力選手の退団など、英メディアではネガティブな可能性が伝えられている。

 2シーズンにわたりCLに出場できなければ、マンチェスター・Cは3000万ポンド(約43億円)の収益を失うとも言われる。主力選手の流出は避けられそうになく、現体制をそのまま維持するのは極めて難しそうだ。

 さらに、影響はプレミアリーグ全体にも及ぶ。

 スポーツ仲裁裁判所が「違反があった」と判断すれば、各クラブに正しい財務情報の提出を義務付けているプレミアリーグとしても動かざるをえない。マンチェスター・Cへの制裁措置として「過去のリーグ優勝剥奪」「勝ち点剥奪」「チームの4部降格」の可能性も指摘されている。

 また、来季からCL出場停止が決まれば、今季リーグ5位のチームが繰り上げで来季CLに出場することになる。英BBC放送は「プレミアリーグもなりゆきを注視している」と報じた。

 そもそも、マンチェスター・Cの問題はどこにあったのか。

 UEFAがマンチェスター・Cに違反があったと見なしているのは2012年〜2016年。この間、マンチェスター・Cは実際よりも多くの収入があったと報告し、財務諸表を改ざんした疑惑が持たれている。

 さらに、この疑惑に関してマンチェスター・Cは、ファイナンシャル・フェアプレーを管理するクラブ財務管理機関の調査に全面的に協力しなかった。この2点が問題視されている。

 財務諸表の改ざんでとくに注目したいのは、スポンサー収益を水増しして過剰に計上した疑惑があること。

 ドイツメディア『デア・シュピーゲル』によれば、エティハド航空からの年間6750万ポンド(約97億円)のスポンサーフィーは、800万ポンド(約12億円)をエティハド航空が支払い、残りの5950万ポンド(約85億円)をADUG(アブダビ・ ユナイテッド・グループ)、すなわちマンチェスター・Cを買収したUAEの投資グループが補填したとされる。

 しかし、マンチェスター・Cの最高経営責任者(CEO)を務めるフェラン・ソリアーノは、「UEFAの主張は正しくない」と断言。「そもそも、ハッキングによって不当に盗み取られた情報を下に調査された」と続け、こう語気を強めた。

「オーナーから適切でない資金は、クラブに支払われていない。我われは潔白を証明できる。正義のために戦う」

 サッカーファンの最大の関心は、マンチェスター・Cの今後だろう。英衛星放送スカイスポーツのレポーター、ケイヴェ・ソレコル氏は同局の情報番組で次のように話した。

「マンチェスター・Cには、今回の処分を撤回させるチャンスがあると思う。スポーツ仲裁裁判所に意義を申し立てることになるが、マンチェスター・C側としては『第一歩として、スポーツ仲裁裁判所で判断を仰ぐ』との見解を示している。つまり、もし異議申し立てが認められなかった場合、上級裁判所であるスイスの連邦最高裁に控訴することを暗に示唆している、ということだ」

 ソレコル氏の話には、少しばかり説明が必要だろう。スイス・ローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所は、スイスの国内法に準拠する。スポーツ仲裁裁判所の判断が不服な場合、スイスの最高裁に控訴することになる。同氏は続ける。

「心に留めておきたいのは、マンチェスター・Cのオーナー陣は、UEFAよりも資金力で勝っていること。つまり、アブダビ王族はUEFAよりも優れた弁護士を多く揃えることが可能だ。こうした理由から、今回のUEFAの処分を撤回させるチャンスは十分にあると思う。UEFAは2年の出場停止処分を下したが、たとえば1年に処分を軽減するのは十分に考えられるシナリオだ」

 マンチェスター・Cのチェアマンを務めるカルドゥーン・アル・ムバラク氏は、3000万ポンド(約43億円)を投下して世界有数の凄腕弁護士50名をかき集め、今後10年にわたりUEFAを訴える意向を示しているとも言われる。ソレコル氏が「資金力の勝負」と指摘している理由だ。

 では、スポーツ仲裁裁判所で処分が1年に軽減された場合はどうなるか。マンチェスター・Cとしては、ダメージを最小限に抑えられるだろう。

 たとえば、スポーツ仲裁裁判所の決定が来季開始以降までずれ込めば、来シーズンもCLに出場できる。出場停止が1年であれば、選手の流出も最小限に抑えられるかもしれない。

 また、出場停止処分を受ける前から、契約満了となる来季限りでの退任説が囁かれているグアルディオラ監督も、ひょっとしたら契約更新に考えが傾くこともありえる。あるいはそれも不服として、マンチェスター・Cはスイスの最高裁に控訴するか。

 しかし、である。ソレコル氏の話を聞いていて、思わず首をひねった。

 そもそもUEFAが調査に動いた発端は、マンチェスター・Cのオーナーを務めるアブダビ王族による不正な金の流入を問題視したことにある。ただ、最終的に決着をつける手段が「金」であるなら、それこそ本末転倒だろう。こうなると、ファイナンシャル・フェアプレーの存在自体に疑問符がつきかねない。

 ソレコル氏の予想どおりに事態が転がっていくのなら、ファイナンシャル・フェアプレー制度自体の見直しも必要ではないだろうか。