<日本人対決>

 そんな表現はすでに古めかしい。今の欧州サッカー界ではとくに珍しいことでもないだろう。

 そうは言っても、日本代表の新旧エース同士の対戦は、やはり関心を引く。ベスト16進出をかけたスペイン国王杯3回戦。香川真司(30歳)のサラゴサと、久保建英(18歳)のマジョルカの戦いは、シーズンを折り返したふたりの現在地を知るための基準になるかもしれない。



スペインで初めて対戦した香川真司(サラゴサ)と久保建英(マジョルカ)

 結果から言えば、2部のサラゴサが1部のマジョルカを3-1で撃破している。内容でも明らかに優勢だった。

「ベスト16へ、サラゴサのフェスティバル」

 スペイン大手スポーツ紙『as』は、そう見出しで報じている。

 サラゴサのビクトル・フェルナンデス監督は、かつてパブロ・アイマールを中心にした攻撃サッカーを作り出した。スカウティングによって優れたボールプレーヤーを集め、バックラインから論理的に組み立て、プレスを回避しながら相手のラインをきれいに越える。能動的な戦いの仕組みを、チームに植え付ける手腕の持ち主だ。

 マジョルカ戦も、サラゴサはボールを握る力、運ぶ力で勝っていた。先制点は顕著だった。自陣でプレスに遭いながら、小気味よいパスで次々に外し、左サイドまで展開。敵の守備陣が後手を踏んだところ、バックラインの前で香川がボールを受け、得点をアシストした。その後も、鮮やかにカウンターを決め、一本の縦パスでも得点を追加し、完勝だった。

 香川は昔、アイマールがそうだったように、フェルナンデス監督が好むアタッカーと言える。2トップの一角で、相手のMFとDFの間でボールを受けながら、チャンスを作り出していた。前半にはFKをバーに直撃させ、キックの質の高さも見せている。

 発熱や慢性的なケガもあり、香川には序盤戦で2得点した時の勢いはない。クラブはコンディションを心配し、移籍話も浮上した。だが、勝負どころでの技術の高さは白眉。一瞬の動きで相手を外す動きは健在で、タイミングをずらせて通すパスも際立っており、その存在は欠かせない。サラゴサはMFハビ・ロス、FWルイス・スアレスなどスキルが高い選手を揃えており、相乗効果も期待できる。

 今シーズン、サラゴサの使命は1部昇格にある。第23節終了現在で4位(1、2位が自動昇格、3~6位が昇格プレーオフ)。マジョルカを一蹴したように、攻撃力は”看板”となっている。その切り札になるのが香川だ。その出来は、チームの浮沈のカギを握るだろう。

 一方、マジョルカは国王杯での敗退が決まった。

 1部残留がなにより優先される現在、サラゴサ戦は1.5軍というよりは2軍に近い布陣だった。選手のクオリティは2部、もしくは2部B(実質3部)に近いか。実際、2年前まで2部Bだったのだから、この結果に驚きはない。

 マジョルカのプレーは凡庸を極めた。プレッシングもかけられず、マーキングも緩く、目に見えてボール技術の低い選手もいた。とくにバックラインのちぐはぐさは深刻だった。

 そんななかで、2トップの一角で先発した久保は、能力の高さを示していた。右サイドを切り裂いてクロスを折り返し、相手を引きつけて完璧な崩しのパスを出し、厳しいチャージを潜り抜け、攻撃の起点となった。唯一の得点シーンも、2人を相手にボールを奪われないキープ力を見せ、パスを出したところから生まれていた。

 ふがいない戦いだったマジョルカにおいて、久保は悪いプレーはしていない。むしろ、苦しい条件でも技術を出せるタフさを見せた。反則同然のマークにも屈していなかった。マジョルカでプレーして半年、経験を重ねて成長を遂げた姿を見せていた。

 チームの目標は1部残留だが、戦力的に厳しい状況だけに、久保は最後までチームをけん引する姿を見せられるか--。久保にとって次の挑戦は、1部の攻撃的チームでの試合経験になる公算が高い。たとえば、新天地の候補のひとつに挙がるレアル・ソシエダは、ボールをつなげるオートマチズムがあり、ミケル・オヤルサバルなど、相応の選手を擁している。

 もちろん、レアル・マドリードに戻るという選択肢がないわけではない。しかし、今はプレー経験を重ねることを優先すべきかもしれない。

 レアル・マドリードに残留した19歳のブラジル代表、ロドリゴ・ゴエスは、たしかにトップチームでポジションをつかみつつある。しかし、それはフィジカル的な能力の高さをジネディーヌ・ジダンに好まれただけで、久保は自分の道を行くべきだろう。

<日本人対決>

 なんとも陳腐な表現だが、香川は歴戦の選手としての意地を見せた。しかし久保も、その可能性を披露したと言える。

 新旧エースの対決に本当の意味で決着がつくのは、まだだいぶ先の話になるだろう。