フィギュアスケート日本男子に光り輝く新星がふたり、出現した。鍵山優真と佐藤駿だ。ともに高校1年生で、今季はお互いにライバルとして意識しながら好勝負を繰り広げている。



全日本選手権で3位となった16歳の鍵山優真

 ジュニアグランプリ(GP)シリーズでは、鍵山が2大会とも自己ベストを更新して優勝と2位。佐藤も得点源のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を武器に優勝と3位。それぞれ好成績を出してジュニアGPファイナルに初進出を果たした。

 今季の大きな舞台での両者の対決を振り返ってみよう。

 11月の全日本ジュニア選手権では鍵山に軍配が上がった。ショートプログラム(SP)で首位に立つと、フリーでは4回転トーループの連続ジャンプと単独ジャンプをしっかりと決め、トリプルアクセルからの3連続ジャンプも成功させるなど、ほぼノーミス演技を見せ、国際スケート連盟(ISU)非公認ながらジュニア世界最高得点(当時)を上回る合計251.01点を叩き出して初優勝した。

 これに対して佐藤は、SP3位からのフリーで、果敢に4回転ルッツに挑んだが、空中で回転がばらけるミスを出し、ほかのジャンプの着氷も乱れて得点が伸びず、総合2位で終えた。鍵山にとっては自信をつけた試合となった一方で、佐藤は悔しさを募らせた表情が印象的だった。

 続いて迎えたのが12月のジュニアGPファイナルだ。

 悔しさを糧にして練習を積んできたという佐藤は、ここで気を吐く演技を披露した。SPではすべてのジャンプを決めて3位発進。フリーでは冒頭の4回転ルッツを初めて試合で成功させると、2本の4回転トーループと2本のトリプルアクセルを次々と決め、ジュニア歴代1位となる177.86点をマーク。合計でもジュニア歴代最高得点となる255.11点で初優勝を成し遂げ、日本人4人目のジュニアGPファイナル王者となった。

 GPファイナルには憧れの羽生も出場しており、同じリンクに立てた佐藤は「羽生選手の演技に学ぶことはたくさんあった。全日本ジュニアの悔しさがあったので練習では4回転の確率を上げたり、4回転ルッツを跳べるようにしたりしてきた。ここまで得点が出るとは正直思わなかったので驚いています」と喜びを語った。

 全日本ジュニア王者として優勝を目指して戦った鍵山は、気負いが空回りしたのか、SPでトリプルアクセルを失敗して6位と出遅れた。フリーでは冒頭のトーループの4回転+2回転連続ジャンプを成功させたが、4回転トーループの単独ジャンプで転倒。それでも、そのほかのジャンプを決めて演技をまとめて3位に浮上し、合計227.09点の総合4位と、表彰台まであと一歩だった。「これまでで一番悔しい試合になりました。全日本選手権ではトップで戦える自信がついているので、表彰台を狙っていけるように、難易度の高い構成で試合に挑めるように練習していく」と、挽回を期した。
 
 その全日本選手権。鍵山はSP『ピアノ協奏曲「宿命」第一楽章』でいきなりつまずく。SPで初めて4回転トーループを成功させるが、冒頭のトリプルアクセルが不発に終わって0点となって77.41点の7位と出遅れた。しかし、自分らしい踊りを発揮できるフリー『タッカー』では、トーループの4回転+2回転連続ジャンプと4回転トーループを鮮やかに決めたほか、今季苦手意識を持っていたトリプルアクセルを2本とも2点以上のGOE加点がつく出来ばえで成功させた。

 得点源のジャンプを次々と決めて、ほぼ完璧な演技を見せると、180.58点の高得点をマークしてフリー2位に。ISU非公認ながら、ライバル佐藤がジュニアGPファイナルで出したジュニア世界最高得点を上回る合計257.99点で、総合3位となった。全日本選手権で高校1年生が表彰台に立つのは、1996年1月の第64回大会で初優勝した本田武史以来の快挙。ジュニア勢としては、2014年の第83回大会で2位になった宇野昌磨以来の好結果を残した。

 表彰台で初々しくはにかんでいた鍵山は、全日本選手権を振り返ってこう語る。

「全日本という日本一を争う舞台で3位になれたことはとてもうれしく思います。構成を変えて難易度を上げて挑んで、ほぼノーミスに近い演技ができたことがとてもよかったと思います。心残りの点は、SPでトリプルアクセルにミスが出てしまったこと。表彰台はとてもいい眺めでしたし、これからはてっぺんに上って最高の景色が見たいと思っています。

 1月のユース五輪、3月は世界ジュニアの大舞台が待っているので、気を抜かずにもっともっと成長できたらいいなと思っています」

 ユース五輪と世界ジュニア選手権に加え、2月の四大陸選手権の代表にも選ばれた鍵山は、シーズン後半戦でのさらなる飛躍を誓った。

 鍵山のコーチである父の正和氏は、アルベールビルとリレハンメルの五輪代表。そんな父と歩むトップスケーターの道に入ったのは5歳の時だ。スケーティングの基本を徹底的に教えられたのだろう。ジャンプとスピンの軸にぶれがない。父譲りの膝と足首の柔らかさが強みになっており、4回転を含めたジャンプは回転速度があり、軽やかに流れるランディングにはキレがある。スピンも美しいポジションを作れる。気に入った曲が流れていると「自然と体が動いてしまう」と言うほど踊ることが好きで、音楽に合わせて表現できる能力の持ち主だ。試合や海外選手との対戦について「ワクワクする」と楽しめるメンタルの強さもある。

 一方、ジュニアGPファイナル王者の佐藤も、SP『ロシュフォールの恋人たち』では最後のジャンプに4回転トーループを完璧に決めて、初めての80点台となる82.68点で3位の好発進となった。だが、フリー『ロミオとジュリエット』では冒頭の4回転ルッツで転倒して163.82点の6位に沈み、合計246.50点の総合5位に終わった。

「4回転ルッツはミスしてしまったんですけど、ほかはきれいにまとめられてよかったです。悔しい部分もあるんですけど、最終グループで滑って戦える夢が叶って、とてもいい経験になったので、これからもっと頑張ろうと思いました」

 同じ仙台出身の羽生結弦に憧れて育ち、「羽生選手は神様で、駿のすべてのエレメンツ(技)のお手本です」(日下匡力コーチ)。偉大な先輩と同じリンクで5歳からスケートを始めたという佐藤は、ここ1年で急成長。4回転ルッツなど、複数の4回転ジャンプを跳べるようになった。得点源のトリプルアクセルは高くて幅があり、安定感も抜群だ。

 豊かな表現力とジャンプやスピンなどのエレメンツの美しさを持つ鍵山と、4種類の4回転ジャンプを習得してトリプルアクセルを武器にする佐藤。いまのところ、実力差はほとんどない。「五輪で金メダルを取ることが目標」と口を揃えるふたりが、これから紡ぎ出すライバル物語はどのようなものになるのだろうか。近い将来、羽生や宇野を脅かす存在になってもらいたいところだ。