日本テレビ・後藤晴菜アナ×スポーツライター・佐藤俊氏 対談(後編)

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 大学駅伝に造詣が深い日本テレビ・後藤晴菜アナとスポーツライター・佐藤俊氏の対談が実現。前編では第96回箱根駅伝の見どころ、有力校を中心に熱いトークを繰り広げてくれたが、今回は取材するからこそ知る箱根駅伝の魅力、楽しさについて語ってもらった。



日本テレビ・後藤晴菜アナと『箱根奪取 東海大スピード世代 結実のとき』の著者・佐藤俊氏

佐藤 今回の箱根で注目されている選手は誰ですか。

後藤 筆頭は、東洋大の相澤(晃/4年)選手でしょうか。全日本選手権の3区で10人抜き。レース前から「調子がいい」と酒井(俊幸)監督はおっしゃっていたんですよね。1位の東京国際大とは40秒差だったのですが、酒井監督のなかにはその差も詰められるという自信があったみたいで。その信頼感というか、きちんと結果を出すところが本当にすごいですよね。

佐藤 あのごぼう抜きは本当にすごかった。ひとりだけ次元の違う走りでしたよね。あと全日本で言えば、駒澤大の田澤(廉/1年)選手もすごい走りを見せてくれました。

後藤 1年生とは思えない見事な走りでした。7区で区間賞を獲り、区間2位の青学大・吉田(圭太/3年)選手に15秒差をつけました。1年生なのに計算できる選手というのは、駒澤大にとっては相当大きなアドバンテージと言えるでしょうか。大八木(弘明)監督も中村匠吾選手や藤田敦史選手といった、いわゆる”駒澤の大エース”と呼ばれた選手たちとまったく遜色ないとおっしゃっていました。

佐藤 これからどんな成長を見せてくれるのか、本当に楽しみな選手ですよね。相澤選手同様、日本の陸上界を引っ張っていってくれる選手になるような気がします。

後藤 出雲を制した国学院大は、土方(英和/4年)選手と浦野(雄平/4年)選手が注目されていますし、目標と語る往路優勝に向けて、どんな仕上がりになるのでしょうか。

佐藤 各大学ともエースと呼ばれる選手がいて、彼らをどこに配置するのかも注目ですね。個人的にはエースを2区に集めて、誰が強いのか見てみたいです。

後藤 学生ナンバーワンをかけた熾烈なレースを見たいですよね。そうなると、1区のスタートも大切になりますよね。

佐藤 スタートで遅れてしまうと、その後が大変ですからね。ただ、2区にエースを置くことによって、出遅れたチームは取り返せるし、うまくリードできたチームはさらに差を広げることができる。いま2区の話になりましたけど、気になる区間はありますか。

後藤 ひとりの箱根駅伝ファンとして好きなのは、1区と2区です。今年の箱根はどうなるんだろうという独特の緊張があるのは、やはりこの2区間。どのチームも勢いをつけたい。区間配置から駆け引きが始まるように、見どころが多いですよね。一方で、取材する立場になって大切さに気づいたのは4区ですね。往路の最終区間である5区にどのような状態で襷(たすき)を渡せるのか。4区にどんな選手を置けるのかによって、そのチームの選手層の厚さがわかるというか、非常に大事な区間だと思います。

佐藤 前回の箱根がまさにそうでしたからね。青学大は(当時)2年生の岩見(秀哉)選手を置いたのに対し、東洋大は相澤(晃/当時3年)選手、東海大は館澤(亨次/当時3年)選手というエースクラスの選手を入れてきた。そこがすべてではないですが、レースの行方を大きく左右したのは間違いないですよね。

後藤 4区は要注目ですね。

佐藤 それに箱根駅伝に出る大学は監督も個性的で、そこも見ていて楽しいですよね。

後藤 私、入社1年目の第90回大会で初めて箱根駅伝に関わったのですが、その大会で東洋大が優勝したんです。私は1号車に乗って、先輩アナウンサーのサブとして働いていたので、運営管理車からの酒井(俊幸)監督の声をずっと聞いていました。優勝に向けてどの区間も落とすわけにはいかないという状況のなかで、やはりその声に厳しさを感じました。ところがその後、監督を取材させていただいた時に感じたのは、選手それぞれを思う愛の大きさ。勝負師としての目と、選手を思うやさしい目が切り替わる瞬間が、箱根駅伝ファンの心をつかんでいるように思います。

佐藤 勝負の厳しさというのを、酒井監督自身が一番よくわかっているのかもしれないですね。青学大の原(晋)監督も厳しさとやさしさを持った監督です。

後藤 そうですね。原監督もユーモアがあって、取材に行くのが本当に楽しいです。先日、青学大OBの森田歩希(現GMO)選手を取材しました。原監督から駅伝の区間を発表される前に、選手たちの間でも予想するそうなんです。それで実際の発表を聞くと、誰もが想像しなかった区間配置があると……。ただ、そのサプライズもきっちり結果となって表れる。原監督にしか見えない選手それぞれの強みがあるんだという話をされていて、あらためて原監督のすごさに気づかされました。

佐藤 原監督というのは、ずっと寮で一緒に住んでいるからこそ知り得る情報をベースに、選手の長所を見極めて区間配置するという話を聞いたことがあります。監督と選手では、結構、見方に差があります。東海大もすごく差があるらしいです。

後藤 そうなんですか。

佐藤 で、その差をどういうふうに埋めていくのかという作業を、東海大はやったそうです。以前は、監督が実績と経験を考慮して決めていたそうなのですが、選手と温度差があって、結果も出なかった。今は選手とまめにコミュニケーションを取りながらやっていると。もちろん、最終決定は監督にあるのですが、以前ほど大きな考えの差はなくなったみたいで、それがいい結果につながったのかもしれないですね。

後藤 そういうのもチームそれぞれに特徴があって面白いですよね。

佐藤 駒澤大の大八木(弘明)監督も名物監督のひとりです。

後藤 「男だろ!」でおなじみですけど、厳しい面だけでなく、選手と監督の信頼関係、絆の深さが感じ取れますよね。

佐藤 一緒に食事したり、サウナに入ったり。見ていて、監督と選手のいい関係性というのがわかります。

後藤 今回、東京五輪に内定した中村匠吾選手は、大学卒業後も大八木監督と二人三脚で練習していますよね。

佐藤 出雲を制した国学院大の前田(康弘)監督も、大八木監督の教え子ですよね。

後藤 レース後、ふたりでお話しされている姿を見ました。大八木監督は悔しい表情のなかで、どこかうれしさもある様子でした。昨年、国学院大を取材した時に、前田監督は「いずれ優勝できるチームになる」とおっしゃっていたのですが、早くもそれが実現。大八木監督にしてみればまたライバル校が増えたわけですが、それよりも教え子が強いチームをつくったうれしさ、というのを見られた気がしています。



箱根駅伝当日はレース直前のリポートを担当する後藤晴菜アナ

佐藤 前田監督はすごく真面目な方で、学級委員長のようなイメージがあります(笑)。出雲の時も、表彰式が終わって、早々にいなくなったんです。どこに行ったのかと思ったら、「もうひとつの出雲駅伝」と言われている記録会に顔を出していました。

後藤 優勝しても次のことをしっかり見据えていたのですね。前田監督のひたむきさがうかがえます。

佐藤 ちなみに今回、箱根当日はどこを担当されるとか決まっているのですか。

後藤 今回は当日の直前番組で、レース直前のリポートを担当します。直前の緊張感をお伝えし、当日のメンバー変更などをリポートするのが主な役割です。

佐藤 往路は大手町、復路は芦ノ湖湖畔からということですね。

後藤 そうです。朝7時からぜひご覧ください。

佐藤 今日は本当にありがとうございました。

後藤 ありがとうございました!

おわり

Profile
後藤晴菜(ごとう・はるな)
1990年4月12日生まれ。愛知県出身。A型。趣味:飛行機を見ること。乗ること。特技:ピアノを弾くこと。好きな言葉・座右の銘:一点集中・全面展開

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佐藤俊(さとう・しゅん)
1963年、北海道生まれ。青山学院大経営学部卒業後、出版社を経て93年フリーランスとして独立。サッカーW杯は98年フランス大会から、五輪は96年アトランタ大会から現地取材を継続中。サッカー、陸上などのスポーツをはじめとするノンフィクションをメインに執筆する。著書に『中村俊輔 リスタート』(文藝春秋)『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)など多数。近著に『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』(集英社)がある。