箱根駅伝2020 有力校はココだ!  戦力分析 早稲田大学編 前回の箱根駅伝は12位。名門・早稲田大は9年ぶりにトップ5から陥落し、13年ぶりのシード落ちとなった。 そして、現所属の選手が誰も経験していなかった、10月26日の箱根駅伝予選会…

箱根駅伝2020 有力校はココだ!  
戦力分析 早稲田大学編

 前回の箱根駅伝は12位。名門・早稲田大は9年ぶりにトップ5から陥落し、13年ぶりのシード落ちとなった。

 そして、現所属の選手が誰も経験していなかった、10月26日の箱根駅伝予選会でもまさかの結果が待っていた。スピードタイプの新迫志希(4年)は8日後の全日本大学駅伝に合わせて、エース格の中谷雄飛(2年)は腸脛(ちょうけい)靭帯に違和感が出たため、ふたりとも温存。その結果、総合9位と”ブービー”での予選通過になったのだ。




箱根予選会9位も、全日本大学駅伝で6位と奮闘した早稲田大

 予選会の結果は名門からすれば屈辱的なものだ。相楽豊駅伝監督も、「最低でも総合3~6位に入りたかった」と話していたが、早大は全日本大学駅伝で急浮上を遂げることになる。

 1区:井川龍人(1年)が16位と出遅れながら、2区:太田智樹(4年)が8人抜きで8位に浮上し、4区:千明龍之佑(2年)も4人抜き。井川を除く7人が区間ひと桁の順位でカバーすると、最終8区は次期主将の吉田匠(3年)が6位でゴールに飛び込んだ。

「全員が最低限でとどまってくれた。早稲田らしい駅伝ができたと思う」と相楽監督。箱根予選会で苦しんだチームが、全日本で悠々とシード権をゲットしたことに驚きの声が上がった。しかし、相楽監督は満足していない。

「予選会の結果を受けて、『これは自分たちの力ではない』という反骨心もありました。疲労が残るなかで選手たちは頑張りましたが、優勝争いしていたチームが後ろを走っていた場面が何度もあったことを考えると、悔しいなと思います」

 そう、箱根駅伝ではさらに”上”を目指しているのだ。16位スタートから2区で流れを変えた主将の太田も、「1区でちょっと出遅れたんですけど、トップから30秒差くらいだったので、追いつこうと思って走りました。何度か3位を狙えるチャンスがあったので、そこは悔しいですね」と前を向く。故障で出遅れていた中谷が全日本で復帰し、予選会を欠場した新迫も7区を区間9位でまとめた。

 前回(12位)の箱根メンバーのなかで、卒業したのは2人だけ。故障あがりだった太田が2区で区間21位に沈んだことを考えると、前回からの”上乗せ”は十分にある。その主将・太田は、3年連続の2区が濃厚。今季はコンスタントに活躍しており、前々回(区間6位)以上の好走も期待できる。卒業生の穴は、高校時代に”世代ナンバーワン”の活躍を見せた井川と、6月の全日本大学駅伝予選会3組でトップを飾った、鈴木創士というルーキーでカバーできる。

 前回5区17位の大木皓太(4年)はエントリーメンバーから外れたが、今回は吉田が山を駆け上がることになりそうだ。吉田は前回、5区での出場を予定していたが、12月24日に自転車を運転中に乗用車と接触し、左肋骨を骨折。急遽、5区を走ることになった大木は区間17位と苦しみ、チームは往路15位と低迷した。

 相楽監督は学生時代に5区と6区を経験。駒野亮太コーチは5区で区間賞を獲得しており、山のノウハウは十分にある。スピードランナーが揃う一方で、近年の早大は5区でアドバンテージを奪ってきた。「5区吉田」というカードが今回は武器になるかもしれない。

 吉田は3000m障害がメイン種目で、5月の関東インカレでは東海大・阪口竜平(4年)、法政大・青木涼真(4年)に次ぐ3位に入っている。当然、前々回の5区で区間賞をゲットした青木のことは相当意識していたはずだ。本人も「5区を走って、往路をしっかり締めくくりたい」と前回のリベンジを誓っている。

 2区と5区以外の往路は、中谷、千明、井川らが候補か。前回1区4位の中谷は、「希望区間は1区、3区です。前回は中途半端な順位だったので、今回は区間賞を目指します」と力強い。また、1区を熱望する井川は、駅伝シーズンで大活躍中の駒澤大・田澤廉(1年)をライバル視しており、負けるつもりはない。

 11月23日の1万m記録挑戦競技会では、鈴木、太田の弟・直希(2年)、新迫が28分台をマークするなどチームの状態も上向きだ。さらに三上多聞(4年)のように、一般入試からエントリーを勝ち取った選手も復路でのレギュラーを狙っている。

 今季は、「ミトコンドリアを増やす」ことをテーマに取り組んできたという。酸素からエネルギーを作り出すミトコンドリアを増やすことが、持久力アップにつながるからだ。そのために、100mを7割程度の力で50本走るというメニューを月に1回ペースで入れてきた。具体的な数値を計ることはできないが、ミトコンドリア増量トレーニングがどのような効果をもたらすのか、非常に興味深い。

 今大会は東海大、青山学院大、東洋大、駒大、國學院大の”5強”が優勝を争う展開が予想されている。そのなかでチームが目指すは「3位以内」。43年連続88回の出場を誇る早稲田大が伝統の力を見せつける。