日本テレビ・後藤晴菜アナ×スポーツライター・佐藤俊氏 対談(前編)

 正月の一大イベントである箱根駅伝。前回の大会では東海大が青学大の5連覇を阻止して初優勝を飾るなど、大学駅伝は新たな時代に突入した。はたして、96回目を迎える2020年の大会はどんなレースになるのだろうか。

 今回、高校時代は陸上部に所属し、2013年の入社以来、箱根駅伝に携わっている日本テレビの後藤晴菜アナと、『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』の著者で、長年大学駅伝を取材されているスポーツライターの佐藤俊氏の対談が実現。箱根駅伝の魅力、今大会の見どころ、注目選手について熱く語り合った。



高校時代は陸上部に所属し、バリバリの体育系だった後藤晴菜アナ

佐藤 本日はよろしくお願いします。

後藤 こちらこそ、よろしくお願いします。これまで箱根駅伝についてお話しする機会はあったのですが、対談というのは初めてで……。ましてや、私よりも深く取材されている方を前に何を話したらいいのか(笑)。

佐藤 いやいや(笑)。箱根に限らず、大学駅伝はかなり取材されていますよね。

後藤 そうですね。だいたい5月の関東インカレから始まって、トラックレースを中心に取材をします。駅伝シーズンに入ると、出雲駅伝や全日本大学駅伝も。箱根駅伝予選会が終わると、いよいよ箱根駅伝に向けて動き出すという流れですね。

佐藤 箱根駅伝の前になると、いろんな大学を取材されるのですか。

後藤 日本テレビではアナウンサーそれぞれに担当校が割り振られます。エントリーに関わるすべての選手と監督に対面でお話をうかがい、記録や過去の戦績も一から調べています。

佐藤 今回はどの大学の担当を?

後藤 順天堂大学です。

佐藤 ちなみに前回は?

後藤 山梨学院大学でした。ほかのアナウンサーの担当校や直前の取材なども合わせると、毎年4~5校取材しています。

佐藤 ここまで順天堂大学をはじめ、何校か取材されたと思います。それに出雲や全日本の結果を踏まえて、今回の箱根はどんなレースになると思われますか。

後藤 出雲に取材に行った時に、どの大学の監督も国学院大のことをすごく警戒されていて、実際、そのとおりの結果になりました。そして距離が延びた全日本は、東海大が強さを発揮しました。ただ、箱根となると……難しいですよね。往路は混戦になるでしょうか。

佐藤 今年は「戦国駅伝」と言われているように、各大学の力が拮抗していて、どこが勝ってもおかしくない。実際、全日本でもトップが激しく入れ替わるレースになりましたが、箱根も同じような展開になるんじゃないかと思っています。

後藤 先頭の入れ替わりが多ければ多いほど、やっぱり駅伝って面白いなって。駅伝はひとつのミスが大きく影響してしまうことがあります。選手は本当に大変でしょうが、視聴者として、混戦は見ていてやはり楽しさもありますよね。

佐藤 とくに箱根は、山上りや山下りなど特殊区間があります。毎年、その区間で多くのドラマがあるように、ここも大きなポイントになりそうですね。

後藤 区間配置がすごく重要になってきますよね。どこで仕掛けるのか、どこで勝負するのか……。ある大学の監督さんは、山の経験者がいる大学が強いのではないかとおっしゃっていました。

佐藤 それはあると思います。個人的に山上りの強い大学は国学院大、法政大、東海大と思っていて、よほどのミスがない限り、往路に関してはこの3チームが有利なような気がしています。

後藤 そうですよね。あとは東海大、国学院大と並び、東洋大、駒澤大、青学大の5強と言われる大学がどこまで絡んでくるか……ですね。

佐藤 それに今年は、シューズの影響もあると思うのですが、”高速駅伝”と言われていて、選手のスピードが上がっている。前回、東海大がマークした大会記録を塗り替えるのでは……と言われています。スピードということについては、どう思われていますか。

後藤 もともと東海大はトラックに強い選手が多く、そのなかで距離が延びる箱根にどう対応するのかと言われてきたのですが、前回、箱根駅伝優勝という結果を出して、”スピード駅伝”というのが話題になりましたよね。20キロという長い距離のなかで持久力は必要ですが、スピードもないと勝てないという時代になっているのは間違いないと思います。

佐藤 関東インカレを見ていても、1500mに結構いい選手が集まり始めています。今まで、箱根を走る選手というのは、5000mとか1万mがメインだったと思うのですが、最近は1500mも注目されるようになっていますよね。



箱根駅伝の見どころについて語る後藤晴菜アナとスポーツライターの佐藤俊氏

後藤 私自身、箱根駅伝に向けて各選手の記録をチェックするなかで、1500mの記録はこれまであまり意識していなかったというのが本音です。5000m、1万m、ハーフ、もしくは3000m障害ぐらいまでで。でも、今では1500mも細かくチェックするようにしています。ただ、出雲駅伝のように距離の短い区間のあるレースであれば、1500mを走れるスピード感のある選手が必要なのはわかるのですが、箱根でそれを生かすのは難しいですよね。

佐藤 1500mを得意としている選手は、ラストスパートとか、そういうところで力を発揮すると思います。多くの大学が、夏まではその選手の特性が生かせるレースに出場させて、それが終わると駅伝に向けてシフトします。徐々に距離を踏み始めて、10キロ、20キロと距離を延ばしていくのですが、当然、最初は苦労するみたいです。

後藤 箱根予選会が昨年からハーフになって、日ごろ1500mを専門にしている選手は距離に対しての不安を抱えている感じがしました。それでも予選会後の1~2カ月で20キロを走れる体をつくっていくんですよね。本当にすごいなぁ。私には考えられないです(笑)。

佐藤 今回の箱根にしても、勝負どころではスピード対決になるような気がしています。

後藤 出雲にしても、全日本にしても、アンカーで勝負が決まったように、最後はスピード勝負の展開になるかもしれないですね。

佐藤 今年に関しては、先ほど後藤さんも言われたように東海大、国学院大、駒澤大、東洋大、青学大が5強と言われています。この5校以外に気になるチームはありますか。

後藤 予選会は東京国際大がトップ通過。全日本でも4位と健闘しました。「これまでは箱根に出場することを目標に。そしてついに戦えるレベルになってきた」と大志田(秀次)監督は話していました。全日本の2区で区間賞を獲った伊藤(達彦/4年)選手、8区で区間賞のルカ・ムセンビ選手(1年)と注目の選手がいますし、予選会ではイエゴン・ヴィンセントキベット選手(1年)が個人3位の成績を残しました。

佐藤 着実に力をつけてきていますよね。あと、予選会で言うと、筑波大が26年ぶりに本戦出場を果たしました。

後藤 箱根駅伝復活プロジェクトというのを立ち上げていたんですよね。私のなかでは、筑波大はトラックの印象があって、とくに短距離、跳躍に強いイメージがありました。ただ、箱根駅伝の歴史を振り返るうえでは欠かせない大学ですよね。どんな走りを見せてくれるのか楽しみです。

佐藤 クラウドファンディングで強化費を募ったようで、こういう方法もあるんだなと。いずれにしても、復活したというのはすごいことだと思いますし、今回はもちろん、これからも注目したいチームですよね。

後藤 それに早稲田大も全日本で6位と結果を出しましたし、本番が楽しみですね。

佐藤 そして、なんと言っても注目は箱根連覇の期待がかかる東海大です。黄金世代と呼ばれる4年生の調子が上がらないなか、下級生たちが台頭して、全日本選手権で優勝した。チームとしての勢いを感じます。

後藤 勝ち続ける難しさもありますし、追われる立場なのでプレッシャーも計り知れないと思います。優勝校として迎える初めての箱根駅伝、どんなレースになるのでしょうね。

佐藤 選手層で言えば、東海大と駒澤大が若干抜けている感じがします。駒澤大は10月の出雲にしても、勝っても不思議ではないレースだったと思いますし、往路だけでなく、復路も戦えるんじゃないかと。

後藤 往路優勝を目指す国学院大も注目されていますよね。ただやはり、どの大学にも共通して言えることは10人揃える難しさ、ですね。

佐藤 往路はもちろん大事だけど、復路も気が抜けない。そう考えると、箱根につなぎの区間はないんじゃないかと思うんです。

後藤 本当にそう思います。8区や9区でブレーキになってしまったら、いくら先頭を走っていてもひっくり返されてしまう。

佐藤 先程も言われましたが、今年の駅伝はアンカーで逆転劇があったので、2020年の箱根も10区で勝負が決まるという可能性もありそうですね。

後藤 久しぶりにそういう展開のレースを見たいです!

後編につづく

Profile
後藤晴菜(ごとう・はるな)
1990年4月12日生まれ。愛知県出身。A型。趣味:飛行機を見ること。乗ること。特技:ピアノを弾くこと。好きな言葉・座右の銘:一点集中・全面展開

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佐藤俊(さとう・しゅん)
1963年、北海道生まれ。青山学院大経営学部卒業後、出版社を経て93年フリーランスとして独立。サッカーW杯は98年フランス大会から、五輪は96年アトランタ大会から現地取材を継続中。サッカー、陸上などのスポーツをはじめとするノンフィクションをメインに執筆する。著書に『中村俊輔 リスタート』(文藝春秋)『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)など多数。近著に『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』(集英社)がある。