四大陸選手権、世界選手権に出場することが決まった羽生結弦

 12月22日の全日本フィギュアスケート選手権。男子フリーは予想外の結末になった。

 今大会、羽生結弦に疲労の色がありありと見てとれた。昼の公式練習では4回転ルッツを一度跳んだが、集中していたのは4回転ループだった。曲かけではそのループは少し詰まる着氷になったが、そのまま4回転サルコウにつなげてきれいに決めた。だが3回転ルッツから再開した滑りでは単発を決めたあとの4回転トーループでステップアウト。強引に1Euと3回転フリップを付けるジャンプにすると、そのあと少し間を取ってから跳んだトリプルアクセルからの連続ジャンプはシングルになり、1回転トーループを付ける出来だった。

 曲の終わり際には4回転トーループからの3連続ジャンプを跳んだ羽生。曲かけが終わってからはトリプルアクセル+3回転トーループ、4回転トーループを跳んだが、ややチグハグした感じで練習を終えた。さらに直前の6分間練習では、4回転サルコウを2回と4回転ループ2回に、パンクして2回転になったトーループのみと、本数を抑えていた。

 羽生のフリーの演技は、最初の4回転ループはステップアウトして1.80点減点される滑り出し。だがそれに動揺することなく次の4回転サルコウをしっかり決めると、スピンのあとのステップは攻めの滑りを見せ、「ここからしっかりしっかり滑り切る」という決意を感じさせた。

 しかし、次の3回転ルッツが2回転になる思いもよらないミス。演技後、その原因を問うと羽生は「何ですかね、イメージとすごく……何か、全部言いわけに聞こえるから嫌ですね。しゃべりたくないというのが本音です」と苦笑した。

「6分間練習まではよかったですし、感覚がそんなに悪かったわけではないので。何か、自分の精神状態と肉体の状態とイメージが、全部バラバラと乖離していった感じです」

 予想もしていなかったイメージの狂いが、最も安心して跳べるはずの3回転ルッツで出てしまった。それが彼の精神状態に与えた影響は大きかっただろう。

「ルッツが抜けてからはいろいろ考えて頭を使っていました。どこで3回転を増やせるかなとか、どこでより高い点数を稼ごうかなということも考えて。やれることは限られているけど、それでも食らいついてやろうと思っていました。でも、やろうとしてもできなかったということです」

 羽生はそう分析したがその反面、「そんなリカバリーだったら意味がないな」という思いも浮かんでいたとも言う。

 羽生は次の4回転トーループでも着氷を乱すと、そのあとの4回転トーループからの3連続ジャンプでは最後の3回転フリップの着氷でよろけた。さらにトリプルアクセル+3回転トーループでも着氷を乱し、最後のトリプルアクセルでは転倒。得点源の3本の連続ジャンプは、すべて回転不足を取られる結果でフリーの得点は全体3位の172.05点。合計は282.77点で、4年ぶりの全日本は2位にとどまった。ショートプログラム(SP)2位の宇野昌磨が、GOE(出来ばえ点)減点は着氷を乱した3回転ループのみにとどめ、合計290.57点で優勝した。

「弱いなって思いますね。本当に弱っちいって。ループもトーループも跳べないようじゃ話にならないし、アクセルも跳べないようじゃ本当に話しにならない。悔しいしかないです。次へ向けて頑張ります。強くなります」

 いつもとは違い、動揺が抜けないままの雰囲気で話していた羽生。NHK杯からの3連戦の疲労は予想以上に大きかったと言える。この3連戦は、歴代世界最高得点をNHK杯とグランプリファイナルで連発した2015年にも経験している。その時も高得点を連発したあとの全日本は疲労が溜まり、優勝はしたものの得点は286.36点にとどまっていた。

 だが今回は、ファイナルではネイサン・チェン(アメリカ)に敗れており、歴代世界最高得点を出した4年前とは異なり高揚感もない状況。しかも今季のファイナルのフリーでは、持てる力をすべて振り絞る演技で、その疲労が残ったまま。全日本へ向けては調整らしい調整もできなかった。

「調整はうまくいかなかったですね。何か、日々体が、ドンドン劣化しているような感じはあったし、ショートの時からずっと変だなと感じていた。それでも僕は恵まれているので、本当にいろんな人たちが支えてくれて、体も今できる最高の状態にしてもらった。ただそれをしてもらったうえでのこの結果なので、正直言って僕の実力と技術が足りなかったなという感じです。それでも死力は尽くしたと思います」

 こう話しながら、気持ちと言動がまだ乖離しているみたいだと、羽生は苦笑しながら話した。

 同時に、こうも語った。

「何かイメージと自分の体のキレみたいなものが今回は分離していて。体力的にはショートだったら何とかなったかもしれないけど、フリーはどうしようもないところが出てしまった。はっきり言ってしまえば、競泳の選手はひとつの大会で何種目もやるわけですから。内容は違うかもしれないけど、そういうのに比べると僕は5週間で3回しか試合をやっていない。それでこのくらいの体力しかないと思うと、自分が(余分な)力を使ってジャンプを跳んでいるんだなというのと、もっと力を抜いて自分らしいいいジャンプが跳べるようにしなければいけないなというのを、今は考えています」

 そんな言葉に、羽生の矜持も感じる。そして、宇野の優勝についてはこう述べている。

「昌磨が辛そうなのを見ていたので、それがやっと落ち着いてスケートに集中できているなと思うと、やっぱりうれしいです。これまで3年間僕が出ていなかったけど、たぶんこれで昌磨も胸を張って全日本王者と言えると思う。彼は平昌五輪の銀メダルも予想以上の結果だとも言っていたけど、彼のいろんなものを含めた昌磨の強さの結果だと思うので。僕もしんどいことはたくさんあるけど、『こんなもんじゃねえぞ』って。これから頑張ります」

 羽生の言葉が、自分自身への宣戦布告であるかのように会見場に響いた。