「男子テニス界のBIG3」ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の存在感や、その牙城を崩そうというダニール・メドベージェフ(ロシア)、…

「男子テニス界のBIG3」ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の存在感や、その牙城を崩そうというダニール・メドベージェフ(ロシア)、ステファノス・チチパス(ギリシャ)ら若手の初トップ10入りなど、群雄割拠の様相を呈した今シーズン。ATP(男子プロテニス協会)の公式YouTubeでは、そんなトップ選手たちの2019年ベストショット集を動画公開している。

そのなかで今回は世界ランキング3位、「生きる伝説」フェデラーの名プレーを紹介する。

38歳となっても全く衰え知らずのフェデラー。非の打ちどころのないテニスはベストショット集でもハッキリと表れており、他のトップ選手たちの動画と比べてもショットの種類が多彩。

相手の逆をついてあっさりとダウン・ザ・ラインを決めたり、予想できない突然のドロップショット。片手バックハンドウィナーにボレーと、どのシーンをとっても華麗なプレーばかりだ。

そして今シーズンのフェデラーといえば、3年ぶりにクレーコートシーズン(4月から6月上旬まで)にも出場し、多くのファンを魅了した。

5月のクレーコート大会「ATP1000 ローマ」。初戦の対ジョアン・ソウザ(ポルトガル)では、ポジションを下げコートを左右に高速で走り抜けるディフェンシブなプレーも見せている。さらに、3回戦で23歳ボルナ・チョリッチ(クロアチア)と繰り広げた激闘。その最終セット終盤で繰り出したのが、魔法のようなドロップショットだった。

フェデラーの2-6、6-4、5-5という大事な局面で迎えたそのシーン。フェデラーがサービスを放つと、ラリーはバックハンドの攻防となった。フェデラーは1球、2球とバックハンドのクロスを返球すると、セオリー通りコートのセンターにポジションを戻そうとしたところを、さらに相手のバック攻めに合い逆をつかれた格好に。

しかしその瞬間、フェデラーはやや崩された体勢からバックハンドのドロップショットを選択。これが、バックスピンとともに強烈なサイドスピンもかけていたのだろう。相手のネット際ごく浅いところに落下しただけでなく、バウンド後コート外に逃げていくようにボールが横にも変化した。

全力で前にダッシュし、なんとかラケットにボールを当てた相手チョリッチ。しかし、ぎりぎりのところで2バウンドしていたのか、止まりきれず直後に「ネットタッチ(プレー中にネットに触れると反則となり、相手のポイントとなる)」となったかで失点したチョリッチは、そのままネット際で腰に手を当てて、少しのあいだ呆然と立ち尽くした。

そして何より、フェデラーのこの芸術的なショット。ポイントが決まると会場からは地鳴りのような歓声があがり、観衆は立ち上がって拍手を送った。

今シーズンを世界3位で終えたフェデラー。今年はグランドスラムでの優勝はなかったが、「ATP1000 マイアミ」を含め4つのタイトルを獲得した。通算獲得タイトル数は103となり、あのジミー・コナーズ(アメリカ)が持つATPツアー歴代最多優勝記録・109回まであと6つとしている。

来年2020年は東京オリンピックでプレーすることも明かしており、ファンにとってますます楽しみなシーズンとなりそうだ。これからもフェデラーが、できるだけ長く華麗なプレーで魅了してくれることに期待したい。

なお、フェデラーのベストショット集の動画では他にも、相手ドミニク・ティーム(オーストリア)が打たれた瞬間追うのを諦めたドロップショットや、クレーコートでガエル・モンフィス(フランス)に決めた矢のようなフォアハンドウィナーなどが紹介されている。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP1000 ローマ」でのフェデラー

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)