「Complejo」(複雑な)

 徳島ヴォルティスのリカルド・ロドリゲス監督は試合後、言葉を選びながら無念さを表現した。

 徳島はJ2を4位で終え、昇格プレーオフに進出している。5位のヴァンフォーレ甲府、そして6位のモンテディオ山形を撃破。この日、J1で16位の湘南ベルマーレとの決戦にこぎつけ、敵地で1-1と引き分けた。しかし、昇格にはアウェーでの勝利が条件で、その不利をひっくり返せなかった。

「2点目を取れなかったのが、自分たちの力不足」

 徳島の選手たちは、気丈にも自らを戒めていた。徳島の”総決算”とはどんなゲームだったのか?



J1昇格を逃し、サポーターにあいさつをする徳島ヴォルティスの選手たち

 12月14日、Shonan BMWスタジアム平塚。湘南の本拠地に乗り込んだ徳島は前半、ペースをつかんでいる。立ち上がりこそホームの声援に後押しされた湘南の攻撃を浴びたが、チームとしての完成度で勝っていた。ひとりひとりがポジション的優位でボールを受け、それをゴールに向かってつなぐ。その仕組みが練りこまれていた。

 戦術的な軸となっていたのは、MFの野村直輝だろう。

 野村は湘南のボランチの手の届かない場所にポジションを取って、プレスを回避。後方でプレーを作ったかと思えば、トップ近くで連係。そうかと思えば、サイドから際どいクロスを送った。シャドーだが、むしろインサイドハーフに近い役で、彼が上下することにより、両ウィングバックはウィングのように前に出て、3-2-2-3のような攻撃的布陣を作っていた。

「自分たちはやるべきことを積み重ねてきて、それがはっきりしていたので、リラックスしてプレーできました」

 野村はそう言って回顧している。徳島はシーズン前半こそ一進一退を繰り返していたが、8月からは11勝1敗3分けと、猛烈に巻き返した。

「今年(の徳島)は自分も含めて新しい選手が多く入って、最初はやり方が定まっていなくて、スタイルを追求する中、夏以降から(戦い方がイメージと)リンクして、ここまで来られました。相手(の戦い)を見ながらプレーできるようになって。今日も相手のボランチがハードワークするので、僕のところに来るのか後ろなのか、その中間地点を取るようにして、イメージどおりボールを握ることができていました」(野村)

 攻め続けていた”見返り”だろう。20分、右サイドを深く入り込み、田向泰輝が中に蹴り込む。ブロックされたあとに野村が再びクロス。これがCKになると、野村がファーに蹴ったボールを石井秀典が折り返し、鈴木徳真が押し込んだ。

 前半、徳島は5本ものCKを獲得している。両サイドから万力のように押し込み、もう1点を取れるチャンスもあった。ボールプレーでイニシアチブを握っていた。しかし、ボールは持ったものの、ゴールまで雪崩れ込むことはできなかった。

「1点リードして、もう1点というところで。ゴール前の五分五分のボールが、相手のものになっていた。2点目を決めきれなかった」(徳島・鈴木)

 そして後半、湘南がJ1の底力を見せるように流れを押し戻す。ブラジル人FWクリスランが入ったのは大きかった。ラインを下げ、マークを集中させ、ボランチの齊藤未月が息を吹き返した。左サイドの鈴木冬一も出色のキープ力で、局面の勝利でダメージを与えていた。

 徳島は後手に回った。5-4-1のような陣形になる時間が多くなり、差し込まれる。ロドリゲス監督は攻撃に転じる選手交代を試みたが、状況はむしろ悪化した。64分、右サイドで鈴木にマークをはがされ、右サイドにボールを通されると、DFヨルディ・バイスが引っ張られる。折り返されたボールをクリスランにスルーされ、後方から突っ込んできた松田天馬に流し込まれた。

「後半は、自分がいる右から攻撃を作れなくなっていた。ボールを持てなくなって……。湘南のFWはJ2と比べてパワーもあって、難しい局面になると思っていただけに……」(徳島・田向泰輝)

 勝たなければ昇格はない徳島は攻めに転じたが、パワーは残っていなかった。J1を戦ってきた選手を凌駕する勢いはない。残り10分を過ぎると、長身DFバイスを前線に上げ、パワープレーを選択。左サイドからのクロスをバイスがボレーで合わせ、相手DFの手に当たったかに見えたが、笛はならなかった。終了間際にも鈴木が渾身のミドルを放つも、無情にもサイドネットを叩いた。

 徳島のJ1昇格の夢は叶わなかった。

「前半は、我々のほうがよかった。かなりの水準を見せられたと思う。選手には『誇りに思う』と伝えた。(進退は)相当なショックを受けているので、これから考える。(J1昇格には)どれだけ戦力を維持できるか、が重要になる」

 ロドリゲス監督は声を絞り出した。

 チームとしての価値を示したゲームだった。可能性を感じさせる選手もいた。すでにJ1クラブから触手が伸びているという。それは徳島にとって頭痛の種だろうが、今シーズンの勲章とも言える。

「1年の結果としては出なくても、ヴォルティスの戦いは見せつけられたと思っています。他のチームにとっても、手本になるような(チームの)作り方をしたなと」

 エースに成長した野村は、そう言って胸を張った。