アメリカ・ニューヨークで開催されている「全米オープン」(8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス4回戦。 サービス速度を示す電光掲示板は、第2シードのアンディ・マレー(イギリス)が141マイル(時速227km)のサービスを…

 アメリカ・ニューヨークで開催されている「全米オープン」(8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス4回戦。

 サービス速度を示す電光掲示板は、第2シードのアンディ・マレー(イギリス)が141マイル(時速227km)のサービスを打ったと世界に告げた。しかし、マレーは疑っていた。

 「ときに、スピードガンが間違っているってこともあり得るよ」

 試合の出だしで10ゲームのうち9ゲームを取ったマレーは、その後、第22シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)を6-1 6-2 6-2で圧倒し、ここ23大会のグランドスラムで、22回目の準々決勝進出を決めた。

 「一度リードを奪ったら、彼に挽回するチャンスを与えなかった」とマレー。主導権をがっちりと握り、それを手放さなかった大きな要因はマレーのサービス力にある。

 「130マイル(時速210km)を超えるサービスをかなり打てたのはよかったよ。今夜はサービスのおかげで多くのフリーポイントを得ることができた」とマレーは言った。「速いサービスを打つには、コンディションが大いに関係してくる。ここのボールは速いから、大会が進むにつれてそれを僕のアドバンテージとして使いたいと思うようになった。ストリングの張りの強さを、前の試合のときよりも少し上げたんだ。たぶんそのおかげで、より強くスイングできるように感じたのだと思う」。  最速サービスに関して、140マイル(時速226km)を超えたのは初めてのことだとマレーは言った。  彼は様々な場面でいいプレーをしたが、ディミトロフからの抵抗がほとんどなかったのも事実だ。ディミトロフは23本のアンフォーストエラーをおかし、第2セットで0-3となった時点で2本しかウィナーを奪えていなかった。  「言うまでもなく、今日の僕はガス欠だったと思う。肉体的にも精神的にもね」とディミトロフ。  マレーはディミトロフとの過去の10対戦のうち、3対戦で負けている。ディミトロフはオールラウンドなプレースタイルとスムーズな片手打ちバックハンドゆえに(小さなロジャー・フェデラーという意味で)『ベイビー・フェド』というニックネームで呼ばれている。ディミトロフのマレーに対する勝利の中には、2014年のウィンブルドン準々決勝、また今年5月のマイアミでの対戦が含まれる。  マレーはここ数ヵ月絶好調であり、全米に先立つ7大会のすべてで決勝に進出している。彼は27試合を戦い、そのうち26試合に勝ち、ウィンブルドンで優勝、リオ五輪でも男子シングルス金メダルを獲得した。  「アンディは今、巷で最強の選手だよ」とディミトロフは言う。  2012年の全米チャンピオンであるマレーが、今一番のっている選手であることは間違いない。彼は水曜日に行われる準々決勝で、第6シードの錦織圭(日本/日清食品)と対戦する。マレーは先月のリオ五輪の準決勝で、錦織を倒している。

 マレーがいるドローのボトムハーフのもうひとつの準々決勝は、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)と2009年全米優勝のフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)が対戦する。故障から復帰してからというもの、破竹の勢いのデル ポトロも今、波に乗っている選手のひとりだ。  マレーが過去6シーズンに出場したグランドスラム大会で準々決勝に進めなかった唯一の大会が一年前の全米オープンで、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)に4回戦で敗れた。  しかし今、マレーは1シーズンの間に4つのグランドスラム大会のすべてで決勝に進出した、オープン化以降4人目の選手となるチャンスを手にしている。マレーは1月の全豪決勝と6月の全仏決勝でナンバーワンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れ、7月にはウィンブルドンで2度目の優勝を遂げていた。  1968年のオープン化以降では、ジョコビッチ(2015年)、フェデラー(スイス/2004、2006、2007年)、ロッド・レーバー(オーストラリア/年間グランドスラムを達成した1969年)だけが、1シーズンに4つのグランドスラム大会のすべてで決勝を戦っている。(C)AP