全てのチームが必死に最大限の力を振り絞って目指してきたもの。今年もそれをつかんだのは堀江友裕主将(スポ4=和歌山・開智)率いる早大だった。全日本大学選手権(全日本インカレ)決勝。早大が対峙したのは東日本大学選手権王者の筑波大だ。5日間の戦…

 全てのチームが必死に最大限の力を振り絞って目指してきたもの。今年もそれをつかんだのは堀江友裕主将(スポ4=和歌山・開智)率いる早大だった。全日本大学選手権(全日本インカレ)決勝。早大が対峙したのは東日本大学選手権王者の筑波大だ。5日間の戦いを勝ち抜いてきた両校の戦いは決勝の舞台にふさわしいぶつかり合いとなった。しかし総合力で上に出た早大がセットカウント3-1(25-16、25-22、23-25、25-19)で筑波大を撃破。その熱い死闘を振り返る。


クイックで魅せた武藤副将(右)

 大観衆がセンターコートを見つめる決勝独特の緊張感の中、試合開始の笛が鳴った。先制点はラリーの末、大塚達宣(スポ1=京都・洛南)がフェイントを決め早大のものに。セット序盤から中盤にかけて早大リードで試合は運ばれるも筑波大の力強いスパイクなどに押され試合の主導権を握ることが出来ない。そんな中、15-11で吉田悠眞(スポ2=京都・洛南)が兄である吉田綜眞(4年)の放ったスパイクを一枚ブロックで仕留めた。すると兄弟対決を制した吉田に早大陣営からは大喝采。このプレーで完全に流れを呼び寄せ、終盤は筑波大を圧倒していく。武藤鉄也副将(スポ4=東京・東亜学園)のクイックで22-16。1点取られるも再度武藤副将のクイック、そして村山豪(スポ3=東京・駿台学園)がネット際の押し合いに勝ちセットポイントに。最後は村山が高校の同級生である坂下純也(3年)のバックアタックをブロックで射止めて第一セットを先取した。第2セット、序盤、中盤と第1セットの勢いそのままに早大が大塚のバックアタックや宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)のスパイクで猛攻。堀江主将のセッターさながらの完璧なトスから宮浦がスパイクを決めきり16-12。もう一度宮浦がスパイクを決めて17点目が早大に入る。ここで2度目のタイムアウトを筑波大に取らせることに成功した。このタイムアウトが功を奏したのか筑波大が追撃を開始。一時は5点まであった点差が21-20と1点まで縮められてしまう。しかし早大が勝負強さをみせた。吉田のクロススパイク、そして観衆を圧倒させる宮浦の連続サービスエースが決まり24点目。2点返されるも逃げ切った早大。セットを連取し、優勝まであと1セットとした。


最後まで声でチームを引っ張った堀江主将

 第3セット、中村が放ったネットインのサービスエースで1点目を獲得。早大ペースに運ばれていくかに思われたが中盤は一進一退の攻防となった。14-14から宮浦のスパイク、吉田のフェイントで一歩前に出た早大。そのまま点差を保ったまま宮浦のスパイクで21-19とした。しかし7年ぶりの王座を目指す筑波大がストレートで負けるわけがなかった。ブロードを含む連続得点で追いつかれてしまう展開に。早大は2度タイムアウトを選択するも相手を止めることが出来ず。小澤宙輝主将(4年)のスパイクで25点目を取られ、セットを僅差で落としてしまった。

 流れを変えたい第4セット。序盤から早大ペースでテンポよく試合が運ばれる。4-2から村山のブロックを含む4連続点で筑波大を引き離した。その後も吉田のトスに合わせた大塚のスパイクや武藤副将のクイックなどで13-5とした。セット中盤はブレークすることはできないものの継続的にサイドアウトを取り続けた早大。堀江主将の必死に食らいついたボールを繋ぎ宮浦がスパイクを決めて20-12に。セット終盤、22-15から重藤トビアス赳(スポ1=神奈川・荏田)そして村本涼平(法4=京都・洛南)が途中出場を果たした。2点返されるも大塚のパイプで23点目。村山の渾身のクイックでマッチポイントに。筑波大も負けじと坂下のスパイクで19点目を返した。しかし最後は宮浦がスパイクを筑波大のコートに落とし込み試合終了の笛が鳴った。真摯にバレーボールに向き合い続けた両チームの対決。軍配は早大に上がった。


勝負強さを見せ続けたチームの主砲・宮浦

 勝つことが当たり前。優勝大本命。ずっとそう思われていた。追いかける目印もなく追われながら首位を独走し続けたこの1年。それでもたどり着いた頂からの景色は重圧に打ち勝ったエンジの戦士たちにしかわからない。第一線でプレーするコートの選手たち。ベンチで指示を出す主務、いつ試合に出ても活躍できるように体を温め続けるリザーブの選手たち。選手の安全を第一に考えるモッパー。観客席で試合を分析するアナリストや、応援部に混ざって声でチームを鼓舞する選手たち。誰を切り取っても同じ役割の選手はいない。しかしながらそれぞれが頂点を目指し全力で戦い、役割を全うしきったことで得た3連覇と言えよう。全日本インカレは武藤副将や宮浦のアクシデントなどすべてが計算通りにできた大会ではない。しかし計算通りにいかなかったからこそ代わりに出た上條レイモンド(スポ2=千葉・習志野)、中島明良(法1=京都・洛南)の活躍が光った。それは来年以降の強さを暗示する大会だったのかもしれない。去年、一昨年そしてその前からずっと耕し続けた土壌に今年も咲いた大きく、そして凛々しく美しい花。そこに実った種は来年どのような花になるのだろうか。

(記事 萩原怜那 写真 松谷果林、友野開登)


 ※掲載が遅れて申し訳ありません

 

セットカウント
早大25-16
25-22
23-25
25-19
筑波大
スタメン
レフト 吉田悠眞(スポ2=京都・洛南)
レフト 大塚達宣(スポ1=京都・洛南)
センター 武藤鉄也(スポ4=東京・東亜学園)
センター 村山豪(スポ3=東京・駿台学園)
ライト 宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)
セッター 中村駿介(スポ3=大阪・大塚)
リベロ 堀江友裕(スポ4=和歌山・開智)

<最終結果>

優勝(3年連続)

<個人賞>

最優秀選手賞 堀江友裕主将(スポ4=和歌山・開智)
スパイク賞  宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)
ブロック賞  村山豪(スポ3=東京。駿台学園)
セッター賞  中村駿介(スポ3=大阪・大塚)
リベロ賞 堀江友裕主将(スポ4=和歌山・開智)

<集合写真>


最高の笑顔で優勝を決めた選手たち

コメント

※4年生のインタビューにつきましては別途記事に掲載しております。

村山豪(スポ3=東京・駿台学園)

――優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちを教えてください

すごくうれしいです。

――きょうの試合を振り返っていただけますか

全員がすごくいいパフォーマンスをできたと思うのでそれが勝ちにつながったかなと思います。

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか

きょうはブロックでチームに貢献できました。

――全日本インカレを振り返っていかがですか

苦しい展開も多かったんですけど、そういった時でも全員が一丸となって戦えたのでそこを乗り切れたのが一番良かったなと思います。

――4年生への思いを教えてください

一個上なので1年生の時から面倒を見てもらった代なので感謝の気持ちでいっぱいですし、いなくなってしまうということで自分たちが最上級生になるのでそういった面では(4年生に)いてほしいです(笑)。

――来年度は最上級生になりますが

来年もこういう舞台に立つためには今以上のチームをつくり上げないと勝てないと思うので、1年間大変なことがいっぱいあると思うんですけど、そういった中でも頑張っていけたらいいかなと思います。

宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)

――今のお気持ちをお願いします

今シーズンの集大成となった全日本インカレで、優勝できたのはもちろん嬉しいですし、この1年間チームに関わってくれた4年生には感謝しています。また、この大会では4年生もそうですし、スタメン、ベンチメンバー、スタッフ、上で応援してくれる人たち、全員で優勝という結果をつかみ取れたと思っています。サポートしてくれた周りに感謝したいです。

――ご自身の全日本インカレでのプレーは

全日本インカレを通して良いパフォーマンスができたのですが、そのパフォーマンスのためにいい準備もしっかりできたのかなと。引き続き、これから来年も大会に向けてしっかりいい準備をして臨めるようにしたいなと思います。

――4年生について

チームの雰囲気が悪くなったり、沈みかけたりしたときに声をかけてくれて、チームを引っ張ってくれる存在でした。そういう人たちがいなくなるので、これからは自分たちが4年生としてもっともっと引っ張っていかないといけないなと思っています。

――上級生としての自覚も芽生えたということでしょうか

そうですね。この全日本インカレでは、特に自分のプレーだけではなく、他の周りを見て後輩を鼓舞してあげるというような意識も段々ついてきたかなと思います。

――来年に向けて

来年は自分たちの代ということで、全日本インカレ優勝というのをまた目標に掲げてこれから1年間しっかり厳しく練習していきたいと思います。来年もいい思いをして終われるよう、頑張ります!

中村駿介(スポ3=大阪・大塚)

――日本一という結果になりました。今の率直なお気持ちを聞かせてください

4年生をいい形で送り出すことができて、本当に嬉しかったです。

――この大事な一戦には、どのような準備をして臨まれましたか

きのうの試合がチームとしてあまりよくなかったので、きょうはどうなるかなという気持ちはありました。しかし相手も向かってくるので、自分たちはそれに負けないよう強い気持ちをずっともってやっていこうという姿勢で臨みました。

――きょうのご自身のプレーはいかがでしたか

きのうよりは、明るく元気に自分の持ち味を出してやれたと思うのでよかったです。

――セッター賞を受賞されましたが、それについてはいかがですか

全然、僕の力で取れた賞ではないと思います。周りのスパイカーがネットの上にトスを上げたら決めてくれる選手ばかりでした。トス自体は全然よくないので、もっと精度を上げて、スパイカーたちを助けることができればと思います。

――引退する4年生への思いや、かけたい言葉はありますか

セッターとしてコートに入った初めての年で、いっぱい迷惑をかけましたし、心配も多くさせました。感謝の気持ちを伝えたいです。

――これからに向けて一言お願いします

一段落ついてから、新チームが始まります。僕ら3年生が4年生になるわけなので、4年生の自覚というのをもって取り組んでいきたいと思います。

上條レイモンド(スポ2=千葉・習志野)

――上條選手にとって早稲田に入ってから2年連続での全カレ優勝となりました。今の率直なお気持ちを聞かせてください

今年のこのチームで全カレを優勝することができて、今すごく嬉しいです。また、去年も今年も4年生に引っ張っていただき、すごくいい経験をさせていただいていることに感謝しています。

――ご自身もスタメンでの出場機会があった今大会ですが、振り返っていかがですか

総力戦で戦っていくなかで、少しでもチームの力になれたのは嬉しいです。これからは、自分がチームを引っ張れるぐらいの選手になりたいなと思います。

――ミドルブロッカーを務めた武藤鉄也選手(スポ4・東京=東亜学園)らが引退となりますが、今後のポジション争いについてはいかがですか

鉄也さんもそうですし堀江さん(友裕主将、スポ4=和歌山・開智)たちが抜けてゼロから新チームを始めていくことになります。そこで自分らしいプレーをして、スタメンを目指したいので、頑張ります。

――4年生にかけたい言葉はありますか

本当に、ありがとうとお疲れ様という言葉です。

――これからに向けて一言お願いします

これからまた、すごくプレッシャーがかかってくる状況に置かれると思います。その中での勝ち方を考え、チームづくりをしていかなればなりません。それでもそれに埋もれず、今年のチームで学ばせていただいた自分らしさというのを新チームでも発揮して、自分たちのよさを出していきたいです。

吉田悠眞(スポ2=京都・洛南)

――優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちをお願いします

自分が4番の村本さん(涼平、法4=京都・洛南)が怪我をしたことで代わりにコートに入ったことで、負けるんじゃないかっていう不安もあったんですけど、こうやって優勝することができて、自分の実力も通用するんだと思いましたし、本当によかったです。

――村本選手は吉田選手にとってどのような存在でしたか

洛南高校からの先輩でもあり、リーグ中も自分が崩れた時はアドバイスをしてくれるようなお兄ちゃんのような自分にとっては大きな存在だったので、村本さんのためにも勝利で恩返しできるようにとプレーしました。

――今日のご自身のプレーを振り返っていかがですか

ところどころ詰めの甘いプレーもありましたが、気持ちを込めてプレーができたので自分としてはよかったと思っています。

――筑波大の兄、吉田綜真(4年)選手との兄弟対決が実現し、綜真選手のスパイクをブロックで止める場面もありました。兄弟対決振り返っていかがですか

途中に(兄が)出てきてちょうどマッチアップしていたので、いったろと思いました。早稲田のバレーとしてはコミットブロックはあまりよくなかったんですけど、ここは勝負をかけようと思った結果、見事に止めることができて、チームとしても流れをつかむことができましたし、兄弟対決も一本目を制することができたので、本当に気持ちよかったです。

――全カレを通して素晴らしい活躍でした。今大会を振り返っていただけますか

攻撃面に関してはセッターの中村さん(駿介、スポ3=大阪・大塚)のお陰で活躍させていただくことができたんですけど、まだまだ自分の磨くべきところであるディフェンス面を今後磨いていけたらなと思います。

――今後はチームを引っ張って行く立場になると思います。次のチームへ向けて一言お願いします

これから後輩たちもいい選手が入ってきますし、その選手たちに負けないように自分も日々努力を積んで、コートの中で今度は自分が支えられる存在になれるように頑張っていきたいと思います。

大塚達宣(スポ1=京都・洛南)

――優勝おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください

最後4年生に勝ってほしかったので勝ててすごく嬉しかったです。

――1年このチームでプレーしてきていかがでしたか

4年生にたくさん教えてきてもらったのでその4年生がいなくなると思うと少し寂しい気持ちはありますが、教えてきてもらったことを忘れずにこれからも頑張りたいと思います。

――早稲田は「常勝軍団」と言われてきましたが、そこに対してのプレッシャーはありましたか

チームとしてプレッシャーはあったと思いますが僕はのびのびとプレーできたので、その環境を作ってくれた先輩方に感謝しています。

――強さの要因はどこにあると思いますか

やっぱりコツコツと基礎をやってきてそれができていたので、そこは良かったのではないかなと思います。

――きょうの試合の内容に移りますが、決勝戦を振り返っていかがですか

きょうは1セット取られましたが焦らず自分たちらしいバレーができたと思うので良かったです。

――きのうは「決勝では楽しみたい」とおっしゃっていましたが、きょうは楽しめましたか

きょうは最後の試合だったので楽しめました。

――相手チームに高校時代ともに戦ってきた垂水(優芽、1年)選手がいましたが、意識していましたか

意識していましたが、自分は自分のやれることをしっかりやろうと思っていました。

――1、2セット目は好調でしたが3セット目は苦しい展開になりました

苦しいところも出てくるし簡単には勝たせてもらえないと思っていたので、取られたとしても4セット目は気持ちを切り替えて勝てたことはすごく良かったと思います。

――優勝が決まった瞬間はいかがでしたか

4年生にありがとうという気持ちでいっぱいだったので泣きそうになりました。

――6連戦で精神的にも体力的にもきつかったとは思いますがいかがでしたか

戦い抜けたことが自信になったので、来年4年生が抜けても自分が引っ張れるように頑張りたいと思います。

――大塚選手自身この1年を振り返っていかがですか

いろいろな試合がありましたがやっぱりこの優勝はすごく大きかったと思いますし、コートに入られてもらっていい経験をさせてもらったと思います。この経験を来年度も活かせるように頑張りたいです。

――ともに戦ってきた4年生に向けて

ありがとうだけです。

――新チームでの活動に向けて意気込みをお願いします

次は学年も一つ上がるので自分の役割とかも変わってくると思います。今はチームに助けてもらいながらというところはあったのですが、来年度は自分がもっと引っ張っていけるように頑張ります。