ベスト4の壁――。ここまで強敵を倒し、勝ち進んできた小野寺雅之(スポ3=埼玉栄)・岡村洋輝(日本ユニシス)組、緑川大輝(スポ1=埼玉栄)・齋藤夏(ACTSAIKYO)組だったが、全日本総合選手権(総合)の準決勝はやはり甘くはなかった。両ペ…

 ベスト4の壁――。ここまで強敵を倒し、勝ち進んできた小野寺雅之(スポ3=埼玉栄)・岡村洋輝(日本ユニシス)組、緑川大輝(スポ1=埼玉栄)・齋藤夏(ACTSAIKYO)組だったが、全日本総合選手権(総合)の準決勝はやはり甘くはなかった。両ペアともに高パフォーマンスを見せたが、1ゲームをとることもかなわず、3位入賞で今大会を終えた。

 小野寺・岡村組の準決勝は昨年と同じカードとなった。相手は遠藤大由・渡辺勇大組(日本ユニシス)。レシーブ力のあるペアに対して、どこまで攻撃が通用するかがポイントとなるが、小野寺がサーブレシーブで主導権を握り、連続スマッシュでまず1点を奪う。前衛の小野寺が速いタッチでゲームメイクをし、岡村も相手の鉄壁の守りに負けじとスマッシュを放ち、7-7。強敵相手にも引けを取らない。しかし、長いラリーの連続に「疲れてしまって単発なミスが連続してしまいました」と小野寺が語ったように、ミスが重なり逆転を許し、このゲームを落とした。続く第2ゲームは相手ペアも本領を発揮。精度の高いドロップなど相手の高い技術に対応できない。スマッシュで打ち抜く場面もあったが、12-21でゲームセット。


準決勝では小野寺の前衛が光った

 結果だけ見れば昨年と同じストレート負けだが、「自分たちのパフォーマンスは出せた」と小野寺、岡村ともに試合を振り返った。準決勝という雰囲気にのまれて圧倒されてしまった前回大会。国際大会で経験を積み、今年は充実した試合内容となった。それは点数にも表れている。この1年で大きな成長を遂げた小野寺・岡村組。今大会の手ごたえと課題を携え、来シーズンに挑む。


 一方、予選から出場し、準決勝まで勝ち進んだ緑川・齋藤組が対戦したのは、渡辺勇大・東野有紗組(日本ユニシス)。3度目の頂点を狙う強敵だった。挑戦者としてどこまで立ち向かえるかが注目される中、「自分たちらしいプレーを出せた」と二人が振り返るように相手に全力で挑み、収穫のある試合内容となった。


スマッシュを返球せず、ゲームセットを迎えた緑川(左)・齋藤組

 先制点を奪うが、流れに乗れない第1ゲーム。初めての対戦となる渡辺のスマッシュに対応できず、なかなか得点につなげられない。しかし、「イレブンを終えた後から緊張がほぐれた」(緑川)と語るように、徐々に感覚をつかみはじめる。緑川の連続スマッシュから相手のミスを誘う場面もあった。このゲームを奪われたものの、相手に劣らないプレーを見せた。第2ゲーム序盤は、相手の球にうまく対応し、競った展開となる。ラリーで粘りを見せ、齋藤が手前から鋭く打ち込み点を重ねる。しかし、話し合いをしたという渡辺・東野組は、それぞれ攻めの姿勢を見せ、点差を広げていく。相手のコンビネーションの良さが光り、得点を思うように点を奪えず、13-21。ストレート負けを喫したが、強敵相手に自分たちのプレーを全力で出し切った。世界トップクラスのプレーを間近で受けられたことは、緑川・齋藤という若きペアにとって大きな刺激となったに違いない。


 敗れはしたものの、自分たちのベストパフォーマンスに近い力を出し切った二組。全日本総合選手権でベスト4に入ることは、A代表選出基準の1つとなっている。ここまで勝ち進んだこと自体特筆すべき点である。それだけでなく、準決勝という大舞台でも自分たちの持てる力を出し切り、『気持ち』の強さを見せた。世界のトップ選手の実力を肌で感じる機会はそう多くはない。この経験を生かし、来年からの活躍につなげたい。

(記事 山本小晴、渡邉彩織 写真 石名遥)


表彰式に参加した小野寺・岡村組

結果

▽男子ダブルス

小野寺雅之・岡村洋輝●0-2(15-21、12-21)遠藤・渡辺(日本ユニシス)



▽ミックスダブルス

緑川大輝・齋藤夏●0-2(15-21、13-21)渡辺・東野(日本ユニシス)



コメント

小野寺雅之(スポ3=埼玉栄)・岡村洋輝(日本ユニシス)※囲み取材より抜粋

――準決勝を振り返って

小野寺 昨日よりかは自分たちの持ち味のプレーができたかなと思います。でも、まだ世界のトッププレーヤーとやるには、自分たちは何かをやっていかないといけないと実感しました。

岡村 きょうは結構自分たちのプレーが出せたと思うんですけど、世界のトップ選手なので、ちょっとしたミスが相手よりも多くてそこの差が点数に出ているのかなという感じです。そこが課題であって、これからはちょっとしたミスを減らしていけば上の選手ともやれるのかなと思います。

――昨日よりも良かったというのは具体的に

小野寺 きょうは気持ち的にも向かっていくだけだったので、昨日みたいな気持ちはなくて。お互いに失うものはなかったので、自分が前に入れたのが良かったところだと思います。あとは長いラリーになったときに、世界のトッププレーヤーはその次のラリーもしっかりできているんですけど、自分たちは疲れてしまって単発なミスが連続してしまいました。それで後半離されちゃったのかなと思います。やっぱり今後の課題はそのあたりなのかなと思います。

――遠藤・渡辺組は同じ所属の先輩ですが、どのあたりから切り込んでいこうというのはありましたか

岡村 本当にレシーブ力がずば抜けていて、簡単には絶対決まらないので、低い展開で、レシーブ展開を減らして、前衛に触らせてできるかが勝負だったかと思います。でも相手の方がうわてでした。

――改めて今年の総括と来年の抱負を教えてください

小野寺 総合は去年と同じベスト4だったんですけど、国際大会とかで去年より結果とか良いパフォーマンスが出せたので、やっぱり来年はさらにその上を二人で話し合ってやっていけたらと思います。

岡村 今年は上の相手にも自分たちの力が出せれば戦えるというのが分かった年だったので、来年はその上の人たちにずっと勝てるように。良いパフォーマンスを維持できるように、あとはフィジカルだったり技術だったりを向上できるようにしたいと思います。

――来年の目標ですが、具体的には

岡村 ナショナルの活動で言えば、もっともっとベスト4以上とか、常にそれを維持して、ランキングを上げていきたいです。それで国内でも、ランキングサーキットも、総合もベスト4なので、それ以上を目指していきたいと思います。

小野寺 今年が結構オリンピックレースですし、自分たちのレベルの大会にも上の選手が出ていて。良いチャンスを逃さずに、自分たちのプレーがどこまで通用するかをチャレンジャーの気持ちでやりました。その中でも勝てたり、良いところまで粘れたり、良いものを得られたらと思います。

――上の人と対戦するときにここを磨きたい、というのは

岡村 今年1年はずっとレシーブ練習をしてきたんですけど、まだまだ上のプレーヤーは攻撃力があって、力がすごいのでもっとフィジカルを強くして、技術的には、サーブ周りとかスマッシュのミスだったりちょっとしたミスを1個でも減らしていくことが大切かなと思います。

――1年前も対戦されましたが、比べていかがですか

岡村 去年は雰囲気にのまれたというか、今年は去年に比べればましだったと思います(笑)。

――今年は序盤から攻撃ができていたと思います。萎縮することなくプレーできた要因は

岡村 それこそ去年は萎縮して悔しい思いを経験しているので。本当に出だしにいかないと、相手の方がうわてなので、余裕を持たれたら簡単にやられてしまいます。二人でも共通して意識していたので、そこが去年とは違うところで、よく戦えたところだと思います。

小野寺 去年は初めてベスト4に入って、本当に準々決勝とは違った雰囲気で、何も分からずただ試合に臨みました。去年の反省を生かして今年はもうその雰囲気にのまれずに、お互いに序盤から二人で声を出そうと言っていたので、それが気持ちのリラックスにもなりました。序盤は相手にくらいつけたかなと思います。

――序盤から攻撃を仕掛けていましたが、サーブ周りで意識したことは

小野寺 サーブ周りは結構ミスしてしまいましたね。相手がうまいので、上げずにやって、でも上げられても、相手のレシーブが固いので、自分たちがどう戦っていくかというのを考えました。相手の方が上なので、低い展開の方がまだやりあえるかなと二人で考えて、そっちのプレーで最初は臨みました。

――きょうはいつもベンチにいる早川賢一コーチ(日本ユニシス)が不在で、その分お二人で客観視することになったと思います。その点に関しては

小野寺 いつもはコーチに言われるんですけど、いない分お互いに言い合えるというのも良いと思います。そういう関係も大事だと思うので。言われてやるんじゃなくて、プレーしている二人にしか分からないこともあると思うので、そこはインターバル中に話し合えたので良かったと思います。

――全力を出せて100だとしたらきょうはどのくらいですか

小野寺 100はいかないくらいですね。80くらいかな。自分たちのパフォーマンスは出せたかなって感じです。

――残りの20は

小野寺 20も出せていたらもっと18くらいまでいけたと思います。まだまだ中堅で、トッププレーヤーになるとまだフィジカルが足りないのかなという感じです。


緑川大輝(スポ1=埼玉栄)・齋藤夏(ACTSAIKYO)※囲み取材より抜粋

――試合を振り返って

緑川 自分たちの中では自分たちらしいプレーを出せたのかなと思っているので、悪くなかったかなと思います。

齋藤 みどり(緑川)と同じなのですが、自分たちらしくプレーできたし、ラリーも頑張って付いていけたかなと思います。

――追いつきたいペアと試合してみた印象は

緑川 ミスの少なさや、一本一本の質とかも全然違ったので、もっと球の質とかを上げていかなくてはいけないなと思いました。

――今シーズンは国際大会で優勝するなど躍進しましたが、今後の目標を教えてください

齋藤 まずはナショナルチームに入ることと、海外の試合では安定して試合できるようにすることが目標です。

――ベスト4という結果については

緑川  棄権などもあって多少運が良かったというのもありますが、そこでしっかりベスト4に入れたというのは、いい成果だったのではないかと思います。

――どこに自分たちのプレーが出せましたか

緑川 最初は相手に攻められる形が多かったですが、イレブンを終えた後から緊張が少しほぐれて、二人で前にどんどんいけたのかなと思います。あまり悔いなく楽しくプレーできたのではないかなと思います。低い展開で相手を突いていけたりしました。

齋藤 決まった時はうれしかったです。

――どのへんが出せましたか

齋藤 コンビネーションとかもうまくできたと思います。レシーブ面で比べてしまうと全く返せていなくて、自分が最後決められてしまう場面が多かったのですが、そこでもうちょっと返せるようになれば、どんどんレベルが上がっていくのではないかなと思います。

――相手のすごさをどんなところに感じましたか

緑川 何気ない球だったりとか、つなぎの球なのにコースが良かったりとかして。浮いてこなかったり、全てのクオリティが高かったと感じました。

齋藤 スピード面やフィジカルも全く違って。そこにもうちょっと食らいついていけたらなと思いましたし、自分たちももう少しスピードをつけて、コンビネーションがうまくできればいいんじゃないかなと思いました。東野さんは飛びついてまで前で打ちますし、(カバーする)範囲が広くて、そこは本当にすごいなと思いました。

――日本の混合ダブルスの2番手を狙っていくという自覚はありますか

緑川 そうですね。追いつけ追い越せじゃないですが、 2番手になって、そして一番手目指してやっていきたいなと思います。