12月の天皇杯全日本選手権(天皇杯)出場に向けてラストチャンスである東日本学生秋季選手権が行われた。出場したのはグレコローマンスタイルの野本州汰(スポ3=群馬・館林)、フリースタイルの坂井剛光(社3=福岡・小倉商)、そして約1年ぶりの復帰…

 12月の天皇杯全日本選手権(天皇杯)出場に向けてラストチャンスである東日本学生秋季選手権が行われた。出場したのはグレコローマンスタイルの野本州汰(スポ3=群馬・館林)、フリースタイルの坂井剛光(社3=福岡・小倉商)、そして約1年ぶりの復帰となった梅林太朗(スポ3=東京・帝京)の3人。結果は梅林がブランクをはねのけ優勝。天皇杯への切符を掴んだ。野本は惜しい準優勝。坂井は強敵相手に苦戦し1回戦敗退となった。

 昨年の天皇杯以来の大会となった梅林。本来の階級は74キロ級だが、復帰戦ということを踏まえて79キロ級での出場に決めた。そのようななかで行われた初戦、気合い溢れる表情でマットに向かった。足への低いタックルを武器に相手の体勢を確実に崩しにかかる。開始1分で足を掴むとテークダウンを決め、ローリングも成功させた梅林は初戦をテクニカルフォールで勝利した。続く準決勝もテクニカルフォール勝ちを収め、快調に決勝へと駒を進める。迎えた決勝。これまでの2試合ほどは圧倒させてはもらえない試合展開となった。第1ピリオドから足への低いタックルを繰り出すもなかなか相手の懐に入れてもらえずパッシブの1点のみで折り返す。しかし、第2ピリオドでは開始30秒でテークダウンを決めると場外ポイントとローリングで着実に点差を離した梅林は、堅い守りで失点を許さず6−0で勝利。全試合無失点で白星を挙げた。「自分のスタイルで勝てて自信になりました」と試合後話した梅林。テークダウンをしっかり決めた姿からは約1年のブランクを全く感じさせなかった。


毎試合テークダウンをきっちり決めた梅林

 グレコローマンスタイル72キロ級で出場した野本は準決勝からの出場となった。先にパッシブを献上したが、場外ポイントを手にしさらに1点を追加して3−1で折り返した。「結果的にいつもやっているシチュエーション通りになって点数を重ねることができたので、それを守り抜けて良かったなと」と述べたように2点差を守りきった野本は決勝進出を果たした。天皇杯出場へあと1勝。第1ピリオドでは優位に試合を進め場外ポイントで2点獲得。「組み手では負けてなかったと思う」と第1ピリオドでの戦いを振り返った野本。順調に折り返したように見えたが、第2ピリオド開始30秒でパッシブを献上するとそこから相手のテークダウンとローリングを防ぎきれず得点を重ねられてしまう。最後には4点の大技を決められてしまいテクニカルフォール負け。天皇杯出場はならなかった。パッシブのときの守りについて「今後の課題です」と口にした野本。今年最後の大会は悔しい準優勝となった。また、フリースタイル57キロ級で出場した坂井は、終始相手の攻めに守りきれず失点し続け、攻めに転じることもできず敗北。無念のテクニカルフォール負けとなった。


組み手ではまさっていた野本。パッシブからとられてしまった。

 今大会で梅林が優勝し、早稲田からは14人の出場が決まった。最高学年の4年生は全員天皇杯の出場を決め学生として最後の戦いに臨む。約1ヶ月後今年最後の大会を迎える早稲田チーム。今年は全日本学生選手権で7人の入賞、全日本大学選手権では総合2位など躍進を遂げた。この調子のまま大舞台でもそれぞれが有終の美を飾ることができるか。

(記事 北﨑麗、写真 鬼頭遥南)


優勝した梅林(左)と準優勝の野本(右)

結果

▽男子フリースタイル

57キロ級

坂井 1回戦敗退

79キロ級

梅林 優勝

▽グレコローマンスタイル

72キロ級

野本 準優勝


コメント

梅林太朗(スポ3=東京・帝京)

――優勝おめでとうございます!

ありがとうございます!

――約1年ぶりの大会でしたが、まず今大会の位置づけは

僕元々74の選手なんですけど、怪我をして、正直この大会すら無理して出るくらいの時間のかかる怪我だったので、減量も含めるとやっぱり本来のパフォーマンスができないから、一個上の五輪非階級の79キロ級で。あと、年間を通して一番レベルが低い試合でもあり、僕の復帰としてはもってこいのタイミングと大会規模だったので。どうしようかなと思ったんですけど、悩んでも怪我が早く治るわけでもないので、この大会に出場して天皇杯で優勝するという目標をたてて、8ヶ月前から準備してきたことが今回発揮できたかなと思えた大会でした。

――試合前のコンディションはいかがでしたか

正直1年近く大会出てないし、実戦も半年以上離れていたので、不安が一番大きかったんですけど、でもやっぱりレスリングをすることでしかその不安は取り除けないので、怪我だけ悪化しないように。チームすごく強くなってきててそんななかで自分も強くならないといけないので、毎日同じ相手とやってると技もバレてきたりしますし思い通りにいかないことが多くて正直このままでいいのかなって思うことがコンディション的にあったんですけど、まあまずは自分のレスリングスタイルをこの大会でできたらいいなと。気負いすぎずやって結果的に無失点で試合終えれたので、自分的には予定通りでした。

――無失点で終えたということは大きかったですか

自分のなかで最低限無失点という目標がありました。点をとられると怪我が悪化したり再発したりするリスクがあって、足を掴まれない=無失点につながると思ったので、攻めのレスリングが自分のレスリングだからそれを発揮できて良かったです。2回戦の国士舘の相手とか決勝でやった相手は天皇杯でも通用する相手なので、今大会それで無失点で、自分のスタイルで勝てて自信になりました。

――テクニカルポイントを重ねられたという攻撃面についてはどのように思われましたか

どのスポーツでもそうですけど、点とった方が勝つ、とられなければ負けないというのが分かりやすいので。フォールするのがレスリングですけど、そこまでの実力差はなかったですし、自分のレスリングっていうのはタックルしてテークダウンをとるというスタイルで、まあそれをやっただけなので。今回自分の力がどの程度通用するかという意味ではテクニカルフォール、テクニカルポイントとれたというのは自信になったし今後の課題の材料にもなったかなと。

――試合前や試合中、緊張感はありましたか

僕普段あんまりなくて、緊張感自体はなかったです。のびのびできたんですけど、まあ適度の集中とやっぱり本調子じゃないことからの不安はあって、膝の動きが良くないときもあったので、そこを修正できたらいいかなと思いました。

――最後に天皇杯へ向けて意気込みをお願いします

その大会が終わったら本当に自分が一番上の学年になるので、チームの大黒柱としてしっかりやっていけるように。かつやっぱり今年2試合しか出られないので、79の階級ですけど最後しっかり日本の一番になって今年終えられたらいいなと思います。

野本州汰(スポ3=群馬・館林)

――今大会の位置づけは

全日本に出場するためには結構意味合いが大きい試合だったので、そういったなかであと1本のところで、春もそうだったんですけど、とりきれなくて悔しい結果でしたね。

――準決勝についてお伺いします。準決勝での戦いを振り返っていただけますか

準決勝に関しては、相手が結構トリッキーな選手だと思っていたので、変に自分がガツガツ攻めていってバテて相手にミスを誘われるよりも、どっちかといったらこのルール上でいうと、1回は向こうにパッシブがくるけどそれを守り抜いたら今度は自分がパッシブくるので、そこで点数をとろうかなと思っていました。結果的にいつもやっているシチュエーション通りになって点数を重ねることができたので、それを守り抜けて良かったなと思います。

――次に決勝についてお伺いします。第1ピリオドを2点のリードで折り返しましたが、そのときの戦いを振り返っていただけますか

自分の中でできるだけのことができたなと。組み手では負けてなかったと思うので、第1ピリオドでは相手のミスを上手く自分の点数にできたのがあって、でも第2ピリオドについては相手にあげちゃって。相手も結構体大きかったんですけど、守りきれなかったというのがやっぱり今後の課題ですね。

――これから身につけたい勝ち方や戦い方はありますか

まずは自分の勝ち技やパターンをつくりたいです。でもそれを思っていても難しいので、もっと筋力づくりを。あと今回全員左の選手だったんですよ。左の選手で戦い方が全然違くて、いつも右の選手とやっているので、もっと応用が利くような戦い方をしていきたいです。