「プレーそのものはベストではない。でも、我々はリーガでも、チャンピオンズリーグ(グループリーグ)でも首位にいる。もう少し我慢してほしい」 チャンピオンズリーグの第4節。スラビア・プラハと本拠地カンプ・ノウでスコアレスドローに終わったあと、バ…

「プレーそのものはベストではない。でも、我々はリーガでも、チャンピオンズリーグ(グループリーグ)でも首位にいる。もう少し我慢してほしい」

 チャンピオンズリーグの第4節。スラビア・プラハと本拠地カンプ・ノウでスコアレスドローに終わったあと、バルセロナのDFジェラール・ピケは語っている。

 今シーズンのバルサは、かつてのような「ボールの主」と言われる試合を体現できていない。パスが速いテンポでつながらず、攻撃はノッキング。スラビア・プラハ戦も、ボールは支配するものの、敵陣深くになかなか入れなかった。リオネル・メッシが中盤に下がってボールを受け、パス出しをするが、距離の長いパスを読まれてカットされた。

「メッシと(アントワーヌ・)グリーズマンは断線」

 スペインの大手スポーツ紙『マルカ』は、両スターの調和がないことを指摘。2人だけではなく、各選手をつなげる線が途切れている状況と言える。個人で打開するしかないありさまだ。

 スラビア・プラハ戦後、バルサはリーグ戦でセルタ、レガネスにどうにか連勝。勝利で批判を封じ込めたが、内容は伴っていない。

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アントワーヌ・グリーズマンとのコンビネーションの欠如が指摘されたリオネル・メッシ

「バルサは日々、フロレンティーノ・ペレス会長のレアル・マドリードに近づいている」

 かつてバルセロナの育成組織「ラ・マシア」で育ち、ジョゼップ・グアルディオラ監督時代にトップデビューしたマルク・クロサス(すでに引退)はそう皮肉っている。「金満クラブになって、有力選手を買い集めているだけ」という批判だろう。

 実際、クラブはフィリペ・コウチーニョに約165億円、ウスマン・デンベレに約130億円、フレンキー・デ・ヨングに約120億円、アントワーヌ・グリーズマンに約150億円と、選手獲得に湯水のように金を使っているが、その成果は相応には出ていない。

 一方、その影響でラ・マシアの有望な若手選手は活躍の場を失うことになっている。

 バルベルデ監督は就任以来、プレーのインテンシティを重視。アルトゥーロ・ビダル、ネウソン・セメドのようなフィジカルの強い選手を重用し、4-4-2でダブルボランチを組ませる戦闘的スタイルを採用してきた。2017-18シーズンを最後にアンドレス・イニエスタが退団したことによって、その流れは決定的になった。

 この変化も、ラ・マシアの若手を苦しめている。

 4-3-3の伝統を守ってきたラ・マシアでは、たとえば「4番」はプレーメーカーがつけるナンバーである。グアルディオラを筆頭に、シャビ・エルナンデス、イニエスタ、セスク・ファブレガスなどがその系譜にあたる。そのポジションはポゼッションを掲げるバルサにとって、プレーの土台だった。

 しかしその中盤でさえ、今や有力外国人選手に”占拠”されている。オランダ代表デ・ヨング、ブラジル代表アルトゥール、クロアチア代表イヴァン・ラキティッチ、チリ代表ビダルが同じポジションにいるのだ。

「もしトップチームでの出場機会が得られないなら、(移籍の)決断をしないといけない」

「4番」の系譜を継ぐMFリキ・プッチも、不満を露わにしている。

 プッチは有力外国人選手たちと比較し、総合力では及ばないだろう。コンビネーションを生み出す能力は高いが、小柄で経験も乏しく、まだ切磋琢磨する必要がある。しかし、メッシやセルヒオ・ブスケッツなどラ・マシア組とプレーすることで、その可能性は無限に広がる。かつてシャビやイニエスタがいることで、メッシやブスケッツが感化されたように、だ。

 同じくラ・マシア出身のMFカルラス・アラニャ-も、冬のマーケットでの移籍を示唆している。10代で”ミニ・スタディ(昨シーズンまでのバルサBのホーム)のマラドーナ”と言われたファンタジスタ。昨シーズンはトップチームで17試合に出場するも、今シーズンは開幕戦で先発したあと、ほとんど出場機会を得られていない。すでに21歳だ。

 バルベルデへの不信感は募る。

 次期監督候補には、ロナルド・クーマン、マルセロ・ガジャルドの名前が挙がっている。いずれも名将のひとりと言えるだろう。しかし、現在はそれぞれオランダ代表、リーベルプレートを率いる指揮官だ。

 そもそもクーマンはトラブルメーカーとしても知られ、性格が偏屈すぎると言われる。かつてのルイス・ファン・ハールと同じ混乱を生む可能性もある。一方、ガジャルドは同胞であるメッシのお気に入り。2019年のFIFA最優秀監督賞にもノミネートされている。その線は消えていないが、同じアルゼンチン人監督、タタ・マルティーノはバルサで惨憺たるありさまだった。

「12月にガジャルドはバルサの監督になる」

 アルゼンチンの名将クラウディオ・ボルギが暴露し、一時は騒然となったが……。

 ただし、バルサがバルサであり続けるためには、やはりシャビ・エルナンデスの監督としての復帰が待望されている。

 シャビは今年5月末から選手として所属していたアル・サッドで監督業をスタート。アジアチャンピオンズリーグでは、準決勝で惜しくも敗れた。しかしそのサッカー論は飛び抜けて優れており、カタール代表は2019年アジアカップで優勝するなど、その影響は同国のサッカー界全体に及んでいる。

 英雄の帰還が待ち遠しい。それがバルサファンの素直な気持ちなのだろうが……。
 
 11月27日、チャンピオンズリーグ第5節。バルサは本拠地カンプ・ノウでドルトムントとグループ首位をかけて戦う。