伝統の一戦が今年も開催された。72回目を迎えた早慶対抗定期戦(早慶戦)は、多くの両校OB、OG、さらには応援部の歓声が飛び交う独特の雰囲気の中で盛り上がりを見せた。男子種目は主力メンバーを海外遠征で欠く中で、男子エペが劇的勝利。だがフルー…

 伝統の一戦が今年も開催された。72回目を迎えた早慶対抗定期戦(早慶戦)は、多くの両校OB、OG、さらには応援部の歓声が飛び交う独特の雰囲気の中で盛り上がりを見せた。男子種目は主力メンバーを海外遠征で欠く中で、男子エペが劇的勝利。だがフルーレ、サーブルが敗北を喫し、25年ぶりの準優勝に終わった。女子は3種目ともに奮闘し、すべての試合で勝利。早大は総合優勝を収めることができた。

★男子エペ、主力不在も歓喜の白星!

 早慶戦の初戦は男子フルーレ。開始直後こそ点差をつけられたものの、第3試合の中埜匡貴(創理4=東京・早大学院)が逆転に成功。相手のコントルアタックにタイミングを合わせて迎撃し、リードを奪う。両校の実力が拮抗(きっこう)し、終盤までは2、3点の差という競り合う試合展開に。そのため、早慶の応援団をはじめ、OB、OGの声援も熱を帯び始める。最終戦はその声援に応えるかのような白熱したものに。開始直後、竹田陸人(社5=神奈川・法政二)は、ここまでの点差を縮め、同点に迫る気迫のプレイをみせた。ところが相手の鋭いアタックに連続失点をくらい、チームは惜敗した。
 続く女子フルーレは対照的に序盤から差を広げることができた。第1戦の溝口礼菜(スポ3=千葉・柏陵)は軽快なフットワークを武器に、5得点無失点の完璧な立ち上がりでチームに勢いをもたらした。その後も相手に点をなかなか取らせず、試合結果は45対13の圧勝。全員の活躍で大差をつけての勝利になった。中でも遠藤里菜(スポ3=群馬・高崎商大付)は3試合を終えて15得点2失点の大活躍を見せた。


3周り目で猛攻を見せた金髙(右)

 3種目目は主要メンバーが海外遠征でいない中、迎えた男子エペ。「序盤にできるだけ点数を稼ごうという作戦」(十河)も、第2戦までに8点差をつけられる厳しい展開に。ここで試合の流れを大きく変えたのは金髙大乘(社1=香川・高松北)だった。相手の爪先を突く技術が光ることもさながら、しゃがみこんでの突きや近距離戦でのダイナミックな動きで点を量産した。剣先の精度も抜群で、相手を翻弄(ほんろう)。この第2戦で金高は同時突きを含む7連取で流れを一気に引き寄せた。ルーキーの活躍に上級生の竹田と十河昌也(スポ4=香川・三本松)それぞれが応える。普段はフルーレが専門の竹田はリザーブとして2巡目から参戦すると、落ち着いた攻めで少しずつ点差を広げた。最終戦では相手の追い上げを抑えて、十河が確実にリードを守りきった。こうして、下級生の活躍と上級生の奮起で、早慶戦の山場を見事乗り切った。金髙の活躍は、試合後にチームメイトの十河から「今日のMVP」と評されるほどの奮闘だった。

(記事 大貫潤太、写真 本野日向子)

★女子種目健闘。男子は負け越しが決まる

 早慶戦も折り返しを迎え、4試合目は女子エペ。序盤から両者拮抗(きっこう)した状態が続いた。試合が動いたのは、第5セット。「向こうの早周り、3番手が当たるときに、点を取れるなら取りたい」(村上夏希、スポ3=三重・津東)と、チームの作戦通り試合は運んだ。駒場みなみ(スポ3=富山西)が、シングルでの得点を重ね、5点差を付けることに成功。このままの勢いに乗り、村上夏も影山野希花(政経1=東京・早実)もリードを維持した。続く第8セットで、村上夏が今年の全日本選手権優勝者の原田紗希(慶大)を相手に大健闘。序盤は両者にポイントが積み重なったが、後半は村上夏の猛攻で、大きく相手を突き放す。早大の勝利を確信させる試合内容となった。最後周りの駒場も手堅く得点を重ね、最終的に、45−32。点差を大きく付けての勝利となった。


男子サーブルの敗北が決まり、悔しい表情の小山(左から4人目)

 続いて、最終種目サーブルがスタートした。男子サーブルの勝敗は、早大の優勝に関わる重要な試合。出だしから、取っては取られてのシーソーゲームが続いた。その中で、小山桂史(スポ3=東京・クラーク)のプレーが光った。第2、6セットで登場した小山は、大量得点を重ねチームに貢献。しかし、終盤から徐々に相手のペースに。第7、8セットを早大がプラスで回すことができず、2点ビハインドで最終セットを迎えた。小山のスピードのある斬りで、4連取し逆転に成功。だが、「4点までは取れたのですが、この後どうするんだろうという感じがありました」(小山)と、この不安が試合の明暗を分けることに。最終的に、慶大に逆転を許し、惜しくも敗れることとなった。早慶戦の最後を締めくくるのは、女子サーブル。今大会は、早大の女子サーブル4年生にとっての引退試合でもあった。「今日はみんないいところしかなかった」(木村結、社4=山口・柳井学園)と振り返るように、早大は圧倒的な強さが見られる試合展開を繰り広げる。第1、2セットでテンポよく得点を重ね、早大は序盤から主導権を握った。第3セットで村上万里亜(スポ2=愛媛・三島)が完封勝ちし、チームをさらに勢い付ける。選手全員が全ての試合をプラスで回し、40−11と十分すぎるほどの点差を付けて最終セットへ。木村は勢いのある攻めで勝利し、今季、そして、フェンシング生活最後の試合を笑顔で締めくくった。

(記事 本野日向子、写真 小原央)

 今年も総合優勝を決めた早大。近年、力をつけ始めている慶大相手に堂々の試合を展開し、盛り上がりを見せた伝統の一戦となった。その中でまさかの準優勝に終わった男子部。フルーレ、サーブルともに僅差での敗北だっただけに、悔いが残る結果だった。特に男子サーブルは関カレのリベンジを許した形に。「気持ちのコントロールが非常に難しかった」と小山が振り返るなど、試合に集中しきれなかった部分もあった。男子種目は、主力の多くが最上級生で構成されている。鹿児島の地では、来年につながる戦いぶりを見せたい。女子種目はエペが関カレでの雪辱を晴らす快勝を収めた。フルーレ、サーブルも遺憾なく実力を発揮することができ、伝統の一戦は充実したものとなった。次の大会は、今年最後の大会となる全日本選手権(全日本)団体戦。学生、社会人チームが入り混じった、混戦が予想される。その中で早大が目指すは、好結果と同時に「できることをやり切る」(村上夏)ことだろう。結果以上の内容を残し、1年の締めくくりを果たす。

(記事 小原央)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

総合優勝 早大

▽男子フルーレ

早大[竹田陸人(社5=神奈川・法政二)、中埜匡貴(創理4=東京・早大学院)、川村京太(スポ1=東京・東亜学園)、ジェット・ン(国1=シンガポール・メリディアンジュニアカレッジ)]

●40-45 慶大

▽女子フルーレ

早大[遠藤里菜(スポ3=群馬・高崎商大付)、千葉朱夏(スポ3=岩手・一関第一)、登尾早奈(スポ3=愛媛・三島)、溝口礼菜(スポ3=千葉・柏陵)]

◯45-13 慶大

▽男子エペ

早大[竹田陸人(社5=神奈川・法政二)、十河昌也(スポ4=香川・三本松)、伊藤悠貴(スポ2=三重・津)、金髙大乘(社1=香川・高松北)]

◯45-40 慶大

▽女子エペ

早大[駒場みなみ(スポ3=富山西)、村上夏希(スポ3=三重・津東)、中島美月(スポ2=群馬・沼田女)、影山野希花(政経1=東京・早実)]

◯45-32 慶大

▽男子サーブル

早大[高木良輔主将(スポ4=埼玉・立教新座)、小山桂史(スポ3=東京・クラーク)、青木貴雅(スポ2=静岡・沼津西)、森多諒(社1=山口・柳井)]

●43-45 慶大

▽女子サーブル

早大[木村結(社4=山口・柳井)、齋藤里羅子(スポ4=山形東)、村上万里亜(スポ2=愛媛・三島)、黒田ほのか(スポ1=香川・三本松)]

◯45-14 慶大

コメント

木村結(社4=山口・柳井)

――早慶戦勝利、そして今大会が引退試合となりましたが今のお気持ちはいかがですが

最後は結果にこだわって、勝って終わろうというのが目標であったので、しっかり勝って終わることができて安心しています。

――終始早大がリードする試合展開となりましたが、振り返っていかがですか

みんな内容的にもチームの雰囲気的にもすごく良くて、今日はみんないいところしかなかったと思います。

――卒業後はフェンシングと関わる予定ですか

フェンシングとはこれで最後です。

――早稲田の後輩の方々に向けて一言をお願いします

来年から、女子サーブルは4年生が3人抜けて、2人になってしまうので、リーグ戦(関東学生リーグ戦)とかしんどい状況がいっぱいあると思うのですが、自分たちと一緒に練習した中で、得たものがあると思うので、それを武器にしてこれからも頑張って欲しいと思います。

十河昌也(スポ4=香川・三本松)

――今日の結果をどのように考えていますか

僕が頑張るのは当然なんですけど、下から盛り上げてくれたので。今日のMVPは金髙(大乘、社1=香川・高松北)君だと思っています。

――主力メンバーを欠く中で、何か戦略はありましたか

最後の1周のところでリードが作れていないと苦しい展開になるのは内々で話していたので、序盤にできるだけ点数を稼ごうという作戦だったのですが、立ち上がりあまり良くなかったんですけど、そこを金髙君が盛り上げて。そして僕らも何とか続くことができたので、そこで流れをつかめたのかなと思います。

――今日の試合ではフルーレが専門の竹田陸人(スポ5=神奈川・法政二)選手が出場されましたが、その経緯はどういったものでしょうか

竹田先輩に関してはすごいオールラウンダーで、どこで使っても安心できるというような。以前も何回かエペの試合に出ていただいていることがあるので、そこで個人的には任せられる先輩だと思っていたので。僕がやられた後に、続いて伊藤(悠貴、スポ2=三重・津)もやられてしまったので、そこを変えるためにも竹田先輩にお願いしました。

――3周り目で活躍した金髙選手をどのように見ていましたか

単純にありがたい。本当に今日のヒーローは彼だと思うので、個人的には頭が上がらないですね。今日の勝負は彼のおかげだと思っています。

――十河選手自身のプレーを振り返っていただけますか

序盤は少し気負い過ぎたかなというのはあるんですけど、2戦目、3戦目は自分のプレーが思った以上にできたのかなと思います。3戦目に関してはプレッシャーが大きかったんですけど、平野(裕也、慶大4年)選手とは試合を何回かやったことがありまして、自分の中での組み立て、ここに来るまでの組み立てが自分の中でできていたのかなと思います。

――十河選手にとっては最後の早慶戦になりましたが、振り返っていかがですか

僕の場合は同期が非常に強くて、そこでこういう形で最後周り任せていただいたのはすごい光栄ですし、4年間頑張ってきたかいがあったのかなと思います。

――全日本選手権(全日本)団体戦に向けて、意気込みをお願いします

僕は出ないのですが、他のメンバーが本当に強いので。今年は優勝も狙えるんじゃないかなと思っています。

小山桂史(スポ3=東京・クラーク)

――惜しくも敗れてしまいましたが今のお気持ちはいかがですか

結構個人的には、1回り目、2回り目が良かったので、予想以上に良かったというのがあって、気持ちも上がっちゃっていた部分がありました。その次は最後周りを迎えないといけないので、緊張とかもあったりして、かといって気持ちが上がったら上がり過ぎてしまうといやなので、気持ちのコントロールが非常に難しかったです。

――小山選手の1回り目、2回り目は圧勝し冷静に対処しているように感じましたが、振り返っていかがですか

インカレ(全日本学生選手権)、関カレ(関東学生選手権)で自分のフェンシングをどのように準備したらいいのか分からなくなっていた時期があって、この1週間くらい前から、そういえばこうやってやっていたみたいな感じで、それを準備していたようにやっていきました。

――最終セットは、ビハインドで回ってきましたが焦りはありましたか

気持ちの部分で、上がってもダメですし、下がってもダメですし、ただいろんな要素の緊張がありました。最後回りの緊張や、それまでの試合がよくできたというのや、最後しっかり取っていかなければならない、といういろいろな気持ちが複雑になってしまって、そこの部分で、入る前から自分では理解していたのですが、なかなか何を信じていいのか分からない部分がありました。

――最終セットでは、4連取し逆転に成功したが、勝ち切ることができなかった要因は

自分が取った、相手に取られたという全てのポイントを平常でやっていたら、最後どうやって取っていけばいいのかというのを分析できていたと思います。しかし、たとえ取ったとしても、それは自分の取りに行ったものではなかったりで、その後にいい影響を与えられるような取り方ができなかったというのが要因です。4点までは取れたのですが、この後どうするんだろうという感じがありました。

――全日本選手権団体戦に向けて、一言をお願いします

先輩方4、5年生が抜けるので、ただ抜ける中でも2年生、1年生も強い選手なので、少し期間ありますし、勝ちに行けるようにしっかり準備していこうと思います。

村上夏希(スポ3=三重・津東)

――今の率直な気持ちをお願いします

絶対にいい試合にはなると思っていたので、勝てて本当にホッとしたというのが一番の気持ちです。

――慶大は関東学生選手権(関カレ)で敗北しましたが、何か作戦はありましたか

関カレの時は原田(紗希、慶大1年)選手がいない状態で負けてしまって。その後練習試合をしたときは、原田選手がいる状態で勝ったりというのがあって。前半にリードを作れると、こっちが楽に戦えるというのは分かっていたので、そこでリードを作ろうというのが作戦で、それができたので今回は勝ちにつながったかなと思います。

――それでは接戦の中で、リードを守り続けることができたのはなぜでしょうか

初めは勝ってても1点差とかだったんですけど、駒場(みなみ、スポ3=富山西)と向こうの早周り、3番手が当たるときに、点を取れるなら取りたいねというところだったんですけど、しっかり駒場が点差を付けてくれて。取りに行ける選手でしっかり取ってきてくれたのが、一番大きかったですね。やっぱりそこで流れを変わったかなというのは感じました。

――村上夏選手自身も6周り目、8周り目と活躍できたと思いますが、振り返って

向こうが攻めるというのが苦手で。こっちもそうなんですけど、守るのは両方得意な部分なので。私も守りの方が断然得意で勝負できるので、自分が得意なように戦える状況が試合の流れとして作れていたことで、よりプラスにつながったかなと思います。

――早慶戦の雰囲気はいかがでしたか

やっぱり独特で。今までにないというか、緊張感もあるし、みんなが応援してくれているという安心感、楽しみというのも混じりあっていたので。その中でも緊張しながらも、楽しみながら。独特な雰囲気で楽しいなと思いました。

――全日本選手権(全日本)団体戦に向けて意気込みをお願いします

今年度最後の試合になるので、簡単に勝てるような相手はいないので、自分たちが出せる力を出し切って、それに結果は自ずと付いてくると思うので。もちろん日本一を目指しているんですけど、できることをやり切るのが目標です。

金高大乗(社1=香川・高松北)

――優勝おめでとうございます。いまのお気持ちはいかがですか

本当に嬉しいです。

――初めての早慶戦でしたが、どのような思いで臨まれましたか

主要なメンバーが海外遠征でいないので、そこは自分が埋められたらいいなと思って臨みましたが、自分の頑張りに先輩方も応えてくれたので良かったと思います。

――早慶戦という特別な大会でも緊張はしなかったのですか

緊張はあまりしなかったです。いつも通り臨めました。

――3試合それぞれの試合展開をどのように振り返りますか

先輩方がたくさん指示を出してくれて、その通りできた結果があのような試合展開になったので、指示通りにできたことは良かったと思っています。

――結果的にはチーム最多の19点得点で大活躍でしたね

計算してみたらそうでしたね(笑)。やはり後ろからの指示が良かったので、後ろにいた先輩のおかげですね。

――改善点や反省点があるとすれば、どのような点だと思いますか

点を取ってから次の得点に至るまでのスパンです。点を取ってから一度冷静になって、また点を取れるようにしていきたいです。

――来月に迫る大会に向けての意気込みをお願いします

絶対優勝します。