冷たい雨が降るなか、慶大日吉キャンパスにて1万メートル記録挑戦会が行われた。早大からは、太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)、新迫志希(スポ4=広島・世羅)らが出場し、集中練習直前の現状を確認する場となった今回の記録会。鈴木創士(ス…

 冷たい雨が降るなか、慶大日吉キャンパスにて1万メートル記録挑戦会が行われた。早大からは、太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)、新迫志希(スポ4=広島・世羅)らが出場し、集中練習直前の現状を確認する場となった今回の記録会。鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)、太田直希(スポ2=静岡・浜松日体)、そして新迫の3選手は28分台の好記録をマークし、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)へ向けて弾みをつけた。


鈴木(右)と太田直は共に自己記録を30秒以上更新して28分台をマーク

 第9組には太田智、新迫、宍倉健浩(スポ3=東京・早実)、太田直、鈴木が出走した。青学大勢が先頭に固まり、1キロ2分50秒前後のハイペースで引っ張ると、早大の選手は、「前半から突っ込んで後半耐えるプラン」と鈴木が語った通り集団内でそのペースにしっかりとついていく。5000メートル付近ではこの日ペースメーカーとして出走した太田智が先頭に躍り出ると新迫もこれに追随する光景も見られた。

 その後再び青学大の選手が前に出ると集団は分かれ、早大の選手らは後退する。しかし、ペースメーカーに徹した太田智に鼓舞され引っ張られた早大の選手は崩れることなく追い上げる。特に、太田直、鈴木は第二集団で積極的な走りをみせ、ラストスパートでは二人で競り合うようにしてゴールに飛び込んだ。結果的に鈴木、太田直、新迫が28分台でまとめ、宍倉も含めて完走した全選手が自己ベストを更新した。


太田智(先頭)の引っ張りを受けた新迫(その後ろ)は、高2時のベストを実に5年ぶりに更新した

 その後の最終組には向井悠介(スポ2=香川・小豆島中央)、山口賢助(文2=鹿児島・鶴丸)が登場。向井は5000メートル、山口は6000メートル前後で集団から離されてしまう。山口はそれ以降、前を追いかける諦めない姿勢をみせたが、終盤に失速。ラストスパートで力を絞り出し、自己最高記録は更新したが満足のいかない結果になった。また向井は最後までペースを取り戻すことはできず、レースを終えた。

 今回の記録会では1万メートル28分台の記録に3人が突入するなど、収穫のあるレースとなったが、選手の言葉に油断は一切ない。「慢心しないように、箱根へ向けてあとはどう仕上げていくか」と新迫が語るように選手の目は、一様に箱根へ向いている。今後は伝統の集中練習に入り、『エンジの復活』へ最後の鍛錬を積む。

(記事 青山隼之介、写真 布村果暖、岡部稜)

結果

▽男子1万メートル

鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体) 28分48秒26(9組5着)自己新記録

太田直希(スポ2=静岡・浜松日体) 28分48秒69(9組6着)自己新記録

新迫志希(スポ4=広島・世羅)   28分55秒78(9組11着)自己新記録

宍倉健浩(スポ3=東京・早実)   29分07秒98(9組14着)自己新記録

山口賢助(文2=鹿児島・鶴丸)   29分50秒71(12組21着)自己新記録

向井悠介(スポ2=香川・小豆島中央)30分50秒23(12組30着)

太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)9組途中棄権

尼子風斗(スポ4=神奈川・鎌倉学園)7組棄権

伊澤優人(社4=千葉・東海大浦安) 7組棄権

中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖) 9組棄権

安田博登(スポ1=千葉・市船橋)  4組棄権

コメント

太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)

――きょうはどのような思いで出走されたのでしょうか

引っ張ることが目的だったので、しっかり遂行しようと思っていました。

――具体的な設定などはあったのですか

5000メートルを14分20〜30秒くらいでした。実際は設定よりむしろ速いくらいでしたね。

――上級生の奮起という点で、新迫志希選手(スポ4=広島・世羅)の走りは大きかったのでは

調子が上がってきているので、最後は箱根(東京箱根間往復大学駅伝)で頑張ってほしいですね。自分も含め頑張っていきたいと思います。

――28分台が3人出ました。その点についていかがですか

それは良かったです。でも青学大に比べたらまだまだ足りないところがあると思うので、その辺りは集中練習などで補っていきたいと思います。

――全日本(全日本大学駅伝対校選手権)が終わってからの調子はいかがですか

そんなに良くはなかったですし、きょうも調整してきたわけではなく練習の一環としての出場でした。その中では寒くてコンディションも悪かった中でまあまあ走れたのかなと思います。

――集中練習に向けて、どのように取り組んでいきたいですか

全体的にスタミナの強化と、ラスト競った時に勝てる強さ、あとはシンプルにチーム全体の走力を上げていきたいと思っています。

新迫志希(スポ4=広島・世羅)

――高校生ぶりの自己ベストでした。更新されたお気持ちはいかががですか

率直にうれしいですね。夏合宿からやってきたことが一つのかたちになってきてくれたことに、すごく喜びを感じています。

――新迫選手にとってのこの記録会の位置付けは

僕の目標としては29分前半で走れればいいかなという気持ちでした。特にこのレースに合わせてきたというわけではないんですけど、思った以上に体が動いてくれました。ある意味では箱根に向けた弾みとなったいい試合となりました。

――長距離区間を走った全日本大学駅伝対校選手権から3週間で、スピードの面などの調子はいかがでしたか

かなり良いですね。やはり(前半の)5000メートルがすごい突っ込めて走れたので。あとは後半どう頑張っていくのかという点で、(箱根までの)あと40日でしっかり(体を)つくっていきたいと思います。

――レースプランはどういったものを描いていましたか

太田(智樹駅伝主将、スポ4=静岡・浜松日体)が引っ張ってくれるのを前々から言っていたので、その流れに乗って走ろうと思っていました。

――前半は1キロ2分50秒ほどの速いペースとなりましたが余裕はありましたか

そうですね。余裕はありました。

――後半の走りはどう振り返りますか

前半に比べてスピードは落ちたんですけど、我慢できるところでしっかり我慢できました。後半の落ちをなくせばまだまだ記録は出ると思うし、箱根にもつながると思います。

――ラストスパートも非常に鋭かったですね

29分を切れるかどうかの際どいところで、出し切って気持ちよく終わろうと思って。最後振り絞れたのは良かったですね。

――自己ベストを更新した選手が新迫選手を含めて4人出ました。4年生としてチームの状況をどう捉えていますか

全日本から良い流れは来ていて、きょうも4人がベストで。この流れは良いものだと分かっているんですけど、雰囲気だったり、慢心しないように、箱根に向けてあとはどう仕上げていくかと思うので、考えていこうと思います。

――これから集中練習が控えていますが、個人やチームとして強化したいと考えていることはありますか

特にはないですね。やることはみんな夏合宿や今の時期にやっているので。まずはけがをしないように。そして(走りを)研ぎ澄まして体のキレをもっと出して、あまり欲張らないようにやっていきたいと思います。

太田直希(スポ2=静岡・浜松日体)

――今の率直なお気持ちはいかがですか

28分台を出せたことはうれしいのですが、あまり満足はしていないです。

――満足がいかなかった点というのは

今回のレースはペース走の様な感じだったので、特に揺さぶりなどもあったわけではないですし、関カレ(関東学生対校選手権)や全カレ(日本学生対校選手権)などよりは楽なレースだったと思うので。かなり調子が良かったので、レース前から28分台はうまくいけば出るかなと思っていました。

――全日本(全日本大学駅伝対校選手権)が終わってからずっと調子が良いのでしょうか

そうですね。

――このレースの目標は28分台だったのでしょうか

一応29分00秒を目標にやっていました。でも最初の5000メートルを突っ込むという指示が出ていたので、そこを意識して走りました。

――前半は1キロ2分50秒くらいで入っていましたね

そうですね。最初の5000メートルを14分20秒で突っ込んで、そこからは粘るというプランを自分で決めていたので、そのようなレースをしようとしていました。

――後半もスピードが落ちませんでした

そうですね。ただ7000メートルか8000メートルくらいのところで1キロ3分かかりそうになってしまったので、そこはもう少し耐えられればよかったです。

――太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)が引っ張っていましたが、どんな声を掛けられたのでしょうか

「一個前!」みたいな感じですかね。キツいときに引っ張ってくれたので、それはありがたかったです。

――改めてこの走りをどう評価されますか

28分台を出せたことは良かったのですが、流れの中で出た28分台なので、過信せずにしっかり練習を積んでさらに調子を上げていきたいと思います。

――集中練習に向けてどのように取り組んでいきたいですか

今は補強を取り入れてやっているのでそれを継続して、体の面やメンタル面などを鍛えていきたいと思っています。

向井悠介(スポ2=香川・小豆島中央)

――きょうのレースを終えた心境は

練習自体は悪くはない状態で臨めたのですが、自分の力を全く出せずに終わってしまい、ふがいない結果でした。

――東京箱根間往復大学駅伝予選会(箱根予選会)からきょうのレースまで1カ月ほどの時間がありましたが、どのようなことを意識して練習されてきましたか

箱根予選会ではすごいブレーキしてしまったなかで、(きょうのレースまでの)間に全日本(全日本大学駅伝対校選手権)があり、チームが波に乗っていて、「自分が変わっていかなければいけない」とすごい思いながら、練習をやってきました。練習ではただ前の選手に付こうというのではなくて、積極性を持とうと思って練習していました。新たな試みとしてラダートレーニングもしていました。

――きょうのレースのプランは

組の中で勝負して勝つ、ということを目標にレースに臨みました。

――レースの序盤は集団の前方から中盤で走られていたと思うのですが、それは予定通りでしたか

できればもう少し前でレースを展開したかったのですが、位置取り自体はそんなに悪くはなかったのかなと思います。

――集団から離れてしまったのはどこでしたか

序盤の4000~5000メートルの辺りできつくなってしまって、(走りの)動きが崩れてしまったのかなと思います。

――集団から離れてしまった原因は

少しきつくなった時に、動きを変えようとしたのですが、そこで上手く動きを変えられずに無駄な力が入ってしまい、そこで(集団に)付いていけずに、大きく下がってしまったのだと思います。

――これから始まる集中練習の意気込みは

予選会や今回のレースの結果を受けて、「このまま終わるわけにはいかない」と思っています。集中練習でチームの主力になれるように、主力になるという自覚をもって、自分を変えていけるようにしていきたいと思います。

山口賢助(文2=鹿児島・鶴丸)

――今回のレースの目標は

位置付けとしては、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)を走ることが出来なかった悔しさをぶつけるレースと、そしてやはり箱根(東京箱根間往復大学駅伝)のメンバー入りに際して大事なレースになると思っていたので、その二点を意識して走りました。

――レースプランは

しっかり順位にこだわっていこうという監督の指示があったので、積極的に前に行くイメージを描いていました。

――実際のレース展開を振り返って

出だしで最後尾になってしまい、そこから徐々に前に行こうと気持ちを切り替えました。しかしペースの大きい上げ下げで無駄な力を使ってしまった点で悔いが残ります。

――結果について

最低でも29分30秒を目標にしていたので、結果としては悔しいですし、なぜこんなに悪かったのかなというのが正直な気持ちです。

――練習時の状態は

合宿が終わってからここまでずっといい調子できていたので、調子自体は良かったと思います。

――集中練習に向けての意気込みをお願いします

今回結果は悪かったですが、これも一つのいい失敗としてしっかり切り替えたいです。自分は集中練習で外したらもう後がないと思うので、今回の反省を活かしながら、全て高いレベルで行いたいと思います。

鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)

――この試合の位置付けは

箱根(東京箱根間往復大学駅伝)前最後のレースということで、他大学との力の差を知るということが目的で、ベストは出せたらいいなという気持ちでした。

――質問どのようなレースプランを立てていましたか

前半から突っ込んで耐えるというプランでした。

――結果をどのように受け止めていますか

自己ベストを40秒くらい更新できて素直にうれしいですが、青学大の1年生に負けたことなどを考えるとまだまだ力不足だなと感じています。

――ご自身の走りを振り返っていかがですか

前半で余裕がなくて集団のリズムに乗れず、自分でペースを作る走りになってしまって力不足を感じたので、70点くらいですね。

――その中でも後半に追い上げを見せましたが、振り返っていかがですか

後半上げていけるところが自分の強みだと思っていたので、それができて良かったと思います。

――集中練習期間が迫っていますが、特に強化していきたい点は

きょうのレースでは序盤に余裕がなかったことが反省点として挙げられるので、速いペースでの余裕度を上げていきたいです。

――箱根に向けて、チームの中でどのような役割を担っていきたいと考えていますか

中谷さん(雄飛、スポ2=長野・佐久長聖)、千明さん(龍之佑、スポ2=群馬・東農大二)、(太田)智樹さん(スポ4=静岡・浜松日体)、井川(龍人、スポ1=熊本・九州学院)など、エースと呼ばれる強い存在がいる中で、そこに加わっていける存在になりたいと思っています。僕が往路を走ってもいけるぞと思ってもらえるような力を付けていけたらいいなと思います。