NHK杯ショートプログラムで首位発進の羽生結弦

 11月22日に行なわれたNHK杯男子ショートプログラム(SP)。羽生結弦は大きなミスのない滑りで、前戦のスケートカナダに0.25点及ばないだけの109.34点で1位発進した。

 だが、「まずはホッとしたなというところが一番強いけど、出来自体は『完璧だったな』というのには程遠いので、まだ練習が足りないんだなというのを突きつけられたと思います。もちろんスケートカナダのショートがあるからこそ、まだまだできるなという感覚がすごくあります。もっとどん欲に上を目指す感じで、正直、ちょっと悔しかったという感覚もある」と冷静に振り返った。

 シーズン初戦のオータムクラシックを終えてからは、2年連続で出場できていないグランプリファイナルや、3年連続で出場していない全日本選手権でしっかり滑りたいという意識が強くなっている。そのための通過点でもあるNHK杯は、万全な状態で国内の大会に出場できるのは本当に久しぶりだっただけに緊張感もあった。

 11番滑走だった羽生は、最初の4回転サルコウはジャッジがGOE(出来ばえ点)3~5点を並べ加点3.74点の出来できれいに決め、次のトリプルアクセルも9人中7人のジャッジがGOE5点を出す完璧なジャンプだった。

 だが次の4回転トーループは着氷でブレードが跳ねてしまい、尻が落ちて耐える形になった。それでもそこから「どんな状態でもトーループを付けるという練習をしているので、その成果が出たのかなと思う」と言うように、一拍遅れながらも3回転トーループを付けて連続ジャンプにした。

 その4回転トーループは、前日の公式練習では不安なく跳んでいたが、当日午前の公式練習では曲かけの前に軸が動いてしまって転倒し、その後のスタートの滑りから続けた時にはパンクして2回転に。曲かけでも2回転と調子が落ちてしまっていた。さらに直前の6分間練習でも、最初の4回転は跳んだが次の3回転トーループで転倒。その後は入るラインを確認して、回転するイメージ練習を2回繰り返していた。

 羽生は「悪くなった原因は、自分の中ではわかっている」としながらも、その理由は「言い訳になるから」と明らかにしなかった。

 だが、その力を使うジャンプでリズムが崩れてしまった。次のフライングキャメルスピンはいつもよりスピードのない回転になり、ステップシークエンスもスピードとキレが少し影をひそめる滑りになってしまった。

「でも、4回転トーループを降りたのでよしとします。及第点だったと思います。そのあとのフライングキャメルがうまくいかなかったなと思っているのと、ステップシークエンスに関してももっとスピードを出せたのかな……。スピンは全般的にスピードが出せなかったかなと感じています。もちろん、それが点数に完璧に反映するかどうかはわからないけど、自分の手応えとしてはもっとできたなという感じです」

 連続ジャンプのあとで若干スピードが落ちる滑りになったのを、羽生は「疲れが出たということではなく、少し慎重になったのかなと思います」と言う。その言葉どおりにステップとスピンはすべてレベル4にして取りこぼすことはなく、GOE加点もしっかり獲得している。自分では納得できないものもありながらも、その後は冷静に対処したことが、109点台の高得点につながった。それはスケートカナダ以降の羽生に、精神面の安定があるからこそなしえたものなのだろう。

 羽生は、スケートカナダではフリーで4回転ループのミスがありながらも、ネイサン・チェン(アメリカ)が出した世界最高記録に迫る322.59点を出しているからこそ、今回も「プレッシャーはあった」とも言う。だがそれは、自分の得点に対してのプレッシャーであり、世界最高得点に対してのものではない。

「スケートカナダはよかったはよかったですけど、まだできることがあるという状態のよかったなので。だから何か、そのあともよかったなと思ってやっているというよりも、よかったから頑張らなきゃ、という気持ちの方が強いですね。世界最高得点についても言われますけど、自分としては、今はとくに意識するものではないと考えています。

 今回の演技を終えてからはとくにそういう風にあらためて感じたので、今回の演技を糧にしっかり練習して、次の試合はいいショートをやりたいと思います。このNHK杯をしっかりやり切るために、フリーが気持ちよく、最後まで滑れるようにしっかり準備をしたいと思っています」

 自分がやりたいと思うことをやり切れば、得点もついてくるという思い。昨季とは採点ルールが変わったなかで、どこまで自己ベストを更新して得点を伸ばせるか。今の羽生にとってはそれが最大の関心事と言えるだろう。