全日本学生選手権(インカレ)は最終日を迎えた。この日は前日から行われていた男子エペ団体、そして女子サーブル団体が行われた。団体制覇、「五冠」をかけて挑んだ男子エペ団体は、海外遠征で数人のメンバーが不在の中で迎えた。そして、準決勝で対戦した…

 全日本学生選手権(インカレ)は最終日を迎えた。この日は前日から行われていた男子エペ団体、そして女子サーブル団体が行われた。団体制覇、「五冠」をかけて挑んだ男子エペ団体は、海外遠征で数人のメンバーが不在の中で迎えた。そして、準決勝で対戦した日体大に敗戦。ついに早大に黒星が付き、五冠は夢と散った。女子サーブルは1回戦で、優勝候補の東女体大と対戦。相手の実力の前に早大は思うように得点ができないまま、敗北を喫した。そして全日本選手権(全日本)の出場権を獲得することはできなかった。

★準決勝で今年初の黒星、五冠潰える(男子エペ団体)

 3週間前の関東学生選手権(関カレ)終了後、安雅人(スポ4=茨城・水戸一)は「強いがゆえの悩み」とメンバー不在を嘆いた。ここまで3つの栄冠を手にしていた早大。だが、国際大会シーズンと被る今大会は、加納虹輝(スポ4=山口・岩国工)、増田陽人(商2=岡山大安寺中教校)が不在と戦力ダウンは免れない状態だった。そんな中迎えたインカレ団体戦。2回戦を難なく突破すると、最終日に行われた3回戦は龍谷大との対戦。勢いよく勝ちきり、続く試合への景気づけとしたいところだったが、接戦を演じる展開に。最後は突き放すことに成功したものの、やや不安が残る結果になった。

 そして迎えた準決勝は日体大と対戦。序盤は均衡した試合運びとなる。団体はインカレ初出場の十河昌也(スポ4=香川・三本松)も「気持ちだけは負けないように」と、自身が作ったビハインドを3連取で取り返し、流れを渡さない。続く金髙大乘(社1=香川・高松北)のところで3点リードを作り、勝ち越すチャンスも、そこから3連取を許すなど、こちらも波に乗り切れない展開に。勝負の中盤戦。5周り目の十河は、相手エースを前に2点のビハインドで抑え、安に回す。すると期待通りに同点に持ち込み、一気に勝ち越しを狙った。だが、「大事なところで取れなかった」(安)。接近戦をことごとく取られてしまい、5連続失点。相手に流れを渡してしまうと、そこからの巻き返しは王者にも難しかった。7周り目の十河は点を重ね、追い上げのチャンスを作るも、金髙、最後周りの安は苦戦を強いられ、遂に敗戦。安は点を取れなかったストレスを、五冠をつかめなかった悔しさを押し殺した。


逆転かなわず敗戦。安(左)の表情は暗かった

 「試合の展開の中でまずいプレーをした印象はない」と試合を振り返る十河。それでも、流れを、白星をつかみ切れなかった準決勝。団体戦の難しさを痛感した大会だった。残す大会は全日本のみ。五冠は達成できなかったものの、「勝負の世界なのでしょうがない」(十河)と割り切るしかない。「早大で出る最後の団体戦」(安)は笑顔で終える。

★強敵の東女体大に敗北し、全日本出場権を逃す…(女子サーブル団体)

 女子サーブル団体は初戦で東女体大との対戦に挑んだ。メンバー個人の実力が高く、早大より格上の相手だった。1周り目の木村結(社4=山口・柳井)は前にプレッシャーをかけて、4-5と競りあう。だが、その後は相手にアタックがはじかれる場面が目立った。「みんな相手の動きを見過ぎて、見ている間にポイントを取られてしまった」(木村)との通り、突破口を見つけられないまま、得点を許してしまう展開が続く。大きく点差を広げられ、迎えた最後周り。「小さい頃からライバルだった」と振り返る相手エースに善戦。最後の最後に意地を見せたが、金星を挙げることはかなわなかった。


最後に意地を見せた木村(右)

 今大会10位という結果に終わった早大。今年も全日本選手権出場には届かず、来週の早慶戦が最後の団体戦となった。今年は関東学生リーグ戦(リーグ戦)で一部昇格を果たす最高のスタート。だが、秋以降は並み居る強敵を打ち負かすことはできなかった。運もあるが、関カレ、インカレといったトーナメント戦は、リーグ戦2部のチームと1部のチームが早くに対戦することが多い。下位からの逆襲はやはり難しいことを思い知らされてしまった。木村は「もう少し、いつも通りをできていたら良かった」と冷静さが欠けていたとチームの敗因を分析する。これを早慶戦に、そして来年に生かしていくことはできるか。早大女子サーブルの最後の戦いが近づく。

 学生大会では最後の出場となった4年生。今の4年生は、酸いも甘いも経験してきた学年だ。入学当初から団体のメンバー入りを果たすも、無念の2部降格。先輩も佐々木陽菜(平30スポ卒=現ANA)1人と満足とはいえない環境で、練習、経験を積んだ。それが実ったのは2年生の冬。参考記録ながら全日本優勝をつかんでみせた。訪れたかに思えた絶頂期。だが、昨年は1点に泣き、リーグ戦一部昇格を果たせず、全日本にも出場できずと結果を残せなかった。そして不完全燃焼で早大を巣立った、佐々木の思いを引き継いだ。雪辱を果たそうと挑んだラストイヤー。念願かない1部昇格を果たしたものの、またしても全日本の地を踏むことはできなかった。決して楽しかったことばかりではない。それでも「最後に勝ってみんなで笑って終わりたい」(木村)。迎える現役最終章。早慶戦で4年間の思いをぶつけろ。

(記事 小原央、写真 柴田侑佳)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。


インカレ終了後の集合写真

結果

▽男子エペ

早大[十河昌也(スポ4=香川・三本松)、安雅人(茨城・水戸一)、伊藤悠貴(スポ2=三重・津)、金髙大乘(社1=香川・高松北)] 3位

2回戦:〇45-23 青学大
準々決勝:〇45-36 龍谷大
準決勝:●36-45 日体大
三位決定戦:◯45-40 専大

▽女子サーブル

早大[木村結(社4=山口・柳井)、齋藤里羅子(スポ4=山形東)、村上万里亜(スポ2=愛媛・三島)、黒田ほのか(スポ1=香川・三本松)] 10位

1回戦:●21-45 東女体大








コメント

木村結(社4=山口・柳井)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

初戦から優勝候補と呼ばれる強いチームと当たってしまって、みんな挑戦していく気持ちで挑んでいったんですけど。相手の方がやっぱり1枚上手で、あっけなく終わってしまったなっていうのが今の気持ちです。

――チーム全体としても苦戦を強いられていた印象がありますが、東女体大へのイメージはどのようなものでしょうか

何度か練習試合などもさせていただいているんですけど、いつも競るところまでいけず、結構点差がついて終わってしまうことが多かったので…。ひとりひとりがもう少しずつでも粘りを見せて、頑張っていれば、この差は埋まっていたのかもしれません。

――チームとしての敗因は

チームの雰囲気は悪く無かったので、チームとしての問題というよりは、ひとりひとりの技術的な問題かなと思います。もう少しいつも通りをできていたら良かったのかなとも思います。

――全体的に緊張の雰囲気があったということでしょうか

そうですね、みんな相手の動きを見過ぎて、見ている間にポイントを取られてしまったので…。積極的にアクションをかけていかなければならなかったんだと思います。

――木村選手ご自身は一回り目で競った末、1点差で次の選手へとバトンを渡されました。この時点ではどのようなお気持ちでしたか

流れ自体は悪くなかったと思うんですけど、2試合目から実力の差が出てしまったと思います。

――3回り目では4連取も見せましたが、やはり意地でしょうか

最後に対戦したのが、小さい頃からライバルだった選手で。団体としての意地もそうですけど、個人的にもその子にマイナスで終わりたくなくて。最後に頑張りました。

――今後の意気込みをお願いします

私はもう4年生で、残すところは早慶戦のみになってしまったので、インカレの悔しさを全部早慶戦にぶつけて、最後に勝ってみんなで笑って終わりたいです!

十河昌也(スポ4=香川・三本松)

――優勝を果たせなかったですが

個人的には自分ができることをするだけだったので、最後ですし、仕方がなかったという思いもありました。

―― 団体戦は普段出場されていないですが、今回意識した部分はどこですか

特にはなくて、普段通りやることだけを心掛けました。

――その中でプレッシャーはありましたか

プレッシャーはもちろんあったのですが、それ以上に自分が点数を取られてしまうとチームとして厳しいことが分かっていたので、そこは4年生の意地ではないですが、気持ちだけは負けないように頑張りました。

――負けた準決勝の戦いを振り返ってもらえますか

途中で追いかける流れになったのが苦しくなったと思うのですが、個人的には真ん中の松浦碧也(4年)選手との試合で失点しまったところです。そこで耐えることができていれば、楽な展開で最終まで臨めたのかなと思います。

――そこで耐えることができなかった要因は

彼は自分と同じ高校の出身で、お互いによく知っている相手でした。悪かったというよりは、単純に相手(の調子)が良かった。自分の中では割としょうがないと思っている部分もあります。リカバーの部分で思うところはあるのですが、試合の展開の中でまずいプレーをした印象はないです。

――きょうの試合全体を振り返って

(点数を)取ったのが結局シンプルな技で、途中難しい技にこだわってしまった場面もあったので、シンプルな部分を突き詰めてもう少し動けていれば、より良い立ち回りができたのかなと思います。良かった点としては、いつも団体戦では緊張して守ってしまい相手にやられることが多かったので、きょうは積極的に攻めていくことができて良かったです。

――4年生として臨んだ最後のインカレを振り返ってください

負けることもそうですが、同じメンバーで組むことがもうないと思うので、そこは残念に思っています。3位ではなく優勝できれば本当は良かったのですが、これも勝負の世界なのでしょうがないと思います。

――今後の意気込みをお願いします

来週は早慶戦があるのですが、今回のメンバーから安雅人(スポ4=茨城・水戸一)も抜けてしまいます。今回は最低限の仕事ができたと思うのですが、それでは来週は厳しいと思うので、プラスマイナスゼロの仕事が今回は多かったですが、それだけでは勝てないと思うのでチームに貢献して得点できるように一週間頑張っていきたいと思います。

安雅人(スポ4=茨城・水戸一)

――今の率直な感想を

残念というか…特に言うこともないですね。

――今日の調子自体は

全然良かったと思うんですけど、大事な場面で1点が取れなかったのが、後々響いてしまったのかなと思います。

――日体大戦でリードを作れなかった要因は

さっき言った大事なところで取れなかったというところで。ここで取れば流れを持ってこれるところで、取り切れなかったというところで、リードを、点数を離せなかったのかなて思っています。

――プレッシャーはありましたか

なかったわけじゃないですけど。プレッシャーはありました。

――全日本選手権に向けて意気込みをお願いします

五冠というのはできなくなってしまったんですけど、しっかりシーズン最後で早大で出る最後の団体戦なので、しっかり勝ちきって、終われたらと思います。