野球の台湾代表と言えば、これまで国際大会で実績があり、”強豪国”のイメージがあるかもしれな…
野球の台湾代表と言えば、これまで国際大会で実績があり、”強豪国”のイメージがあるかもしれない。事実、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の世界ランキングは、プレミア12が始まる前まで4位。だが近年は、今年のU-18ワールドカップで優勝したものの、前回のプレミア12(2015年開催)は9位、2017年のWBCは14位とトップチームの成績は芳しくない。

2008年の北京五輪をはじめ、国際大会で数多く指揮を執ってきた名将・洪一中監督
その最大の要因は、いわゆる”内輪もめ”と言われてきた。台湾の野球は、プロ野球(CPBL)とアマチュア球界(CTBA)の関係が良好とは言い難く、これまで大会ごとに主導権争いが繰り広げられてきた。
CTBAはオリンピック関係を統括することから、政界や経済界とパイプが太く、資金力も豊富なため、プロ野球側は国際大会のたびに臍(ほぞ)を噛むしかなかった。
監督人事や選手選考も思うように進まず、業を煮やした選手からはボイコット(代表辞退)する者が現れたりと、戦う前から戦意を喪失しかねない状態が繰り返されていた。
だが昨年あたりから、両組織の幹部が代わるなど、争いごとは目に見えて減っていった。だからだろうか、今大会の選手構成は自他ともに「近年で最もバランスが取れていて、強い」と評判だ。
国内組はアマ選手2名を含む21人。内訳は、ラミゴ・モンキーズから8名、中信兄弟から5名と、台湾プロ野球の2チームが主体となり、そこに海外組が加わる形となっている。
ちなみに、海外組は投手6名、野手1名で、アメリカのマイナーでプレーする選手が3名、日本でプレーする選手が3名という構成だ。
なかでもカギを握るのが、江少慶(チャン・シャオチン/インディアンス3A )、胡智為(フー・チーウェイ/カブス2A)、そして張奕(チャン・イー/オリックス)の投手3人だ。
江少慶はキレのある150キロのストレートが武器の本格派右腕で、今シーズンは3Aまで上り詰め、メジャーまであと一歩のところまできた期待の選手だ。
胡智為は140キロ台半ばのツーシームとチェンジアップが持ち味の右腕。今回のプレミア12はショーケースの意味もあり、メジャースカウトの前でどれだけのピッチングをするのか注目を集めている。
オリックスの育成出身である張奕は、入団時は外野手だったが、昨年から投手に転向。今季、急速に力をつけ、支配下登録を勝ち取った右腕だ。今大会での起用法は中継ぎ中心と見られているが、先発もできるだけにどこで投げるのかも注目だ。
本来なら、これに加えて、10月に開催されたアジア野球選手権でチームの優勝に大きく貢献した劉致栄(リュウ・ツーヨン)という最速158キロの大型右腕も代表入りするはずだった。だが、ボストン・レッドソックスと75万ドルで正式契約を交わし、今大会は「疲労を考慮して」の辞退となってしまった。
一方の打線は”国内組”が主流で、クリーンアップはラミゴの林泓育(リン・ホンユー)、陳俊秀(チェン・チュンショウ)、そして元ラミゴで現在は日本ハムでプレーする王柏融(ワン・ボーロン)の3人。
また代表監督もラミゴで指揮を執る洪一中(ホン・イーツォン)だ。ラミゴを名実ともに台湾球界を代表するチームに押し上げた名将で、2008年の北京五輪をはじめ、多くの国際大会で指揮を執るなど経験豊富な指揮官である。台湾球界の関係者は「まだ洪さんに頼るのか?」という意見もあるようだが、「現状は致し方ない」という声がほとんどだ。
だが近い将来、間違いなく台湾の代表監督に就くであろう人物が、今回、コーチ陣に加わった。彭政閔(ポン・ツェンミン)打撃コーチだ。2001年に名門・兄弟エレファンツに入団し、生え抜き選手として18年間プレーしてきた。野球に対する真摯な姿勢と穏やかな性格から、ファンのみならず選手にも慕われ、今シーズンをもって現役を引退した(規定打席に届かなかったが、92試合で打率.302を残した)。
引退して間もないにもかかわらず、急遽、コーチとして登録されたわけだが、洪監督としてみれば彭政閔にチームのまとめ役を託したのだろう。
またブルペンコーチには、ニューヨーク・ヤンキースなどメジャーで9年間プレーし、2006年、2007年と2年連続して19勝を挙げた王建民(ワン・チェンミン)が入った。こちらも彭政閔同様に台湾球界のカリスマ的存在で、投手陣をまとめていくはずだ。
投打のレジェンドをコーチとして招聘したことは、台湾にとって大きな”補強”になったはずだ。とくに台湾の場合、これまで国内でプレーする選手と海外でプレーする選手との間に微妙な距離が生まれ、チームに一体感が生まれにくい状況が続いていた。しかし、レジェンドが加わったことでチームにまとまりが生まれ、洪監督も采配に集中できるだろう。
近年、辛酸をなめてきた台湾だが、名将がレジェンドのコーチ陣を従え、機運は高まっている。プレミア12で台湾は日本と同じグループBに入った。はたして、どんな戦いを見せてくれるのか。日本にとって、これまで以上に厄介な相手になったのは間違いない。